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狗物語

作者: 車海老

それは、まさに『きまぐれ』だった。



一つ目は、夕飯の買い出しの途中、八分咲きの桜並木、ニンジンが冷蔵庫の中にまだあるから、ゴボウを買っておかずをきんぴらゴボウにするつもりで歩いていた所、どこからか漂ってくる玉ねぎを炒める匂いを嗅いで、晩飯をカレーライスに変更したという『きまぐれ』。



二つ目は、スーパーマーケットに着いて、玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジン、……あっ、ニンジンはまだあったな、などと考えながら店内を物色、最近、飼い犬が死んだりして沈みがちな兄弟たちを、少しでも元気づけてやりたくて、自分の財布という特別会計から費用を捻出し、それぞれが好きそうな菓子と、飼い犬が大好きだったアンパンを買ったという『きまぐれ』。



三つ目は、買い出しからの帰り際、せっかくだから寄り道をして、あいつを拾った公園のベンチにでも座ってアンパンを食べるか、という『きまぐれ』。



四つ目は、夕暮時の誰もいないと考えていた公園の中、思いがけずダンボールにいたソイツに、あいつを重ねてアンパンをやったという『きまぐれ』。



俺は知らず知らずの内に『きまぐれ』を重ねていた。だからこそ、その思いつきが引き起こすことになんか、とても考えが及ばなかった。



公園はそれほど大きくない。



どうにかキャッチボールができるかという程度。遊具にはブランコ、滑り台、砂場がある。



ようするに、どこにでもある公園だ。



それでも自分が小さな頃には、ここは、どこそこランドよりも魅力的な場所に思えた。ブランコは大空にこぎ出せる船だったし、滑り台は山あり谷ありの冒険だったし、砂場はそこだけで小さな世界だった。そのような場所に、あいつは段ボール箱に入れて捨てられていた。



おつかい帰り道、こづかいで買ったアンパンを、あいつは壁の中から尻尾を振って物欲しげに見上げてきた。



薄桃色の世界の中で、俺は確かに運命的なものを感じた。



出会いが春なら、別れも春ということなのか。



そのかつては夢のようだった場所に、なにやら生々しいものができていた。



いわゆるダンボールハウスだ。



実際に生で見るのは初めてだが、なかなかよくできている。


雨漏りしないように、結合部はきちりとガムテープが貼られ、風で飛ばされないように、近くの木にロープで固定されている。



薄桃色の花びらに包まれたその空間は、なんだかファンシーに見えなくもない。



あたりを見回すと、同じようなロープが他の木から木へと伸び、そこには何枚か白いタオルが干されている。



ガスコンロと、ラーメンを作って、そのまま食べたのであろう汚れた鍋も放置されている。



あぁ、ここで生きているんだな、途端に、リアルな生活臭がしてくる。



そういえば、最近この公園に、麦わら帽子の男が住みついたという話があった。



子供好きで、近所の銭湯にほぼ毎日通う綺麗好きで、そこそこ腕の立つ男らしく、最近の物騒な世の中でも、この公園なら安心して子供たちを遊ばせることができるとかなんとか。



その男は、いつも麦わら帽子を被り、いつも白いジャージを着ているという話だ。



今のような生活を送るようになった経緯を含めた自分のことを、人にはあまり話さないらしい。



そのこともあって、男に関する噂には、『自宅を差し押さえられ、解散の一言で一家離散となった哀れな青年』というものから『日夜、人を喰う怪物と戦う獣耳のヒーロー』『実はどこかの御曹司』、など非現実的なものまで数多く存在し、今もなお生まれ続けている。



