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第7話・たどり着いた道の果て~引き抜く刃が目覚めた時に~

第1章 戦う女神の選んだ巫女姫



    第7話・たどり着いた道の果て~引き抜く刃が目覚めた時に~



 柵門の向こう側には石畳の小路(みち)があった。


 とは言え、出入りする者がいないせいか、荒れるに任されている。


 尤も、獣道とすら言えない森の中を通って来た後なので、格段に整った印象を受ける。


 ジャンヌとリオンの2人は、その先に白大理石でできた小堂を見つけた。


「やっぱり鍵はしてあるわね」


 数段上った堂の入り口。


 扉には、人が来ないにも拘らずしっかりと錠がされていた。


 確認口調で言ったジャンヌは、それもまた一刀の元に斬り捨て、破壊する。


 美しい天使の彫刻が施された扉を押し開いた。


 天井と八方の壁がステンドグラスになっていて、森の木々の隙間を縫って差し込む陽光が堂内を薄く照らす。


 堂の中央に一段高くなった台座があり、その中央に剣……なのだろうか。


 根元までしっかりと突き刺さった柄が1つあるだけに見えた。


「これが……お宝ぁ?使えるのかよ?」


 拍子抜けした。


 と言うより、明らかに期待はずれと言った口調でリオンが言う。


 先に立って堂の中に入ると、台座には実は魔法陣が描かれていて、五芒星の頂点には色の違う宝石が埋め込まれているのが分かった。


 だが、他には何もない。


 神話を再現したステンドグラスと、柄の刺さった五芒星の魔法陣。


 それだけだった。


 神話。


 かつて、人間の女呪師(おんなじゅし)であった者が、その欲望のままに力を求め、振るい、魔族と化し、かつその頂点に立った。


 言い方を変えれば、当時大陸に在った魔族たちは、元は()()()()()()()に力で負け、蹂躙された事になる。


 尤も、その当時の魔族は今の魔物程度のものでしかなく、多くの魔族はその女呪師によって(つく)り出されたとも言われている。


 天井のステンドグラスの半分はこの赤毛の魔女とそれに追従する魔族を、残る半分には大陸を守る女神である暁の女王と、それに従う天使が描かれている。


 聖皇国は、この戦いの後、女神の巫女とその騎士によって(つく)られたとされている。


 八方の壁のステンドグラスは、その歴史を描くものだった。


 リオンに続いて堂内に入ったジャンヌも、辺りを見回して、本当に他には何も無さそうだと知ると「何だかがっかり」と漏らす。


 この堂自体が考古学的、神学的に貴重な物ではあるが、2人にその価値は分からないようだ。


 強いて言えば、美しい装飾の施された柄は宝飾品としては価値ある物と言えるし、五芒星の頂点に埋め込まれた宝石もかなり品質は高そうだ。


 だがその程度で、立ち入りが禁じられた『隠された堂』の宝としては物足りない。


 ジャンヌは台座にトンと飛び乗って、中央に歩み寄る。


 と――


「姫様っ!」


 息を弾ませて、それでも強い怒気を宿した声がジャンヌを呼んだ。


 ギクリと一瞬身を竦ませた2人は恐る恐る扉の方を見る。


 全力疾走して来たのだろう。


 肩を上下させて息を整えるファンがいた。


 その後方、まだ少し距離のある位置にクロードの姿も。


「ここはみだりに立ち入ってはならない場所。すぐにお戻り頂きます!」


 クロードが追い付くのを待たずにファンは2人を促す。


「何が立ち入り禁止だよ。こんな物、別にどうって事ないじゃないか」


 台座を蹴飛ばして、リオンが「くだらない」と吐き捨てる。


「こんな物とは何事だ!仮にも女神の至宝に対して無礼であろう!」


 より怒気を増したファンに、ジャンヌは「リオンの言う通りよ」と返した。


 クロードが辿り着いて、そんな3人のやり取りを黙って見守る。


「これ、抜けもしないでしょう?」


 美しい装飾が施され、鍔に不思議な赤色の宝石が嵌め込まれた柄に手をかける。


 言いながら、ジャンヌは剣を引き抜いた。


「へっ?わっ!?」


 思っていた抵抗がまったくなかった。


 バランスを崩す。


「姫様っ!」


「ジャンヌっ!」


「っ!?」


 柄でしかなかった物が、全貌を現す。


 細身の刀身は曇り1つなく磨き上げられ、燦然と煌めく。


 長すぎることも、また短いと言う訳でもない剣は、当たり前の様にジャンヌによって引き抜かれた。


 後ろにひっくり返りそうになったジャンヌは尻餅を着く。


 同時に、まばゆいばかりの光が立ち昇った。


 小堂が激しく揺れる。


 堂にだけ、地震が起こった。


「ちょ……な……」


 何――!?


 驚きの声を上げかけたジャンヌは、あまりにも激しすぎる揺れに舌を噛みそうになる。


 中に居たリオンも、立っては居られなくなって膝を着く。


 もう一度ジャンヌを呼んだファンは、中に入ろうとするがクロードに止められる。


 堂の外に居る2人はまったく揺れを感じてはいない。


 だが堂が揺れている事は分かる。


 中に入っても、思う様に動けないであろう事も。


 舌打ちしたファンの顔に微かに焦燥が浮かぶ。


 目の前だと言うのに手が出せない。


 激しい揺れにステンドグラスが割れた。


 堂内の2人に砕けたガラスの破片が降り注ぐ。


 まともに浴びれば、怪我では済まないだろう。


神聖結陣(サレズ・イルレ)!』


 2人にガラスの破片が触れる直前、唱和する声と同時に、白く光る半円が築き上げられた。


 振り返ったファンとクロードは、神官長たちが追い着いて来た事を知る。


 皆一様に真剣な表情で両掌を体の前に突き出して開いている。


 その掌が魔法の光に包まれ、白く輝いていた。


 結界に遮られたガラスの破片は、2人を傷つける事無く、ことごとく床に落ちて行く。


 だが、堂の揺れは収まらない。


 大きな音を立てて台座が2つに割れる。


 噴き出ようとする力を押し止める様に、五芒星の頂点に埋め込まれていた宝石が光を放って浮かび上がった。


 そのうちの2つが、凄まじい速度で全員の間を擦り抜ける。


 残った3つもまた神速で動いた。


 割れた台座の中央。


 柄のあった場所に天使が姿を現した。


『契約を。契約を。契約を。この地の封じを解いてはならない。使い手に足る者よ。疾く、疾く、契約を』


 真っ白な、紋白蝶の様な形をした羽根を持つ、美しき女天使はその美貌を裏切らない美しい声で、けれども強い口調で告げた。


「――!?」


 揺れが激しさを増して行く。


 力が空気の流れを取り込んで、うねる。


 神官長たちは魔法の範囲を堂全体に広げ、強度を増す。


 当然、その分負担は大きくなった。


 それでも、抑え切れない。


 混ざり合った5色の(ちから)が周囲に広がった。

ご覧いただきありがとうございます。


ファンたちの制止も虚しく、女神の至宝たる神剣を引き抜いてしまったジャンヌ。激しい光の中から現れた天使は、彼女に「契約」を迫ります。


巫女姫ジャンヌは、弟カルロスを救うため、戦う力を欲し、運命的な「契約」に応じるのでしょうか――?


【今後の連載スケジュールについて】


物語は核心へとさらに深く、加速していきます。続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】

――――――

ノリト&ミコト

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