第4話・誓約・地の神剣は覚醒す~それでも変わらぬ力量差~
第5章 セント・ブレイズ~今、誓約を胸に~
第4話・誓約・地の神剣は覚醒す~それでも変わらぬ力量差~
魔物と化した子供たちが悲鳴を上げ、朱金の光に焼かれて消える。
驚いて目を見開いたリオンの目の前で、魔物から死体に戻り、その死体もボロボロに崩れ去って何も残らない。
微かにアーグが舌打ちするが、眩い朱金に遮られて、その姿も霞んでしまっていた。
光の眩さに動きを止めたアーグを見据えたまま、クロードはシスとの会話を続ける。
『誓約を望むか?地の神剣の契約者よ?』
「ああ」
脳裏に響く声に、クロードは頷く。
朱金の光が収まって、周囲の状況が見えてくる。
剣を構えて佇むクロード。
光から身を守る様に、顔の前に腕を上げて動きを止めたアーグ。
アインを抱いたまま、ファンを守る様に寄り添うジャンヌに、掠り傷でしかないのに激しい痛みに蹲ったままのファン。
そして、そんな3人を守る様に剣を構えて肩を怒らせるリオン。
『汝の誓約は?』
そんな中で、クロードの脳裏へと声をかける神剣の意思。
「俺は……」
それに応えるクロードが望むこと。それは……
『承知した』
声なき思いの宣言に、ごく短くシスは応える。
『誓約は宣言され、命約は成されり。完遂せよ。その本真のままに』
呼べ。我が名を。
シスの言葉と共に流れ込んでくる真名。
「『シス・ノーメ』」
その真名を微かな吐息と共に刻む。
解放せよ。地の神剣の銘を持って。
誰に教えられるでもなく、浮かび上がってきたその銘は……
「『覚醒よ。《エルデソール》』」
呼びかけに応えて、地の神剣が光を放ち、形を変える。
「……え?」
「何が、起こっている?」
「っ!クロード!」
ジャンヌが、ファンが、リオンが、驚いて息を詰める。
アーグが面白そうに口角を上げ、うっすらと笑む。
そして、光が和らいだ時、クロードが手にする神剣は戦斧に姿を変えていた。
やや長柄の大斧は、刃の部分が柄の半分近くもの大きさがあり、重厚でありながら優美。
全体を黄色い光が包み込み、その光が戦斧を持つクロードの右腕から全身へと、帯のように揺らめいて緩やかに巻き付いていた。
「お見事ですね。誓約を成立させ、神剣の真の姿を解放しましたか」
パチパチと拍手をしながらアーグが言う。
「え?誓約?真の姿って……?」
言っている意味が分からなくて、ジャンヌは戸惑ったように呟く。
「しかし……」
ジャンヌの声を無視して、アーグは目を細める。
面白がるように。
「こんな、言ってみるなら追い込まれている状況で、思い付きで誓約を成すとは……後悔しますよ?」
「……」
若干嘲るような声音で言われてもクロードは無言。
黙って戦斧を構えた。
一閃。
上段から下段へと振り下ろす。
ただそれだけで、凄まじい衝撃波と共に、次々と土槍が現れる。
軽く地を蹴って後退したアーグは、笑みを浮かべたまま剣を横に薙ぐ。
生じた赤い光が土槍を切り倒し、衝撃音と土煙が立ち上った。
土煙を割って、距離を詰めたクロードが戦斧を振り下ろす。
あえて、受けることなく距離を取ったアーグが、ぱちりと指を鳴らすと、切り倒された土槍が炎に包まれ、グズグズに溶けて辺りに広がる。
それを見て、クロードは柄の先でトンと、床を叩いた。
途端に大穴が空き、熱せられた土槍を飲み込んで口を閉じる。
「……お見事ですね……完全に、神剣の力を使いこなしますか……」
様子に、アーグは面白そうにそう告げた。
「な、によ……あれ……」
「クロード、すげぇ!」
唖然として呟くジャンヌを守りながら、リオンが歓喜の声を上げる。
「あれが、神剣の持つ、真の力……と言う訳か」
アーグの言葉からそうと察して、ファンは口の中で小さく呟いた。
仮に、今、クロードがしているようなことを、それぞれの神剣ができるのであれば、確かに魔族に対しても有効な対抗手段となるだろう。
だが問題は、どうやってその力を引き出せるようになったかということ。
詳しい方法まではわからないが、何をしたのかはアーグの言葉でわかっている。
誓約を結び、神剣の真の姿を解放した。
だが同時に、アーグの言うとおり、こんな、言ってみれば追い詰められた状況で、思い付きで成した誓約など、後々後悔することになるのは自明の理。
とてもではないが、するわけにも、させるわけにもいかない。
(……それに、誓約が成ると分かっていて、それでもさせたということは、これだけではアーグを倒すことはできないということ……)
アーグがわざと見逃したことに気付いているファンは、だからこそ、むしろ焦って誓約を結ぶのが危険であると判断する。
だが、ではどうするのか?と問われれば、次善の策があるわけでもない。
むしろ、時間の経過とともに、激しい痛みに意識が持っていかれそうになっていて、思考もまとまりを欠き始めていた。
「けれど……そう……」
そして、そんなファンの不安を肯定するかのように、アーグはにこやかな笑みを見せる。
「地の神剣の力では……あなたでは、私を倒すことなどできませんよ?」
言い終わるや否や、一気に距離を詰めたアーグが剣を振り下ろす。
寸前で受け止めたクロードの顔に、微かに驚きが浮かんだ。
刃がぶつかり合い、一瞬動きが止まる。
その瞬間に黒い炎が吹き上がり、クロードを飲み込むように動いた。
「クロード!!」
ギョッとしてリオンが叫ぶのとほぼ同時に、アーグの剣を弾いたクロードが炎から逃れるように横に飛ぶ。
炎はそのまま団子状になっているジャンヌたちに迫ってきた。
「「なっ!?」」
驚いて思わず声を上げたのはジャンヌとリオンの2人だけ。
咄嗟に動こうとしたファンは、痛みで体の自由が利かずによろめき、クロードは土壁を立ち上げて炎を遮ろうとする。
だがその土壁を焼き溶かして炎が迫る。
(まずい! まずい! まずい!)
焦るリオンの脳裏に、声なき声が響く。
『呼びなさい』
どこか楽しむような、緊張感のない艶声。
知らないはずなのに、知っている。
そんな不思議な感覚と共に、声の主に思い至る。
「……サラ?」
半信半疑でその名を呟く。
瞬間、リオンの持つ神剣が赤い光を放ち、炎を消し去った。
ご覧いただきありがとうございます!
第5章第4話は、絶望的な戦況を打ち破るための一手として、地の神剣が覚醒する話になりました!
クロードはついに地の神剣との誓約を成立! 神剣は、重厚な戦斧《エルデソール》へと真の姿を解放し、クロードは土を自在に操って魔族アーグに対抗します。
しかし、アーグはいまだに余裕を崩さず、黒い炎で一気にジャンヌたちを追い詰め――!
絶体絶命の危機の中、リオンの脳裏に響く声。
呼び掛けたリオンに応えるように、火の神剣が光を放ち、炎を消し去りましたが、それはアーグを打倒する一歩となるのか!?
次話もどうぞお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




