醒装コードNo.029 「朗報」
お久しぶりです
ちゃんと書いてます、一か月も放置してごめんなさい
「ここが、先輩の部屋なんですね」
「ああ、同じアパートだったのに入るのは初めてだったな、そういえば」
お見合いに行くかのように、おずおずと部屋の中を覗くヴァルキャリウスと、その姿を見て妙に微笑ましく思えてきてしまった須臾。
ヴァルは須臾が面白がっているのを感じていながらも、緊張が収まることはない。
(そういえば、さっき……須臾先輩に、私キスされて……ふぁぁぁぁぁ!)
つきあい始めてたった数時間で、起こった様々な事柄がフラッシュバックされてヴァルは顔を再度真っ赤にしてしまった。
しかし数十秒間、玄関で突っ立ったきりうごかないというのも不自然。そう判断したヴァルはおそるおそる、部屋の中に入っていく。
「遠慮しなくても、いいんだぞ?」
世間帯が許してくれるのなら、このまま一緒に暮らしてもいいくらいだ、と須臾はほほえみながら言った。
もちろん、その言葉にヴァルの気持ちはパニックを増していく。
「どうしましょうどうしましょう……」
「漏れてる漏れてる……」
心の声が漏れてる、と須臾は今すぐにでも笑い転げそうな勢いだ。
と、不意におどおどしているヴァルを引き寄せ、そのままベッドに転がった。
「ひゃっ!?」
「……ヴァルって、柔らかいんだな」
決していかがわしいところはさわっていない。が、須臾はそれでもヴァルの、身体の柔らかさを感じることができた。
ぐっと力を込めると、最初の方は僅かな抵抗をしていたヴァルも、抵抗する気力をなくしたのかおとなしくなってもぞもぞとからだを動かし、須臾と眼をあわせられるようにする。
「……どうせなら、須臾先輩の顔を見ていたいです……」
「おう」
須臾は確かに、人並みかそれ以上の性欲は持っている。しかし、今それを解放する気にはなれていなかった。
肉欲におぼれたい、という欲求よりも、彼女をただ保護下においておきたいという気持ちが強くなってしまったのだ。故にヴァルがこのあとなにが起きるのか、予測して覚悟を決めても須臾はそれをする気がない。
「んっ」
身体を回転させたときに須臾の腕がどこかに当たったのか、ヴァルが幼げながらも艶のある声を漏らした。
須臾がヴァルの眼を見つめると、彼女の目は心なしか潤んでいるようにも感じられる。
呼吸を僅かに荒げて、ヴァルは須臾を見つめ続けた。
このあと、なにが起こってもいいように、むしろ彼を抱きしめる。
その決意が、パニックの中のものなのか、きちんと自分が決めたものなのか、ヴァル自身も分かっていなかった。
ただ、自分の頭の中にある須臾への愛情にも似た何かが噴出してしまい、自分でもなにをしているのか分からなくなってしまう。
「……すべて、受け入れますから……」
一方の須臾はまだ、普通にスキンシップ感覚でヴァルを抱きしめたためヴァルが深読みしすぎていることに少し苦笑してしまう。
彼も一般の男子高校生と精神面、特に性的なことはそれなりに興味があるが、女をいきなり襲うようなまたはつき合って間もないのにすぐに抱くとかというものはない。
そのためか、ヴァルに「すべてを受け入れる」といわれたところで頷くしかない。
「いや、ヴァル落ち着け」
「……ふぁ……ふぇ?」
受け入れる、といってしまって手を意識しすぎていたヴァルは、須臾の言葉に首を傾げてしまう。
これは陽動なのか、それともほかの目的で私は声をかけられているのかと探ってしまうのだ。
「いきなりそんなことはしない。……今はヴァルの柔らかさを感じているだけでいいんだ」
「……ふぇぇ」
自分の早とちりに、ヴァルはパニックさがマックスに達してしまっていた。
と、二人が抱き合いながら、初々しさを奏でながらスキンシップをしていると、須臾の携帯から着信音。
須臾は怪訝な顔をして、ポケットからそれを取り出すと、そこに表示されている名前を見てすぐに応答した。
「ふぇ、誰ですかぁ?」
『……お楽しみだったかな?』
「いや、大丈夫だ」
マイクの集音がいいな、と顔をしかめながら須臾はかけてきた人である愛漸キリに返事を返す。
「なんのようだ?」
『……朗報があるよ』
「ん?」
なんの気なしに聞いていた須臾は、次に発するキリの言葉ですべての感覚を携帯に集中させることになる。
『リースが、目覚めた』
いちゃいちゃしたい




