Turn2
人称について迷ってます。とりあえず1人称で、主人公が出てこない場面は3人称にしようかと思ってるのですが、そもそも地の文に心の声などを書かないので、別に1人称である必要もないんですよね。
っということで、説明回がここまでで、次回からはついに本編です。
「久しぶりだな、ゲリル」
今、俺の目の前には1つのモニターが浮かんでいた。そのモニターにはゲリルの戸惑った顔が写っており、おそらくゲリル側のモニターには俺の顔が写っていることだろう。アースの世界で言う『テレビ電話』というものに近かった。だが、違いももちろんあり、このモニターは何からも支えられず、空中に浮かんでるし、俺が指を1回ならすだけで、一瞬にして跡形もなく消える。言うなれば『神仕様のテレビ電話』とでも言ったところだろう。
「お久しぶりでございます、ユート様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
モニターに映るゲリルの表情は、おびえているようにも見えた。それも無理がないだろう。
最上級神に、自分の管理している世界があれているときに呼び出されたら、神としての資格を失う可能性だって十分にあり得るのだ。神としての資格を失った神は、そのまま存在ごと消えてしまう。だから、どの神もそれだけは避けたいのだ。
「ゲリル、別におまえにとって悪い話ではない。そんなに緊張するな」
「は、はい」
緊張するなという言葉に対して返事はしたものの、全く緊張がとれた様子もなかった。だが、俺は気にせず本題に入ることにした。
「おまえ、この間、相変わらず戦争が多いと相談してきてたよな」
「はい、ユート様の世界から勇者を派遣していただいたにもかかわらず、私の不手際で、様々な国に勇者が仕官する結果になってしまい、余計に戦争が増えてしまいました」
おそらくは、勇者がいるから勝てるだろうと思って攻め込むことが増えたと言うことなのだろう。戦争を止めるために勇者を派遣して、逆に戦争が増えるとはなかなかに皮肉なものである。
「そこでな、さっき、それを解決するいい案を思いついたから、教えてやろうと思ってな」
「ほ、ほんとうですか」
ゲリルは不安5割、期待5割といった表情で俺を見ていた。
「でもそのためには、おまえの世界への介入権を行使しなくちゃいけなくてな、一応確認をとっておこうと思って連絡したんだ」
「か、介入権ですか?」
介入権とは、その名の通り、他人の世界へ介入する権利のことだ。介入権はそもそも基本的には他人の世界に干渉することはできないのだが、管理する世界を使って悪事を企んでいる、管理する世界の状況があまりにもひどい場合などに、強制的に主神が干渉するための権利で、この権利を持つのは主神だけである。
「そうだ、ちなみにおまえに拒否権はない」
神の社会は完全に縦社会で、普通なら主神に逆らった神はその時点で存在を消されてしまう。残念ながら、現在の主神にそこまで過激なやつはいないのだが。
「いったい何をなさるおつもりですか?」
「俺が直接おまえの世界をいい方向に導いてやる」
「え?」
ゲリルは俺が何を言っているのか分からなかったのか、すこし気の抜けた声を出してしまっていた。
「要するに、俺がおまえの世界を旅して、勇者たちの様子を見つつ、いい方向に導いてやるってことだ。最近暇だったしちょうどいいわ」
「・・・・・」
ゲリルは完全に呆然としてしまっていた。まあ、普通はこんなことを言い出す主神はいないからしょうがないだろう。
「だから、介入権を使うぞ、いいな?返事は?」
「は、はい」
ゲリルは急いで我を取り戻して何とか返事をする。
「よし、じゃあ、明日からそっちのペンダラムに干渉するからそのつもりでいろ」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、切るぞ」
そういって、俺が指を1回ならすと、そこにあったモニターは一瞬で消え去った。
「師匠、お疲れ様です」
モニターには映っていなかったが、俺のそばで控えていたディアナが飲み物を差し出してきた。俺はその飲み物を少し口にする。その飲み物は少し酸味の強いオレンジジュースだった。
「ようやく、いい感じに暇がつぶれそうだな」
「はい、久しぶりですね、他の人の世界に行くの」
俺たちは今までも、その世界がしっかりと管理されているかをチェックするという名目で、何人かの世界に旅行しにいったことがあった。そのときは、今回のように明確な目的もなかったため、短期間だったが、今回は明確な目的があるため、ある程度の期間の滞在が予測される。
「ディアナ、あとでアリスに伝えておいてくれ。何かあったら俺に連絡するように」
「了解です、師匠」
アリスとは俺に仕える上級神で、この城の警備の責任者かつ俺の助手みたいなものでもあった。ペンダラムから天界のこの部屋まで戻ってこようと思えば、一瞬で戻ってくることができるが、いちいち戻ってくるのも面倒なので、大問題がおこらないかぎりはアリスに不在中のいろいろなことを任せることにした。
「そういえば、師匠、今勇者たちはどんな感じなんですか?」
ディアナが気になるのも当然だった。詳しいことは全く伝えてなかったのだから。
「いろいろだよ、軍師をやってるやつもいれば、暗殺者をやってるやつもいれば、将軍をやっているやつもいる。中には1国の王にまでなってるやつがいるからな。なかなかにおもしろそうだろ」
「はい。会ってみたいですね」
「まあ、とりあえずは様子を見つつ、いろんな国を回って、勇者との接触を図るのがいいだろうな」
こうして、暇をもてあました神々(最上級神と上級神)の遊び(異世界旅行)が幕を上げるのであった。