第6話・その輝きが消し去って~はかない微笑《え》みに涙する~
第6章 導く光~そして…~
第6話・その輝きが消し去って~はかない微笑みに涙する~
ジャンヌたちが連れ込まれていたのは、皇都の西に位置する廃離宮だった。
そこは、聖皇国建国期に使われていた旧都の仮宮殿で、皇都が整備されて後、徐々に訪れる者もなくなり、ほぼ廃棄されていた場所。
皇都からは馬車でも四半日。騎馬なら数時間で到着できる。
まさか、皇都からこんなに近い位置にアーグがいたとは思わなくて、後に周辺の廃墟となっている場所の調査も行われることになったが、それは落ち着いてからのこと。
今は急行した救援との合流を果たし、急いで皇都へと向かう。
アーグに心の宝石を奪われ、操られている間にアインが零した光る涙のおかげか、ジャンヌを始め、ファンもリオンもクロードも、誰も怪我は残っていなかった。
代わりに、そのあとアーグによって自身の胸にナイフを突き立てられたアインは重傷。
意識もなく、途切れそうな呼吸を何とか保ってはいるが予断を許さない。
怪我はなくても、ジャンヌたち4人も疲労困憊。
緊張が解けたせいかリオンも眠ってしまい、クロードがアインと共に神殿へと送り届けることになった。
逆に、5年もの間求め続けた、ジョンの呪いを解く希望を手にしたジャンヌの神経は高ぶっている。
騎馬で駆けたいのをファンに強固に反対され、馬車での移動を余儀なくされているせいか、気がせいて「速く、速く」と命じ続けていた。
「ジャネット皇女!」
「姫様!!」
もどかしく思いながらも、やっとたどり着いた皇宮は酷く騒がしい。
馬車がちゃんと止まる前に飛び降りて、ジョンの部屋へと走るジャンヌの姿に、悲鳴じみた声が上がっていたがすべて無視。
慌ててファンが制止を叫ぶが、ジャンヌの足は止まらない。
「きゃっ!?」
ノックするのも忘れて、蹴破る勢いで開いた扉の内側で、ジョン付きの女官が驚いて声を上げた。
「ジャネット皇女?ファン卿!?」
「姫様!お待ちください!!」
「っ。カルロス!!」
制止を振り切り、寝室に駆け込む。
中でジョンの世話をしていた女官や、容体を見に来ていた侍医が目を丸くする。
「これを…」
「っ!お待ちくだ…!」
震える声で、ジャンヌがジョンの胸元に手を伸ばす。
戦場から、そのまま駆けて来たジャンヌのあまりの惨状に、半ば悲鳴のような声で侍医が叫ぶが、その声が途中で止まった。
大きく目を見開く。
薄青い、楕円状の宝石がジャンヌの手から零れて、ジョンの胸に置かれる。
その瞬間に、宝石は眩い光を放ちジョンの中へと消えていく。
ずっと、一定に保たれていたジョンの呼吸が一度大きくなって、吐き出す息と共に、瞼がゆっくりと持ち上がる。
白い瞼に隠されていた、紺青色の瞳が5年ぶりに姿を現す。
「…っ。カルロス…カルロス?わかる?」
まだぼんやりとした様子で、辺りが見えていないかのようなジョンに、ジャンヌが震える声で呼びかける。
居合わせた侍医も、女官も、護衛の騎士も、全員が大きく目を見開き、息を飲む。
「…皇子…」
ファンの唇からも掠れた声が漏れた。
「…ね…え…」
ふわりとほほ笑んだジョンが途切れがちにジャンヌを呼ぶ。
「っ!!カルロス…っ!!」
わっと、ジョンに抱き着いて、ジャンヌは声を上げて泣き出した。
「…なんと…」
「…皇子、皇女…」
奇跡の瞬間。
そうとしか言いようのない状況に、止めるのも忘れて侍医が息を飲み、女官たちも貰い泣きして口を押える。
「………」
状況に、ほんの一瞬、目元を潤ませたファンが、その場で膝を着き、深く頭を下げた。
一瞬遅れて、護衛の騎士たちも一斉に敬礼する。
「…あねうえ…」
5年もの間、ずっと眠らされていたに等しいジョンはすっかり筋力が弱り、声を出すのもままならない様子。
それでも、確かに意識を取り戻し、自分の意思を示していることに、静かな興奮が歓喜となって広がっていた。
ご覧いただきありがとうございます!
第6章第6話、第6章ラストとなりましたが、いかがでしたでしょうか。
ジャンヌたちが過酷な戦いを乗り越え、やっとのことで掴んだ希望。
心の宝石が体内に戻ったことによって、ジョン皇子が目を覚ましました。
瀕死のアインを神殿に託し、疲労困憊の体で馬車を急がせるジャンヌ。
あの瞬間、彼女の頭の中には弟の姿しかなかったでしょう。
そして、ついに響いた「…あねうえ…」の一言には、全てが報われるような思いがしますね。
そして次回は物語の【第1部 終章】となります。
あの人はどうなってるのか!? どうなったのか!?と気になるキャラクターの安否も語られ、物語の第一幕が締めくくられます。
次回、終章もどうぞお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
【ミニコラム掲載中!】
活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
【読者の皆様へのお願い】
「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
――――――
ノリト&ミコト