それほどまでに彼に対する噂が膨らむ理由、それは、その人並みはずれた容姿にもあるのだろう。



身長は一七〇センチほどで、適度に締まったその体のラインは美しく、ベストジャージスト賞を受賞できそう。   



その肌は、野外生活もろもろのストレス環境にありながら、白桃のようになめらか、やや赤みを帯びた白色。



麦わら帽子からはみ出る前髪は黒色、顔は全体的に、男でありながらどこか柔らかさがある。


藍色の入ったその涼しそうな目は、見開くと子供たちに怖い印象を与えるため、常に細めている。



彼には、どこか不思議な魅力があった。



「それ、なんすか?」



ところで、本人の描写が妙にことこまかなのは、つまりは本人がそこにいるからで。


ダンボールハウスの出入り口から上半身を出して、こちらを窺っているからで。



ちなみに声はハスキーボイス。



「……アンパンだけど」



「へぇー、自分の大好物じゃないっすかー」



元よりそのつもりで取り出していたので彼に差し出す。



麦わらは、素早く開封するとそれにかぶりついた。



がつがつと食べるその姿からして、やや飢えていたようだ。その比較的整った、全体的に細い外見は奥様方からは密かに人気があり、子供たちの警備のお礼に、お裾わけという形で食べ物などをマメに貰っているという話のはずなのだが。


見た目以上に食べるのだろうか。



パンを十秒もたてず食べ終えると、家から出てきた。そして、ゴミを近くのごみ箱(公園のもの)に捨てると、こちらに近づいてくる。



……というか妙に近い、何だ?



「ちなみに、お宅の今晩のおかずはなんすか?」



「……カレーだけど」



「へぇー、自分の大好物じゃないっすかー」



後ろを向き、咲き誇る桜に向かって両腕を広げる。



「淡い桃色に染まった世界で奇跡的に出会った二人、なんだか運命的なものを感じませんか?」



「……別に」



麦わらは、どうやら晩餐にお呼ばれされたいらしい。  



しかし、そうはいくか。



ただでさえ、我が家の財政は最近の野菜価格の高騰などで困窮しているのだ。



麦わらは視線を斜め下へ、眉毛は八の字にして、深いため息をつくと、ふてくされた感じで家にすごすごと入っていった。



そして、ダンボールごしに、ややくぐもった声が聞こえてくる。



「いいっすよ、自分には近所の奥さま方からの頂き物がありますから。……って、うひゃぁ! 貯蔵庫に大量のアリが! 春になって出てきやがったか!?」



麦わらの動きに合わせて、ダンボールが左右に揺れる。


こちらから見えないが、なにやら中は凄惨なことになっているらしい。



さすがに、憐憫の情というのが芽生える。



「……まぁ、晩飯だけなら」



ダンボールからずぼっと出したその顔を、俺はこの先ずっと忘れない。



きっと忘れられない。





「自分にはね、血統書ってのがないんすよ。だから、名字もないんすよ。本来なら名前もないんすけど、師匠がこの名前をつけてくれたんす」



「師匠……養父とかか?」



「役所で手続きは踏んでないから、養父と呼べるかは分かんないすけど。自分に生きることを教えてくれた人であることにはちがいないっすね。その師匠が老衰で亡くなって、そんなこんなで今に到るわけです」



