Turn3
相変わらず短いですが、楽しんでいただければうれしいです。
そういえば、残念ながら、おそわれてる馬車を(ryてきなイベントはないと思います。
突然と決断を下した日の翌日、俺たちはペンダラムの大地の上に立っていた。
「師匠~、見てください。自然がいっぱいです」
天界には自然がないわけではないが、かなり少ないため、今俺たちの目の前に広がっているような光景は天界では滅多に見られないものであり、ディアナは興奮を隠し切れていなかった。
「たしかに自然がたくさんだ。でもな、ディアナ」
俺は一拍おいて、おそらく確実であろう事実を口にした。
「自然が多いって言うレベルじゃないよ、これ。秘境のど真ん中じゃねえかぁあああああああああああああ!」
前を見ても、後ろを見ても、右を見ても、左を見ても、上を見ても木しかなかった。
「でも、こんな光景は滅多に見られませんよ。是非とも心の中に焼き付けておかなければ」
ディアナは相も変わらず前向きな考え方のようだった。俺はそんなディアナに少しあきれながら、俺の目の前に1つのモニターを展開した。こんなことは町中などでは目立ちすぎるためできるわけもないが、こんな森の中では、人などいるはずもなく、いるのはせいぜい獣くらいだろうと思った。
「あれ?それがペンダラムの地図ですか?」
ディアナは俺の展開しているモニターをのぞき込んで言った。
「ああ、この赤い点が俺たちのいる場所だ」
ペンダラムは大きな大陸2つと広い海で構成されていたが、俺たちがいたのは、地図上では海を挟んで右側の大陸のかなり右の方だった。つまりは、このまま右に行き続ければ海にあたり、海を渡れば、地図で言う左側の大陸にたどり着けるはずである。
「これは何とも微妙な場所ですねぇ」
前向き思考だったディアナもさすがにこの表示を見て苦笑した。
「やっぱりランダムに飛んだのはミスだったな」
ペンダラムにやってくるときに、せっかくの冒険だからと思って、飛ぶ先をランダムにした結果こんな森の中に飛んできてしまったため、俺は少し後悔していた。
「まあ、こっちの方が冒険らしくっていいですね」
前言撤回。ディアナは相変わらず前向き思考だった。
俺は、先ほど見ていた地図で、勇者が仕官している国を複数の色で彩色した。こうしてみてみると、2つの大陸にいる勇者の数は6人、6人とちょうど同じだった。
「ゲリルのやつ、器用にミスをするんだな」
仕官をしている国まで5国ずつと同じであるのが、また何とも不思議なものである。
「で、師匠、これはどうするんですか?」
引き続きディアナはモニターをのぞき込んでいた。
「どうしたものだろうな。ここから東に行けば、海に突き当たるだろう。その海を渡れば、渡った先の国には1人の勇者がいるはずだ。しかし、西に行くと小さい村を経由しつつ、いくつかの国を通りながら、勇者のいる国に行くこともできる。これならば情報も集めながらいけるんだよな」
おそらく、1人目の勇者との接触までの時間的にはすぐにもう1つの大陸に渡る方が早いだろう。だが、各国の情勢を知るということもかなり重要であるため、西に行くのも捨てがたかった。
「ディアナ、おまえはどっちがいいと思う?」
俺が1人で悩んでいても決められないので、この問題はディアナに丸投げすることにした。
「そうですねぇ、最初から航海というのも、また暇になりそうですし、私は西に行きたいです」
「よし、じゃあ西にするか」
俺としてはどっちでもよかったため、俺たちは西に進むことにした。
☆☆☆
西に進むと決めてから2時間後、俺たちはようやく深い森を抜け出すことができていた。太陽はすでに沈みかけており、空はすこし赤くなっていた。
2時間と言っても、加速魔法を使って2時間だったため、本来なら一晩森の中で明かすことになっていたかもしれなかった。
「本当にしゃれにならない森だったな」
歩いても歩いても同じ景色が続くのはなかなかに精神的に来るものがあった。そんな中でもディアナは楽しそうだったが。
「で、師匠、この道はどっちなんでしょうか?」
俺たちはどうやら変な場所から森を抜けてしまったようで、目の前には1本の道があり、右にも、左にも行くことができた。俺は一応モニターを展開してチェックしてみる。
「まあ、どちらでも変わらないけど、ここは一応左に行った方がいいかもしれないな」
「え、なんでですか?地図的に変わらないなら右でもいいじゃないですか」
どうやら、ディアナは感じ取れていないようだったので、俺はディアナにもわかるように言うことにした。
「ディアナ、もう少し、感覚を研ぎ澄ましてみろ」
ディアナは訳が分かっていないようだったが、俺の言うとおりにした。すると、だんだんと表情が変わっていくのが見ていて分かった。
「師匠、これは・・・」
「ああ、これはな」
風に乗ってきたこのにおいは、
「血のにおいだ」
おそらく右の方の村がおそわれたであろう証拠の血のにおいだった。