第5話・目覚める炎鳥~煽り、煽られ、行き詰まり~
第5章 セント・ブレイズ~今、誓約を胸に~
第5話・目覚める炎鳥~煽り、煽られ、行き詰まり~
赤い光。
リオンの持つ神剣が纏う光は、ジャンヌの持つ神剣が纏う光とは少し違った赤色。
ジャンヌの持つ神剣が纏う色が朱色に近いとすれば、リオンが持つ神剣が纏う色は橙に近い。
炎を消し去っても、なお続く光の奔流に、半ば唖然とした表情でリオンは神剣を見つめる。
『本当に、あんたはバカなの?』
「はあっ!?」
頭に響いた声に、思わず青筋を浮かべて声を荒げる。
『あたしのことをすぐに忘れるんだから、バカと言わずになんていうのよ?』
あざ笑うというよりは揶揄うような声音。
実際にバカにしているというよりは、声の通り、揶揄っているのだろう。
だが、聞き取ったリオンは言葉通りに受け止めて神剣を睨んだ。
「うっせぇ!用がないなら黙ってろ!!」
「リ、リオン?」
いきなり怒鳴りだしたリオンに唖然として、ジャンヌが呼び掛ける。
様子にファンも軽く目を見張るが、クロードとアーグには何が起きているのかわかっているようだった。
「火の神剣の意思ですか。確か、炎鳥でしたか……たかだか鳥風情が、我が君と同じく炎を操りますか」
唇を歪めて笑みを浮かべたアーグが、光り続ける神剣を睥睨する。
「うわっ!?」
途端に、リオンの持つ神剣が光を増し、炎を吹き上げた。
「…相変わらず、気が短い鳥ですね」
クツクツと嗤うアーグに煽られるように、吹き上がった炎が形を成す。
それは、アーグの言うとおり、炎の鳥だった。
燃え盛る炎が大きな翼となり、幾本もの長い尾と冠羽を持ち、羽ばたくたびに火の粉を散らす。
炎そのものではあるが、神剣を持つリオンにその熱は感じられない。
それよりも、いきなり出てきたそれに驚いて、目と口を大きく開けて息を飲む。
炎鳥。とアーグが言った通り、炎でできた鳥は神剣から姿を現し、甲高く啼いて口から火の玉を飛ばす。
アーグは無造作に剣で斬り捨て、床を蹴って避ける。
壁や床に当たった火の玉が爆発するように広がって、どろりと赤く溶かしていく。
「ちょっ!!」
完全においていかれたリオンが抗議の声を上げるが、炎鳥は止まらない。
執拗にアーグを追って火の玉を吐き続けた。
半ば暴走状態の神剣に振り回されて、リオンは奥歯を噛みしめる。
現れた鳥が、誤ってジャンヌやクロードに火の玉を吐かないようにと、力を込めた。
「…何なの?一体…」
呆気に取られて呟くジャンヌの声に、ファンは一つ、息を吐く。
意識をしっかりと保とうとしなければ、いつ途切れてしまうかわからない。
状況をまともに判断できるだけの思考の纏まりも欠け、それでも意地になって剣を握りしめる。
たとえ意識を失おうとも、あるいは命を失っても、何としてでもジャンヌを守る。
その思いだけで辛うじて持たせてはいるが、一向に引かない痛みに限界が近かった。
リオンが、神剣に振り回されている様子であるのを見て取ったクロードは、アーグの動きを止めるべく土壁を立ち上げる。
もとより、この部屋はそこまで広くはないので、動き回れる範囲は限られていた。
それを、避けようがないほどに狭くしていく。
「…へえ?」
考えを察して、アーグは緩く笑みを浮かべる。
なるほど、正しい戦術であると認めながらも、無駄なことをと内心笑う。
三方を土壁に囲まれたところに火の玉が飛んでくる。
軽く肩を竦めて、アーグはぱちりと指を鳴らした。
それだけで、飛んできた火の玉が消えてしまう。
「っ!いい加減にしろっ!!」
ほぼ同時に、リオンが苛立たしげに怒鳴りつけると、漸く鳥は火の玉を吐くのをやめた。
瞬間、ドッとのしかかる疲労感に足元がふらつく。
「リオン!?」
驚いたジャンヌの声を聞きながらも、床に片膝を着き、剣を立てて体を支える。
「…お前…。加減しろ…っ」
毒づくように漏らした声に、炎の鳥は短く鳴いて剣の中に消えていく。
「なるほど?主導権を取り戻せる程度の力はあるようですね?」
様子に、アーグは面白がるような口調で笑う。
リオンは無言。
だが、悔しげに唇を噛み、睨みつける。
「とはいえ、それ以上は何もできなくなったでしょう?」
アーグの言うとおり、神剣に宿る意思である炎鳥に、半ば無理やり力を使わされ、肩で息をするリオンは既に疲労困憊。
数日前、インスが魔法の支配権を奪われて、影人形を倒すために神剣の力を引き出した時と同様。
いや、それ以上の疲労感に襲われていた。
ご覧いただきありがとうございます!
第5章第5話は、リオンと火の神剣に焦点が当たりました。
リオンの神剣に宿る意思が、炎鳥の姿となって顕現!
ここにきて神剣に宿る意思が「姿を現す」ことができると発覚しました。
しかし、現れた炎鳥はアーグに煽られ、半ば暴走状態で猛攻撃を開始!
結果、逆にリオンは、強烈な疲労感に襲われ、戦闘不能寸前の状況に陥ってしまいました(;・∀・)
ファンは激痛で動けず、リオンは疲弊。クロードの覚醒した地の神剣の力も、アーグを倒す決定打とはなりませんでした。
次々と希望の光が射すも、絶望的な反動を繰り返すばかり…この状況で、次に戦局を動かす「一手」はあるのか?
次話もどうぞお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