なんだ、そのとんでも設定は、と会話の途中でツッコミを入れたくなる。



だが、話が進まないので、その気持ちを抑えて、どうにか麦わらの自己紹介を聞き終えた。



見ず知らずの人間を家に入れるほど、俺は愚かじゃない。



家に着くまでに一応、麦わらの身分証明を済ませておこうと思い、尋ねた答えに『名前は藍。住所不定無職っす』と笑顔で言われた時には、いろんな意味で目眩がした。



それでもどうにか、一通り聞き終えた、もうそろそろいいか。



「……で。どこまで、本当なんだ?」



「失礼な。地域の皆さんから、『中区のインディアン』の愛称で呼ばれる自分が、嘘をつくわけないでしょ」



『麦わら』、改め『藍』は、むっとして見上げてくる。



あくまで、嘘を言い張るつもりらしい。



まぁ、それでもいいという気持ちも芽生えつつあった。



なるほど、話してみて分かる、少なくとも悪い人間ではないことが。



一食限りの付き合い、別に構わないだろう。



「あ、自分は一応、旅行者だってことにしときます」



あの角を曲がったところが我が家だと教えた後、茜は突然そう言ってきた。



「なんでだ?」



藍は、当然のことだと滑稽に笑う。



「浮浪者は、みんなの人気者っすから」





「わぁ、立派なお宅っすね」



「そっちは、犬小屋。こっちが我が家だ」



はたして、それが犬小屋だと分かる人間がどれだけいるだろう。


あいつの家は大人一人がどうにか生活できるほどの大きさがある。


何かとスケールのでかい親父の日曜大工の結果、こんな小屋ができあがってしまったのだ。



「犬を飼ってるんすか?」


「飼っていた、だな」



『CHIPO』と書かれた家は、近い内に処分する予定だ。



あいつがいなくなった今、場所をとるだけだから。



「そうすか。飼い主に恵まれて、えーと、……この子は幸せっだったんすね」



「ローマ字読めないのな」



「しかし、いい家っすね、自分ここ住んでいいすっか?」



生真面目な顔で、そんな冗談を言ってくる。



「あぁ、いいよ」



あまりにふざけた、その人、その言葉、その身なりに、俺は気付くと自然に笑っていた。



「「紺介兄ちゃんおかえりー」」



玄関を開けると、双子の弟、健太と健次が体当りを仕掛けてきた。



危うく、後ろに倒れそうになるのを兄としてのプライドでどうにか持ち直す。



最近、やんちゃのさかりらしく相手をするのも一苦労だ。



「あれ、インディアンじゃん」



「なんで?」



「晩飯をゴチになりにきました」



藍は気まずそうに笑う。



その姿は、こっそりエロ本を買いに来たつもりが、知り合いと出会ってしまった時の中学生男子を彷彿とさせた。



公園は双子の縄張りだった。



「康子はどうした?」



「「向こうで絵本読んでる」」



双子は同時に居間の方向を指した。



妹の康子は夢中になると、周りが見えなくなる。



今、どれだけ騒がしくしても、きっとその耳には届いていないのだろう。



ひとまず藍を家の中に招き入れる。



居間につくと康子はなぜか泣いていた。



俺は素早く双子に睨みをきかせるが、双子は知らないと両手を胸の前で振る。



正面に回って、康子に優しく尋ねてみるが、何も教えてはくれない。



家族だから、康子のことは他人よりもはるかに分かるつもりだ。



それでも、どうしても庇いきれないところはやはりある。



今、病院にいるお袋なら、すぐに分かるのだろうが。



俺が母親代わりになれないと思う瞬間の一つだ。



こうなったら、長女の寧々が学校から帰るのを待つしかないか。



「『泣いた赤鬼』っすか」



藍は康子の後ろから、その目線に合わせて覗きこむ。



「青鬼は、赤鬼がみんなと仲良くできるようにいなくなるんすよね。康子ちゃんはそれが悲しいんすよね?」



嗚咽を上げながら、それでも康子は応えようとする。



人みしりをする姿を知っている俺に、それは驚きだった。



「なんでみんなと仲良くするのに、誰かと仲を悪くしなくちゃいけないの?」



藍は、サンタクロースを信じる子供を見るような顔をした後、全てを包むかのように康子を抱きしめる。



「康子ちゃんは優しいっすねぇ」





「ハァ!」



その瞬間、狼の影を纏った五発の打撃が放たれた。



「師匠なら十発いけました」



「「すげぇ!」」



