第2話・女神の巫女と赤髪の青年~皇宮呪師の力を借りて~
第1章 戦う女神の選んだ巫女姫
第2話・女神の巫女と赤髪の青年~皇宮呪師の力を借りて~
エスパルダ聖皇国の首都である皇都・アンシェは堅牢な城壁に囲まれ、正円に近い形をしている。
街の中央には皇宮があり、そこから東西南北を大通りが貫く。
出入りは南北に備えられた大門からのみ可能で、南大門を正門。北大門を裏門とも呼ぶ。
残る東西のうち、東は国内すべての神殿を統括する主神殿があって、その敷地の半数以上は森。
そんな神殿の一角、孤児院のある辺りは現在、修繕工事に追われていて人の出入りが激しかった。
怒声や騒音が満ちる中、年若い男が一人。
そわそわと落ちつかなげに大通りに続く道を眺めていた。
日差しに、その赤い髪が禍々しいまでに鮮やかだ。
神話に「赤毛の魔女」と記された、魔族と化し、女神と争った女呪師の逸話から、この大陸では赤い髪色は嫌われている。
若者も、生まれてすぐに実の親からは捨てられた。
死ぬ所であったのを、ある少年に救われ、その少年と共にこの孤児院で育ったのだが、事ある毎に騒ぎを起こすので、孤児院一の問題児として大人たちを悩ませていた。
と、大通りに通じる角を曲がって、黒いフードを被ったマント姿の少女が走って来る。
気づいた若者は喧騒に紛れて孤児院の外に出た。
「おーい。ジャンヌ!」
声を潜め気味にして呼びかけ、こっちこっちと手招きする。
呼ばれて少女はごく当たり前の様に若者の元に走り寄った。
人目を避けて合流する。
「ごめん。リオン。遅くなった!」
息を弾ませて告げた少女こそ誰あろう、このエスパルダ聖皇国の皇孫皇女にして、生まれてまもなく女神の祝福を受けた巫女姫。
本名、ジニア・プローフ・ジャネット。
愛称はジャンヌ。
王侯貴族は名を尊ぶ。
故に、個を表すファーストネームと、生誕を神に報告した際に授けられる神託名ともいえるセカンドネームは基本的には呼ばれることがない。
例外としては、ファーストネームは親や兄弟といった家族と、特別に許された特に親しいものだけが呼び、セカンドネームは神殿で聖職についている者が呼び掛けることがある。
そのため、もっぱら呼称として使われるのはサードネームであり、愛称もサードネームを使う。
ちなみに、貴族間での呼び掛けはサードネームに「卿」をつけるのが一般的。
「やっぱりクロードのガードは固い。」と続けられて若者、リオンが笑う。
「当然だろう? クロードは神殿護衛官でもあるんだからな。呪師共の監視をしているくらいなんだ。呪師じゃないジャンヌを見張るくらい、訳ないさ」
自分の事の様に得意げに言うのは、クロードこそがリオンを救ってくれた恩人だから。
少々拾い癖のあるクロードがまだ幼い日に拾ったのが、生まれて間もないリオン。
以来、兄代わりの保護者となって、色々と気を配ってくれている。
「でも……」と続けたリオンは、今度は少し意地悪げに唇を歪める。
「じゃあ今頃、ファンの野郎は大わらわだな……ざまあみろってんだ」
口悪く吐き捨てる。
貴族育ちのファン卿ディアスにとって、仮にも女神の巫女である皇女と魔女の申し子と陰日向に囁かれる孤児院育ちの悪ガキがお互いに「友達だ」などと言い合い、実際に行動を共にするなどと言うのは理解不能だった。
結果、事ある毎にファンがリオンを罵倒する事になり、リオンがいちいち突っかかるので、両者の間は泥沼化し、その溝は深まる一方だ。
「今日もインスがこっそり手助けしてくれたから、クロードが交代で外してる隙に出れたわ」
「さっすが、インスだな。バレたらヤバいだろうに」
息を整えたジャンヌの説明に、大うけしたリオンは思わず手を叩く。
皇宮呪師であるインス=ラントは以前からジャンヌに協力的で、リオンのこともありのままに受け入れてくれているので、二人との仲は良好。
ただ、皇宮呪師が、その魔法の力を使って皇女の脱走を手伝っている。などと知られたら、どんな罰を受けるか分かったものではないので、3人だけの秘密だ。
「で、少し予定より遅れたけど、決行。だろ?」
確かめる様に言われてジャンヌは「勿論」と返す。
2人は喧騒でごった返す人目を縫って、神殿内部へと入り込んだ。
ご覧いただきありがとうございます。
巫女姫ジャンヌと、赤髪の問題児・リオンが合流し、いよいよ「決行」に向けて動き出しました。
仲間である騎士ファンや護衛官クロードを出し抜いてまで、神殿内部へと向かった2人は一体何を企んでいるのか……。
【この後も連続投稿が続きます!】
本日は、この後も約40分間隔で第1章 第4話まで連続投稿いたします。物語の核心に迫る展開となりますので、どうぞお見逃しなく!
【今後の連載スケジュールについて】
明日以降は、毎日22時に1話ずつ更新予定です。
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ノリト&ミコト




