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第1話・人が嫌うは赤髪の~終焉を告げる血まみれの~

第5章 セント・ブレイズ~今、誓約を胸に~



      第1話・人が嫌うは赤髪の~終焉を告げる血まみれの~



 従兵用の騎士服を着て、ファンの執務室に控えて居たリオンは、医務殿の警備兵が持ってきた知らせを聞いて、クロードを呼ぶように言われたところで部屋を出た。


 相変わらず、ファンはリオンが従兵の格好をして潜り込んでいることに気付かない。


 騎士団の休憩室へと向かい、入り口近くにいた従兵にファンからの伝言を伝える。


「お疲れ。お前はそろそろ上がりだったか?」


「はい。申し訳ありませんが、トレーニア護衛官にお伝え頂けますか?」


 先輩にあたる従兵に対して、規律通りの礼をして頼むと、軽く「了解」と返ってきた。


「お願い致します。それでは私は失礼させて頂きます」


 ビシッと敬礼したリオンに頷いて、先輩従兵は行って良いと手を振る。


 素早く回れ右をしたリオンはさっさと更衣室に向かい……


「……ほんとに大丈夫なのか?ここの奴ら」


 護衛騎士としての服に着替えたところで呟いた。


 リオンは従兵の格好をしている時、顔を隠してはいない。


 従兵の騎士服には兵帽の着用が義務付けられているので、それを被ると完全に髪が隠れる。


 ジャンヌの護衛騎士として訓練のため入隊させられた際、この更衣室で従兵の騎士服を見かけて、ちょっと試しに着てみた。


 兵帽を被って、鏡で見ていたところに人が来てしまい、文句をつけられるかと焦ったのだが、相手はリオンに気付かなかった。


 こんな時期に新入りか?とは言われたものの、そういえば、こんな時期に皇女の護衛騎士が増えたっけ?と世間話を始められ、従兵の仕事に関してなど色々教えてくれた。


 もしかして、自分が誰だか気づいていないのか?と思い至り、試しに騎士団内を少し回ってみたのだ。


 予想通り、誰もが新入りの従兵だとしか思わなくて、仕事の合間の息抜きのように、世間話として色々な情報を流してくれる。


 もちろん、さすがに機密を漏らすようなバカはいなかったが、人間関係やら、上官の人となり、最近の話題などなど、ネタには事欠かない。


 そんな折、ファンの従兵の1人が手伝ってくれと声をかけてきたことでファンの執務室に出入りすることになってしまい……


 流石に気付かれるかと思ったのだが、バレないどころかちょっと気に入られているようだった。


 理由は、恐らくリオンが殆ど話をしないから。


 下手に喋ると身バレの危険があるから黙っているだけなのだが、それが気に入ったらしい。


 その結果、様々な機密事項の報告がある際も同席を許されるようになった。


 着替えが終わったところで更衣室を出ると、先ほど伝言を頼んだ従兵があからさまに嫌な顔をして踵を返したので、リオンは鼻で笑う。


 着る物1つで態度を変える奴らがバカバカしくて仕方ない。


 リオンはさっさとジャンヌの元へと向かった。


 一応、護衛騎士になったので、ジャンヌの私室までフリーパス。


 見張りの護衛兵も、身の回りの世話をしている女官兵もリオンを無視するし、リオンも彼らを無視する。


「おーい。ジャンヌ、遊びに来たぜ」


「あ!リオン!ちょっと聞いてよ!!全然部屋の外に出させてくれないのよ!」


 軽くノックして扉を開く。


 それをしながら声をかけたリオンに、居間でお茶していたジャンヌはふくれっ面で文句を言った。


 女官兵にリオンの分とお代わりを頼んで全員を追い出す。


「で?何か面白い話でもあった?」


 リオンがここに来る時は、何か話がある時だと知っているジャンヌの問いに、それまでの人を小バカにしたような笑みを引っ込めて真面目な顔をする。


「インスとあのガキが消えたらしい」


「はぁっ!?」


 思わぬ報告に、ジャンヌは声をひっくり返した。


「え?2人とも医務殿よね?」


 演習場で倒れた2人が医務殿の病室にいることを知っているジャンヌは、2人がそれから3日後の今朝もまだ意識を取り戻していないと聞いている。


 なのに、その2人が消えた?