「実のところ、自分そこそこ強いっすよ……と、この物語が長く続いて、読者がマンネリになったときの、格闘方面へのシフトという少年漫画的配慮をどう思われますか?」



「続いてもせいぜい8ページだ。健太、健次、さっさと風呂入れ」



「インディアン、一緒に風呂はいろ」



「ちんこ洗ってやるよ」



「自分ら、ちゃんと剥いて洗ってるんすかぁ?」



アイツ、家で風呂まで入りやがった。



まぁ、双子を風呂に入れる手間が省けたぶんよしとするか。



飯の調理は佳境を迎えていた。



カレーは具材を入れたからこれから一五分ほど煮込んで、後はルーを入れるだけ。



その間に、ポテトサラダでも作るとしよう。



「兄ちゃん、お姉ちゃんは?」



「寧々のことか、あいつなら生徒会で遅くなるって言ってたろ」



「ちがうよ、藍お姉ちゃんだよ」



「藍のことか? 藍なら双子と風呂に。……藍はお姉ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんだろ?」



『お前も一緒に風呂に入りな』というと、基本的に素直な妹は風呂場に走って向かう。



しかし、藍をお姉ちゃんとは、茹でたジャガイモを潰しながら想像して、一人吹いてしまった。



そうこうしていると、双子が風呂から上がってくる。



しかし、なにやら様子がおかしい。



「どうした健太、健次。もじもじして」



 続いて、藍と康子も上がってきた。



「いい風呂したー」



「藍、冷蔵庫から麦茶だして……」



最初に感じたのは違和感だった。



風呂に入るために脱いだのだろう、その頭には麦わら帽がなかった。



そして、背中まで伸びた絹糸のような髪が濡れて、ミンクの毛のような光沢を帯びていた。



あれは、男の頭髪じゃない。



「お前、……女だったのか」



冷蔵庫に手をかけた『彼』改め『彼女』は、ハッとした感じで頭に手を置くが、当然そこにはなにもない。



「あっ、いけね。師匠に、女だとばれるとなめられるから、女を武器にできるようになるまでは性別隠さないといけないんだった」



「おまえはイエローか」



「いえ、インディゴ・ブルーですけど」



 隠していたことがばれて、ばつの悪そうに頭をかく。



「もう少し大きくなったら、取ろうと思ってんすけど」



推定AAの胸に手を当てると、もの悲しそうにつぶやく。



「お前、少なくとも成長期は終わっているよな。……それはもうそれ以上大きくならないと思うぞ」



「まじっすか! うわぁ、どうしよう、帽子ぬげねぇ」





長女が帰ってきたところで、今宵の晩餐は始まる。



「藍さんって、本当にお綺麗ですねー」「あざーっす!」「藍さんは俺のものだ」「いいや、俺のものだ」「こら、お前らそういうのはもっと大きくなって、夕暮時の河川敷とかでやれ」「俺が藍さんを一生食べさせてやるんだ」「えっ、まじで?」「お前も釣られてんじゃないよ」



「寧々姉ちゃんたくさんお肉取ってるね」「「だから太るんだね」」「失礼な。あたしの体重が最近増えたのは、生徒会の活動で筋肉がついてきたからであって、決して脂肪が増えたからじゃ」「確かに、立派な脂肪をお持ちで」「イエロー、女としてその発言はレッドだ」



時刻も九時を過ぎ、双子も寝床に着かせた。妹は台所の後片付けをしてくれている。



『今日は家事を全部任せたから』、寧々は我が妹ながら律儀すぎるところがある。



そんなこんなで、俺は藍と談笑をしていた。



「……あと、のっぺい汁とかも好きっすね」



「いったいどんな料理だ? まったく想像できねぇよ」



テレビは消している。俺の膝を枕にして眠る康子を、起こすのは可哀そうだから。



「たいへんっすね、料理とか」


「お前には負けるが……」



「まぁ、誰かに、家族にそんなに拘束されて可哀そうとかいわれたり、実際、携帯持ってなかったりするけどさ」



ひざを枕にして、静かに寝息を立てる妹を見て思う。



「幸せの形は人それぞれだろ?」



「……そうっすね」



俺の膝の上の妹をもっとよく見ようと、藍はこちらに顔を近づけてくる。



母性に溢れた穏やかなその表情に、思いがけず動揺してしまう。



妹が寝ぼけまなこを開いたのは、言うまでもない。





「今晩は泊まってってくださいよ」



康子を寝かしつけて居間に帰ると、そこには布団が一人分敷かれてあった。



「あ、自分の家、すぐそこだから大丈夫っすよ」



(藍は逃げ出した、しかし、まわりこまれてしまった)



