第3話・問われる意志の行き先~悪意の赤が描く画《え》は~
第6章 導く光~そして…~
第3話・問われる意志の行き先~悪意の赤が描く画は~
大きな破壊音を立てて、壁の一方が崩れ落ちる。
外は疾うに日が暮れ、秋の夜風が熱せられた空気を一気に冷やしていく。
「…頑張りますねぇ…」
ほう。と感心してみせたアーグは、いまだジャンヌに一太刀入れられて以降、一切傷を負っていない。
圧倒的なまでの実力差を見せつけられて、4人共に歯を噛みしめる。
神剣が放つ光は4人をそれぞれ包み、まるで剣が手の延長になっているかのような自由度と一体感を与えている。
だというのに、決定打どころか、僅かな損傷も与えられないことに悔しさが増す。
更に、神剣を使う疲労感が蓄積し、徐々に威力が落ちていた。
――これ以上、時間はかけられない。
そのことを全員が理解していた。
アーグを倒す方法は、本当にあるのだろうか?
せっかく神剣を、神の剣と言われる武器を手に入れたのに、これだけ戦って、殆ど何もできていない現状に、不安が心の隙間に忍び寄ってくる。
けれど同時に、ジャンヌが神剣に宿る意思を具現化させた時に、確かにアーグに傷を負わせることができたのだから、全く通用しないわけではない。
なら、できることは…
4人共が、同じ結論に至る。
大きく息を吸って、吐いて、改めて神剣を構え、アーグに向き直った。
何をするつもりなのかをアーグも察したのだろう。
すうっと目を細め、ぱちりと指を鳴らす。
赤い光が魔法陣を描き出した。
「「…っ!」」
瞬時にファンとクロードが反応した。
ファンがパッと身を翻し、アインの方に向き直り、クロードは油断なくアーグを見据えて戦斧を構える。
赤い魔法陣が描き出されたのは二か所。
一か所はアーグの足元。
そしてもう一か所はアインの足元。
ジャンヌたちも思わず動揺するが、二つの魔法陣はすぐに消え去り、立たされたままだったアインがアーグの目の前に現れる。
「「「「…っ!?」」」」
再度振り返ったファンもジャンヌたちと同時にアインを見た。
白く青ざめ、虚ろな瞳から涙を零し……
口の端には朱が伝い、苦しげに喘いでいるのに無表情のまま。
胸元に咲いた紅華が鮮やかに広がり続け、寝衣の白を染めていく。
辛うじて、まだ生きていることを伝える涙と喘鳴に、ジャンヌは苦しげに顔を歪めた。
先ほどの魔法陣は、自分たちをここに引き込んだものと同じようなものなのだろう。
自らは一歩も動くことなく、アインを目の前に運んだのだ。
「…っ。卑怯者…」
「最高の誉め言葉ですよ」
アーグがどういうつもりでアインを運んだのかは明白。
唇を噛んで絞り出したジャンヌの言葉に、アーグは鮮やかに笑った。
神剣の意思を具現させ、その刃をアーグに届けようと思うのならば、アインごと斬るしかない。
そんなことはしたくないのに。
むしろ、今からでも、何とか助かってほしいのに。
ジャンヌの葛藤を見て取ったのか、薄く笑みを浮かべたアーグは、呪いの魔剣の切っ先をアインの首筋にあてがう。
ヒュッと、息を飲んだのはジャンヌか、リオンか、クロードか。
軽く目を見開いたファンはグッと、神剣を持つ手に力を込める。
アーグの手の中で、呪いの魔剣にはめ込まれた濃紫の宝石がまだかすかに光っていた。
ご覧いただきありがとうございます!
第6章第3話は、アーグの卑劣な心理戦がジャンヌたちを追い詰めました。
神剣の光に包まれているにもかかわらず、決定打を与えられないジャンヌたち。そして、アーグは指を鳴らしただけでアインを人質として自分の目の前に移動させます。
アインごと斬るしかアーグに刃を届かせる術がない――。
笑うアーグは、呪いの魔剣の切っ先をアインの首筋にあてがいます。
ジャンヌの葛藤は限界に達しました。大切な仲間を前に、彼らは、何を決断し、どう動くのか?
絶体絶命の窮地で、物語は加速します!
次話もどうぞお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




