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アブノーマルな普通の少年  作者: 浦野梓匠
1章 普通の少年は任された
3/6

1章2話 教室は地獄と化した

開いて頂きありがとうございます。

2話となります。

 田子の車に乗る事三十分。その間、後部席で一緒座っていた久保エトワールと言う美女と一切話す事無く黙々とした時間を過ごした。

 そして学校の近くに着いた所で二人は降ろされた。



「あれ、田子!お前学校は……っ!」

「学校なら辞めた。今の俺は社会人だよ、じゃあな!」



 そう言って、車を再発進させて行ってしまった。取り残されたのは二人だけになってしまった。彼といっしょに下車したエトワールはただただその場に棒立ちしていた。まるで命令されるまでは動かない人形の如く立っていた。



「えっと、久保さん?」

「……エトワールで良い」

「そ、そうなの。まぁいいけど。……エトワール、取り敢えず学校に行こう」

「……分かった、センドー」



 コクリと頷いたエトワールは千藤の後ろに付いた。先ほどまで車の中では全く会話しなかったが、歩く時もまるで従者のように真後ろを着いてきた。千藤は歩きにくい事、この上無かったので流石に真横に付かせた。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



「その……なんだ、エトワール」

「………………」



 ずっと黙ったままの彼女に千藤は話し掛けようとするも、何から話したら良いのか分からず、ただ無駄な時間が流れていく。それを嫌って千藤は思いついた質問を問い掛けてみる事にした。



「お前は日本人、じゃないよな?」

「……フランス人と日本人のハーフ」



 どう見ても白人の彼女が何故日本に居るのか、その縁は何かなと思ってまずは人種を聞いてみた。するとエトワールはしっかりと返答してきた。

 これならある程度の事なら質問すれば答えてくれそうだと思い、千藤は取り敢えず質問を羅列する事にした。



「田子と義兄妹と聞いたけど血の繋がりは無いの?」

「血は繋がってない」

「なら、義兄妹になったのは何時?」

「三年前。義兄さんが引き取ってくれた」

「三年前……って事は三年間あの家に居たのか?」

「……(コクリ)」

「それよりそもそも何で義兄妹って自称しているんだ?」

「その方が説明しやすいから」

「説明しやすいって……」

「私と義兄さんは正確には叔父と姪の関係。だけど年齢も違わないからそう名乗る事を二人で決めた」

「なるほど……」



 確かに同じ年齢で叔父と姪と言われたら、びっくりするだろう。高校生だとしても、その言い方は余り宜しくないとも思えるので義理の兄妹と言う形にしたのだろう。



「後、田子が学校を辞めたって言ってたけど……」

「義兄さんは学校を辞めて、何か仕事を始めてた。もう数件ほど依頼を受けているらしい」

「おいおい、それって社会人として働いているって事か?」

「そうなる」



 先ほど突然言われた事に驚くしか無かった千藤はその事実を改めて確認した。やけにのんびりとしているなと思っていたら、まさか学校を辞めているとは思っても見なかった。その御陰か自由奔放さが以前とは比べ物にならないほど増している。

 千藤に取っては厄介者がより厄介になったと言わんばかりの思いだった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして話しているうちに、彼等は学校へと到着した。彼等のクラスは田子の言った通りであれば四クラス:ABCDある内のA組だと言う話だ。

 教室に近付くと既にホームルームが始まっているようで、非常に入りにくかった。



「三田ー」

「はい!三田素留斗みたそるとです!柔道部所属、大好きなのは綺麗な女です!オススメあったら紹介よろしくぅ!」



 どうやら自己紹介中だったようで、三田と言うゴリラの野太い声が教室と廊下を隔てる扉の向こうにいる千藤たちにも良く聞こえた。



「次、南ー」

「はい!南孝宏みなみたかひろです。将棋部所属のお笑い大好き屋です!只今ボケを大募集中です!」

「ところで南、その背中に装備されているハリセンは何の為に使うんだ?」

「こう……するんだよっ!!」

 バシーン!

「「「「ハハハ」」」」



 南の後ろの席に居た三田が南に叩かれて吹き飛ばされる光景を見てクラス全体が笑った。二人は恐らく事前に打ち合わせ済みなのだろうが、その鮮やかさに誰もが驚いた。

 そんな中、次々となされていく自己紹介。こんな状況で教室に入るのは躊躇われるので、千藤は後ろに居る久保と一緒に教室の外で息を殺しながら教室の様子を眺めていた。



「ラストー、四月一日わたぬき

「はい。四月一日わたぬき足一たしかずです。誕生日が四月二日なので+1たすいちと付けられました。宜しくです」

「よし、これで自己紹介は終わ……」

「待ってください、名嘉真先生」



 教室内に居る四十八名の生徒の自己紹介が終わり、次は役職決めに入ろうかと言う所で最後に自己紹介をした四月一日が担任の名嘉真の言葉をさえぎった。



「まだ残ってますよ、自己紹介」

「とは言え、センドーは来ていな……」

「扉の前にいます、南・史規シキセンドーを逃がすな!」

「了解だぜ!」

「りょーかい!」



 四月一日の言葉に反応して非常に身軽そうな男子生徒二人が席を立った。



 ガラッ。

「ちっ、お前の目から逃れられなかったか……」



 千藤は逃げたい気持ちで一杯だったが、後ろにいる少女を連れて逃げるのは無理だと判断して、自分から教室の扉を開けた。本当なら逃げたかったし、逃げ切る自信もあった。だが、今日はイレギュラーが存在する。

