モミジを見に行こうよう
同じ漢字なのに、違って読み方で複数の意味をもつ言葉があります。たとえば『人気』は『にんき』『ひとけ』の意味があり、『生物』は『せいぶつ』『いきもの』『なまもの』などの意味があります。では、モミジを漢字で書くと……
森の中でクコの木が赤い実をつけていた。
小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、お団子が乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね。白猿さん。秋になると山に紅葉を見に行く人が多いの」
「そうだな。秋の山は他の季節とは違った美しさがある。木々の葉っぱが赤や黄色に染まると『秋が来たな』と感じられるのだろう」
「なんで葉っぱの色が変わるのかな」
「植物には葉緑素という緑色の成分がある。これが光を受けて、光合成できれいな空気を作る。冬に葉を落とす落葉樹は、葉緑素が減って葉っぱの元の色がでるんだ」
「んとね紅葉は『モミジ』とも読むの」
「そうだな。モミジと読んだ場合は、手のひらの形のカエデの葉のことになるな」
「紅葉を見に行くことを『モミジ狩り』と呼ぶこともあるけど、何を狩るの?」
「昔のモミジは人が近づくと、風に乗って逃げていったんだ。それを捕まえるのがモミジ狩り」
「んとね。それはさすがにウソだと思うの」
「まじめに答えると、平安時代の貴族は、原則として京都の町からでることはなく、郊外の山にいく場合は理由付けが必要だった。狩りで山にいくことが一般的だったから、こじつけで『モミジ狩り』と呼んだみたいだ」
「そうなんだ。実際は眺めるだけなのに、狩るのはヘンだと思っていたの」
「ところでモミジ、つまりカエデの木の樹液で何ができるか知っているか?」
「ぼく知ってるの。メープルシロップなの。僕の森では作れるけど、この世界ではカナダとか海外のカエデの話だよね」
「日本のカエデでも、あまい樹液を出す種類のものがある。東北や北海道でシロップが作られていた記録があるぞ」
「んとね。長いこと樹液を鍋で煮詰めないといけないから、作るのは大変なの」
「目安として、樹液を何十倍も濃縮してメープルシロップにする。たとえば、四十リットルほどの樹液から一リットル程度のシロップになることもある」
「九割以上、水を飛ばさないとダメなんだね」
「昔は大鍋で煮込んで、煮立った樹液をオタマですくってゆっくりと鍋に戻す。これで蒸発が早くなる。交代で何日も繰り返しで煮詰めたようだな。今では真空ポンプで効率よく水分を抜いているらしい」
「シロップをもっと煮詰めると砂糖になるの」
「メープルシュガーだな。十五少年漂流記でもその方法で砂糖を作っていた。普通の砂糖よりカロリーが低いから、健康志向で使う人もいるな」
「メープルシュガーだとやせられるの?」
「そこは少し注意が必要だ。メープルシロップも砂糖の一種の甘味料だから、たくさん食べればカロリーをとることになる。『メープルだから太らない』というわけではないぜ」