「そうだよ。オレはクロードを呼ぶように言われて部屋を出たから、知ってるのはそれだけだけど、インスはともかく、あのガキも神官呪師(しんかんじゅし)見習いだっただろう?」


 その言葉でジャンヌもリオンの言いたいことに気付く。


呪師(じゅし)の家系の子供が行方不明っていう事件に関係ありそう?」


「むしろ、ないと考える方が変だろう?医務殿で寝てたはずの、呪師の才を持つ子供が消えてるんだぞ?」


 2人が消えた。


 という話だけを聞くと、インスがアインを連れて行方をくらませた様にも聞こえるが、ジャンヌもリオンもそれはないと思っている。


 何しろ、そんなことをしてもインスには利点がない。


 皇宮呪師(こうぐうじゅし)として常に護衛官に見張られる身の上とは言え、呪師は数が少ないので案外高給取りだし、インスほどの実力者は待遇もかなり良い。


 既に実力の面では、インス以上の者はいないとさえ言われているし、将来的には皇宮呪師のトップである、皇宮呪師長の座が約束されているも同然。


 どころか、下手に逃げ出せば、追われて殺されるだけ。


 それが分かっているのに、子供を連れていくはずもない。


「でも、じゃあ何でインスもいなくなったの?」


「普通に考えるなら、巻き込まれたんじゃね?」


 子供ばかりが行方不明になっている事件の最中、その子供たちと同年代のアインがいなくなったのは、同じく事件の被害者になったからだろう。


 では、大人のインスはなぜか?と言えば、事件が魔法で引き起こされていると考えられる以上、その魔法に巻き込まれたとするのが一番しっくりくる。


「もしくはついて行ったかだな。インスもこの事件に関しては知ってたはずだし、目の前で攫われそうになってたなら、ついでに解決の糸口でもつかみに行ったんじゃね?」


 糸口どころか、解決して帰ってくるかもしれない。


 むしろ、2人の知るインスはそういう男だ。


 下手に何とかできる実力があるので、事後報告でついでに色々やることが多い。


 その結果、医務殿に運び込まれるハメになることも多いので、医呪神官のインスに対する対応が雑になるのも仕方のないこと。


 ちなみに、インスがついででやらかすと、当然その時、同行した護衛官も巻き込まれるので、護衛官側の実力も高いものが望まれる。


「その可能性も、高そうね」


「なら、インスが戻ってきたら、話でも聞いてみるか」


 悪びれもせずに子供たちを連れて帰って来て、ついでに犯人も捕まえて居そうで……そんな姿が簡単に想像できてしまった。


 正直、インスが首を突っ込んだのなら、この事件はもう解決したと言っていいだろう。


 そんな気持ちがあるからこそ、2人とも深刻な顔はしていないし、むしろ気楽に話していられる。


 そこから、2人はたわいもない話を始める。


 主にリオンが城内で集めてきた噂話などの情報共有。


 そして、一昨日から一歩も外に出して貰えないジャンヌの愚痴。


 特に、ファンに対する不満が溜まっているので、最後は2人して悪口の言い合いになった。


「あ、お茶のお代わり頼もうか?お菓子も追加してもらう?」


 ややあって、ティーポットが空になっていることに気付く。


「おう。でも、菓子より軽く飯でも頼めないか?甘ったるくて……」


 カップに残ったお茶を飲み干して頷いたリオンに応え、ジャンヌは人を呼び、一旦テーブルの上を片付けさせる。


 女官兵がワゴンを押して出ていくと、一瞬部屋に静寂が落ちた。


 その瞬間。


「わっ!?」


「なんだっ!?」


 突然何かが、片づけられたばかりのローテーブルの上に落ちてきた。


「「って!インス!?」」


 2人の声が聞こえたのか、微かに呻き声を漏らして、うっすらと目を開いたのは、間違いなく行方の分からなくなっていたインス。


「おまっ!一体どこから!?」


「ていうか!何があったのよ!?どうなってるの!!」


 いきなり降って来たのにも驚いたが、インスの状態にも驚く。


 寝衣の上に羽織っただけのローブはあちこちが破れていて、全身血まみれ。