 そしてそのイレギュラーエトワールはそんな千藤の心中も知らずに彼の後ろを着いてきた。



「おい、センドー。遅かったな、何か……え?」

「せ、センドーが、銀髪白人美女を連れてきたぁぁぁっ!?」

「おい、センドー!どういう事だ、一体!?」



 遅刻してきた愚か者を冷やかしをしようと待ち構えていたクラスメートたちはまさかのエトワールの登場にクラスの半数が怒号を上げた。半数と言うのは他でもない、男子全員だ。



「お前等、少しは大人しくしろ、今から紹介してやるから」



 クラス担任の名嘉真に言われてクラスメートたちは一旦黙った。



「それじゃ、センドーから自己紹介をしろ」

「……千藤悠歳です。普通の人間ですが、宜しく」

「………………」



 千藤が自己紹介をした後に自己紹介をすると思われていたエトワールは完全に黙ったままだった。担任の名嘉真が何度か呼び掛けてみるが反応はない。



「仕方ない、えー、彼女は久保エトワールと言う。今年度から編入されてきた生徒だ。皆宜しく頼む」

「でも、先生。この学校って編入なんて言うシステムは無かったと思いますけど?」

「特例らしい。丁度辞めた奴も居て、ソイツの身内だから入れ替わりの扱いにもなる」

「誰だ、辞めた奴って?」



 こんな美人の知り合いは誰かが気になり、クラスが湧く。多分、それがアイツで無ければ今頃皆で袋叩きにしていただろう。



「田子の義理の妹らしいぞ」

「あー」



 ヒートアップしていたクラス内が一気に冷め上がった。田子と言う名前を聞いた途端、皆『アイツなら有り得るか』と言って、その身を一度引いた。かつて魔術教師を廃業させた武勇伝を持つ男に喧嘩を売るつもりはないからだ。



「取り敢えず、お前等は扉近くの空いてる席に座れ、ホームルームを続けるぞー」



 そう言って、名嘉真先生はホームルームを再開した。

 決める事は今学期の級長や主要役員の決定だった。

 級長に四月一日が選ばれ、委員会の役員も決定し、解散となった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 放課後、一年A組には当然ながら人だかりが出来ていた。皆の目的は勿論、エトワールだった。

 滅多に見れない銀髪白人美女。それを一目見ようと野次馬が集まっていたのだ。



「おーい、久保ちゃん?」

「久保さん返事してー」

「………………」



 クラスメートたちが色々と話し掛けているのだが、彼女は一切反応しない。周囲に人が集まって、彼女に向けてたくさんの人が話し掛けているのにも関わらず、彼女はその声には微動だにしない。ただ人の群れに圧倒されて周囲を見ているだけだ。そんな中、しびれを切らした一人の生徒がエトワールに手を伸ばした。



「おいおい、少しは返事をしてくれよ」



 そう言いながら、巨漢の三田が彼女の肩に触れた瞬間、事件は起こった。



 ドスン!ドゴ!ドゴ!ドン!

「うごぁっ!?」



 それは余りにも一瞬だった。一瞬で三田の巨体が投げ飛ばされ、地面に着いた。柔道部の三田は投げられ慣れているのもあって、受身をしっかり取っていたがそれを確認したエトワールは彼の両肩をかかとで蹴り壊し、トドメに腹へ肩から落ちるようにボディプレスを放った。

 綺麗過ぎる一連の流れに、周囲の者は皆、反応に遅れた。


 そして次の瞬間、教室は地獄と化した。

叔父と姪の年齢差が0だから義兄妹を自称する事については、考えてみると案外分かりやすいかも。


某大家族アニメでタ〇ちゃんがカ〇オをおじさん呼ばわりしていたらそりゃ誰でも引くでしょう。でも叔父なのは事実。

歴史には三国志時代の魏の名軍師荀彧と荀攸は叔父と甥の関係で存命しましたが、叔父である荀彧の方が6歳年下だったと言う記録が残っているなど、昔の時代だと色々とありえます。



〇三田素留斗

本能のままに行動する全身筋肉。一応、千藤の親友。

〇南孝宏

お笑いが好きで三田などとはよくコンビを組んで漫才をしようとする。千藤の親友。

〇四月一日足一

四月二日生まれ。一年A組の級長となる級長タイプのインテリメガネ。千藤の親友。

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