「お前が女だと分かって、あそこに帰すわけにいくか」



「……貞操の危機っすか」「違うわ」



彼女は窓から暗い庭先の方を見て、少し考えていたが、最終的にはだらしなく口元を緩めた。



翌朝、朝飯の準備をしようと起きると、居間にアイツの姿はなく、そこには寧々がいるだけだった。



「あれ。アイツはどこ?」



「さぁ? 朝起きたら、置手紙があったよ」



『ありがとうございました。カレー、本当に美味しかったです。また、どこかで会いましょう。PS.←これってプレーステーションの略じゃなかったんですね』



俺はそれを読んだ時、なんとなく不安になった。



大丈夫、一生の別れがそんな何度も簡単にあってたまるか。



そう自分に言い聞かせながらふわふわと学校を過ごし、その帰り道、あの公園に寄り道してみた。



ダンボールハウスはなくなっていた。



事情はよく分からない。



役所から立ち退きを要求されたか、どこぞの糞ガキの手によって壊されたか、アイツの手でこうしたかなんて、赤の他人の俺には分からない。



ただ、俺はしばらくその場に立ちつくしていた。



帰り道、もしかしたらアイツは実はあいつが化けて出てきたのかもしれないとか、考えていた。



俺が、あまりにも情けないから元気づけるため。



『飼い主に恵まれて、あいつは幸せだった』と、その言葉で俺を救うため。



アイツは春風のように現れて、鬱屈した空気をどこかへ吹き飛ばすと、またどこかへいってしまった。



この心に残されたのは、一抹の……。



そうだ。



晩飯は……のっぺい汁にしよう。


にしても、……あいつ、いったいいつどこで食ったんだろう。



家に帰ると、健太と康子が庭で出迎えてくれた。



「兄ちゃん、今日の晩飯なに?」「今晩はのっぺい汁だ」「なにそれー、しらなーい」「おいしーの?」



俺が知るか。


アイツの好物がおいしいかなんて。



でも、この献立を聞いたアイツのリアクションは予想できる。



『へぇー、自分の大好物じゃないっすか』



そうだな。



きっと、アイツならそういうだろう。



健太が、何か書いたメモ用紙を差し出してきた。



「らんって、ローマ字でこう書くんだよね?」



「あぁ」





「藍さん、やっぱり俺のいう通りだったよ」



『健太は、いい外務大臣になれるな』



「藍さん、庭のアリの巣の駆除、おわったよ」



『健次は、いい防衛大臣になれるな』



二人はその言葉の通りに、それぞれ切磋琢磨し、後に国内初の双子での閣僚入りを果たした上で、国内外問わず数多くの偉業を成し遂げるのだが、それはまた別の話。



『あっ、おかえりっす、小市民』



彼もまたその言葉通りに、後に小さな、それでいて確かな幸せを掴むのだが、それもまた別の話。



それよりも。




「どこかでって、……ここぉ!? なんで、ここに引っ越してんだよ。隣人なんてレベルじゃねえよ、敷地に入ってるじゃねぇか! 腹から喰い破られた気分だよ!」



「あれ、でも昨日聞いたら『あぁ、いいよ』って」



しれっとした感じで答えられ、改めて思い返してみる。



「あれ、……冗談じゃなかったのかよ!?」



「地域の皆さんから『中区のインディアン』の愛称で呼ばれる自分が、嘘をつくわけないでしょ」



「ただいまー。この好青年はどちらさん?」



 間が悪いことに出張に出ていた、親父が帰ってきた。



藍は、自己紹介をする。



昨日までとは少し違った。





「名前は藍。このお宅の番犬っす」



dirty end


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