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第1話・性別不詳の幼き見習い~その祈りは僅かでも~

第1章 戦う女神の選んだ巫女姫



      第1話・性別不詳の幼き見習い~その祈りは僅かでも~



 かつて、人間の女呪師(おんなじゅし)が魔族と化し、女神と覇権を争った大陸・インフォース。

 その中にあって、最大の面積を誇るエスパルダは、同時に最古の聖皇国。


 赤毛の魔女の神話から、魔法が厳しく管理される中、最も多くの使い手――呪師(じゅし)を抱え、女神の秘宝を有している。


 暁の女王・ディエルは公正を司り、その秩序を守る為、自ら戦場を駆ける戦女神。


 聖皇国は、かつて女神と共に戦った英雄によって興された国。

 今また女神は、己が巫女として、現皇帝の孫に当たる姫を祝福した。


「では、そのお姫さまは、女神さまの巫女姫さま……なのですね?」


 遠慮がちな声がおずおずと……と言うより恐る恐る確認する。

 無意識に小首を傾げて、首の後ろで一纏めにされた緩い結い髪がさらりと背を撫でた。


 深くて濃い紫の髪と瞳は、大陸全土でも珍しく、その深濃(こさ)故に一見黒にしか見えない。

 それとは対照的に白い肌は、元来色白のエスパルダの民より更に白く透き通って病的なほど。青ざめてさえ見える。


 子供特有の大きな瞳を伏せがちにして、囁く様な小さな声。

 年の頃は5、6歳の子供は、神官呪師見習いの初年生・13歳用の服を着た、どこからどう見ても少女だった。


 それも、神が丹精込めて()み出した美少女にしか見えない。

 だが着ている制服は少年用で、子供が男の子である事を示していた。


 神官呪師(しんかんじゅし)は神殿に仕え、神官としての奉仕に当たりながら魔法を学び、必要に応じて使用する呪師。


 だからその活動範囲の殆どが神殿内部で、外に出る事は稀だ。

 ここも神殿内の一角にある学校と定められた場所。


 本来であれば、同学年の生徒は同じ教室で授業を受けるのだが、最低入学年齢の13歳に、どこからどう見ても満たないこの子供だけは、特例で入学を許可され、個別授業を受けている。


 午前も半ばを過ぎ、少し強さを増した光が差し込む室内で、教師役の女性神官と子供とが向かい合って机に着き、教科書となる古書を開いて、世界の成り立ちから現在の大陸の情勢などを説明し終えた所。


 口を挟んでも大丈夫なのかを慎重に探る様な言葉に、神官は殊更穏やかに微笑む。


 相手に不快な様子が感じられない事にホっとして、子供は少しだけ目を上げて神官の言葉を待つ。

 長い睫が落とす儚げな陰がその分だけ上向いた。


「はい。その御生誕を女神様にご報告申し上げた際、先触れの天使・ココ様と仰る天使様がご降臨下さり、祝福されました。その翌年には、現在の皇太子であられる弟君、ジョーン皇子もお生まれになり、聖皇国の未来は安泰だ。と、誰もが思っておりました」


 そこまで言って、神官はほんの僅か、吐息を漏らす。


 神官の、ごくごく小さな変化を敏感に察して、子供はさっと目を伏せ、身を強張らせる。


 子供は必要以上に緊張していて、神官の一挙手一投足だけではなく、些細な心境の変化にまで気を張り詰めている。


 そんなに緊張しなくても良いと、神官は何度目になるか分からない注意をして、子供は「はい」と頷きながらもますます身を強張らせて、これまた何度目になるか分からない謝罪の言葉を口にした。


「けれど5年前。先の皇太子ご夫妻を始め、多くの方が亡くなる大事が起こりました」


 きりが無いのはこれまでの経験から知っている神官は先を続ける。


 子供は大きく目を見張り、吐息の様に「そんな…」と漏らす。


「それに、ジョーン皇子の病もお篤い。ご承知の筈だと言うのに…ジャネット皇女は……」


 言葉を濁して苦笑いする。

 眼差しが窓の外、皇宮の方を見た。


 皇太子たる皇子の病と言う更なる情報に、子供はますます驚いて息を呑む。


 神官は視線を子供に戻して「アイン」と、その子供の()()()となっている言葉を紡ぐ。


「どうか貴方も祈って下さい。ジョーン皇子の病が少しでも早く、僅かでも良くなる様に……そしてこの国の……いいえ。すべてのものの平穏無事と幸福を……」


 言われて子供。アインはこっくりと、深く頷く。

 素直に胸の前で十字を切った。


 ――一度大きく、そしてその上に、願いを込めて小さく。


 複十字(ディエルじゅうじ)の形を取る。


「はい。僕は……僕にできる事は、ほんの少ししかないけれど……それでも、祈る事なら、できるから……女神さまの御許に、僕の祈りが、ほんの少しでも届きます様に……」


 両手を胸の前で組んで、祈りの形を取る。

 顔を伏せて、瞳を閉じて、アインは祈りの呪文を唱えた。


ご覧いただきありがとうございます。


5年後の世界で、ジャンヌと仲間たちの物語が始まりました。


騎士団長ファンや孤児のリオン、護衛官クロードといった個性豊かなメンバーが、巫女姫ジャンヌの無謀な行動にどう巻き込まれていくのか、ぜひお楽しみください。


【この後も連続投稿が続きます!】


本日は、この後も約40分間隔で第1章 第4話まで連続投稿いたしますので、引き続き、物語の続きを読んでいただけると幸いです。


【今後の連載スケジュールについて】


明日以降は、毎日22時に1話ずつ更新予定です。


【お願い】


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【本作は第1部まで執筆完了済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】

――――――

ノリト&ミコト

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