 返り血も混ざっているのかもしれないが、衣服の裂け目、袖口や襟元から覗く腕や首に残る傷の様子から、本人もかなりの重傷だと分かった。


「姫様!?如何なされましたか!?」


 騒ぐ声に、失礼しますと、見張りを兼ねた護衛の兵が扉を開き……


「は?いったいこれはっ!?」


 ローテーブルの上に横たわる血まみれの物体に目を見開いた。


 部屋の中を見た女官兵の悲鳴が響く。


「すぐに医者!」


「……は?はっ!」


 怒鳴るように命じられ、一瞬戸惑った兵は、すぐさま踵を返す。


「インス!聞こえてる!?何があったの!!」


「……ジャンヌ様?ここは……?」


 思わず手を掴んで声をかけると、少し視線を彷徨わせたインスは、戸惑ったように呟いた。


 唇が微かに「なぜ」と刻む。


「お前、あの見習いのガキと一緒に行方が分からなくなってたんだろ?何でいきなりジャンヌの部屋に降ってくるんだよ?ていうか、どこから降って来たんだよ?」


 テーブルを挟んでジャンヌの向かいにいたリオンが、インスの耳元で囁くように問いかける。


「アイン君は……いえ、それよりも……」


 ゆっくりと声を絞り出したインスは、だが、途中で言葉を止めた。


 起き上がろうと体に力を入れるが、体力も限界を超えているのか、僅かに身じろぎするだけ。


「ちょ!動いちゃだめよ!怪我を!!」


「酷いのは粗方治っています……それより……」


「インス=ラント!何があった!!」


 焦って止めようとするジャンヌを宥めた所にファンが駆け付ける。


 クロードと、一歩後ろにはウスニーもいた。


「っ!?だめですっ!!」


 唐突にインスが叫ぶ。


 部屋に足を踏み入れたファンとクロードが驚いて足を止めた。


 くぐもった悲鳴がインスの口から洩れて、痙攣するように体が跳ねる。


「なっ!?」


 その瞬間に、部屋に広がる赤い光。


 描き出される魔法陣。


 見覚えのあるそれに、ウスニーが声を上げた。


 苦痛を堪えるような呻き声。


 インスは胸を押さえて、背を撓らせる。


「なっ!?……くっ!」


「っ!?」


 とっさに駆け寄ろうとしたファンは、だが足が縫い付けられたように動かないことに気付いて焦る。


 同じくクロードも、ジャンヌとリオンも動けなくなった。


「何っ!?」


「どうなってるんだ!?」


 驚くジャンヌたちを包み込んで、眩い光が破裂する。


 視界を遮られた一同が目を開くと、ぐったりとして、力の抜けたインスを残し、室内にいたジャンヌたちが居なくなっていた。


「……嘘だろ……」


 唖然と、ウスニーが漏らした呟きの後、辺りに悲鳴と怒号が響き渡った。

ご覧いただきありがとうございます!


いよいよ第5章に突入です!


第5章第1話は第2章でチラっとリオンが言っていた、従兵としてファンの執務室に入り込み、情報を収集していた、その実際の様子からスタート!


いや、皇宮の皆さん。リオンの言ではないですが、大丈夫なんですかね(;^ω^)?


そんな中、魔族アーグの手から強制送還されたインスは、突如としてジャンヌの部屋のローテーブルの上に降ってくるという衝撃的な形で帰還。


知らせを受けて駆け付けたファンとクロード、そしてジャンヌとリオンの4人が赤い魔法陣と共にその場から消滅。


重傷を負ったインスだけが、部屋に残されてしまうという最悪の展開です。


果たして部屋から消えた4人の行き先は?


次話もどうぞお楽しみに!


【特別ミニコーナーのお知らせ】


本日の活動報告にて、第5章の理解が深まる特別ミニコーナー【呪師に関して】を掲載しております!


過去の活動報告には、キャラクター紹介の第1弾、第2弾もございますので、よろしければぜひあわせてご覧ください!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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