第4話・遭遇・拘束・切り裂く刃~押し開かれた扉の奥に~
第1章 戦う女神の選んだ巫女姫
第4話・遭遇・拘束・切り裂く刃~押し開かれた扉の奥に~
昼拝を終え、午後の授業が始まる前に、奥向きに近い図書殿へ寄ったアインは、教室への道すがら、まばゆい光が近づいて来るのに気づいて身を強張らせた。
これまで一度も遭遇した事などない鮮やかな朱金。
怖い程強い輝きが近づいて来る。
逃げるなり、あるいは人を呼ぶなりすれば良いのだろうが、あまりに怖すぎて、息さえ詰めて硬直する。
光はどんどん近づいて来て、ついにはアインが突っ立っている廊の角に差し掛かる。
思わず目を瞑ったアインは何かにぶつかって尻餅を着く。
「おっと……」と男の声が降って来た。
「子供?こんなところに?」
直後に少女らしい高さと柔らかさを持った声が、強い疑問の色を乗せて響いた。
ジャンヌとリオンである。
「え?しかも神官呪師の見習い?どう見ても最低入学年令には見えないけど?」
続けられて、アインは恐る恐る目を開き、リオンは何かに気づいた様に舌打ちした。
「こいつ。もしかして……」
吐き捨てると言うよりは明らかに棘の混じった声で呟いて、いきなり掴み掛かる。
中天を過ぎた太陽と、目の前の二人の姿を霞ませる程の眩い輝きに目を細めたアインは抱き上げられて驚いた。
「えっ…!?あの……っ!?」
慌てて逃れようと身を捩るが、リオンはその抵抗を力づくで抑え込み、口の中に布を突っ込んで塞いでしまう。
「ちょっと!リオン!?」
ますます抵抗を強くしたアインに、流石にジャンヌも声を上げる。
「人を呼ばれでもしたら面倒だろう? 途中まで連れて行って、そこで待たせよう」
あっさりと言って、先に立って歩き出してしまう。
もう一度呼びかけたジャンヌも、止まる様子がないどころか、逆に急かされて後を追った。
何が何だか分からない内に、アインは立ち入りが禁止されている森に連れ込まれ、暫く行った所に現れた柵門の前で、服が着崩れるのを防ぐのに使っている紐で木の幹の括り付けられた。
存外きつく縛り上げられて、うっすらと涙を浮かべる。
逃げられないように拘束したことで立ち上がったリオンを見上げ、同時に周囲の様子を目にした。
此処は禁足地となっている、敷地の東側に広がる森の中。
目の前には輝くばかりの金髪の少女と、火の様に赤い髪の若者。
そして柵門の向こうには鬩ぎ合う力の奔流。
息を呑んだアインは、二人がよりにもよってその柵門に向かうのを見て声を上げる。
上げようとして、口の中に詰め込まれた布に遮られて呻く。
「……リオン」
様子に、ジャンヌは非難の響きを乗せて呼ぶが、リオンの方は気にもしない。
「暴れる奴を運ぶのは大変なんだ。それに、さっきも言った様に、人を呼ばれでもしたら面倒だろう?」
あっさり言って、鍵のかかった錠を示す。
一度唇を開きかけて……溜息に変えたジャンヌは腰に佩いた細身の剣を抜く。
女神の巫女に相応しい、繊細にして精密な宝飾を施された柄とは逆に、軽量化されて細くはされているが、鋭い切れ味を持つ刃を上段から下段に向けて一閃。
たったそれだけで、錠ごと結界を切り裂いた事にアインは目を見張った。
一体何者なのかと、初めて疑問が浮かぶ。
だが深く考える前にリオンが押し開いた門から漏れ出て来た力に慄く。
怖い。などと言うものではなかった。
外に出ようとする力と中に留めようとする力。
同等の強い力がぶつかり合っていて、吐き気すら覚える。
ぐらりと視界が揺れた。
もう一度、アインを気にかける様に見たジャンヌは、だが戻ろうとはしない。
リオンに促されるまま門扉の向こうに続く石畳の小路に足を踏み入れた。
ご覧いただきありがとうございます。
拘束されたアインが目の当たりにしたのは、ジャンヌがごくあっさりと結界と錠を切り裂くという衝撃的な光景でした。
2人はアインが吐き気を催すほどの力が鬩ぎ合う禁足地の奥へと足を踏み入れましたが、その扉の向こうに待つものとは一体何なのでしょうか。
【本日、初日の連続投稿はこれで完了です!】
6話続けてお読みいただき、本当にありがとうございました。
【今後の連載スケジュールについて】
明日以降、物語はさらに加速します。続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【本作は第1部まで執筆完了済みです。よければ最後までお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




