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第1話・我慢の限界、ありえない異変~そして彼らは遭遇す~

第2章 皇都の闇に潜む陰



    第1話・我慢の限界、ありえない異変~そして彼らは遭遇す~




 リオンとアインの2人は、正式にジャンヌ付きの護衛騎士団の一員とされた。


 とはいえ、リオンはクロードに剣の扱い方を習い、稽古をつけて貰うだけ。


 アインに至っては呪師(じゅし)見習いとしての修行が優先されるため、一度挨拶に行っただけ。


 クロードは、その見かけや口数の少なさで誤解されることも多いが、ファンが信頼し、幹部として引き立てているほど優秀な人材だ。


 実際、神殿護衛官という、神官呪師の護衛官を務めているほど魔法や呪師に関する知識にも精通している。


 武器の扱いもお手の物で、神剣の扱い方にもすぐに慣れ、リオンには実戦形式で剣の扱い方を稽古している。


 そして、ここ数日、ジャンヌは城から出ることができないでいた。


 先日、交代時間の隙を突いたせいで、引継ぎがファンの執務室から、ジャンヌの部屋に代わってしまったせいだ。


 結果、毎日のように「魔族を探し出して倒す!」と息巻くジャンヌと「そのような危険は冒させられません。第一、姫様は魔物退治どころか、実戦経験の1つもないではありませんか。魔族を探し出すだの、ましてや倒すだなどと、そのような短慮な言動はお控え下さい」と宥めるファンとの言い争いが続いていた。


 そんなある日……


 月のない深夜の皇都を、ジャンヌはリオンと2人、並んで歩く。


 騎士団での訓練後、そのまま合流したリオンは黒い制服姿。


 それを、堅苦しいと言って、前を半ばまで開いて着崩している。


 対するジャンヌも黒いマントとフード姿で、2人とも闇に紛れるような格好。


 ジャンヌが我慢の限界を迎えたのは、神剣の封印を解いて3日ほど。


 リオンと相談し、深夜、皆が寝静まってからの脱走を実行したのは、それから1週間後の今日。


 ファンに怪しまれないように、いつもの言い争いを今日も繰り広げていたし、リオンはリオンでクロードにばれないよう、いつも通りに過ごしていた。


 そのおかげか、全く誰にも気づかれることなく抜け出せたのは幸いだった。


 というのはジャンヌの言。


 もちろん、護衛する立場にあるファンたちからすれば、とんでもない不幸だ。


「しっかし……」


 どれくらい経ったか、明確な目的地もなく歩き回るだけに少し疲れてきたリオンが口を開く。


「魔族なんて、街中でそう簡単に見つかるものなのかよ?」


 当然と言えば、至極当然の疑問。


 ジャンヌは無言のままギロリと睨んだ。


「……分かったよ。怒るなって」


 何もせずにはいられない。


 そんな思いが高じての行動だ。


 意味があろうとなかろうと、ジッとしてなどいられない。


 2人はそのまま、またしばらく歩き続ける。


 エスパルダ聖皇国の首都である皇都・アンシェは、皇城を中心に東西南北を大通りが貫き、各方面に扇状の街並みが広がっている。


 夕方から目覚める夜の店や花街のある北方はともかくとして、住宅街のある東方や商店や宿屋が軒を連ねる南方は静かなもの。


 特に職人街がある西方は人気も明かりもなく、時折、どこかから野犬の遠吠えが聞こえたり、野良猫が路地に駆け込む影が見えるだけ。


 人目を避けた結果、その西方を徘徊する2人の靴音が規則的に石畳を叩く中、リオンがふと思い出して口を開く。


「そう言えば、ここ最近神隠しが起きてるらしいぜ」


「は? 神隠し?」


 いきなり何だ? と、ジャンヌは足を止め、リオンを見る。


「何でも、呪師の家柄の幼い子供ばっかり……10人くらいだったか? 行方不明らしい」


「は? 呪師の家の子供?」


 併せて立ち止まったリオンは「そう。」と頷いて説明する。


 彼は、何もここ数日、騎士団で訓練を受けるだけの日々を過ごしていた訳ではない。


 そもそも、リオンはジャンヌが弟を助けるために魔族を倒したいと考え、力を欲していることを知っていた。


 その手助けになるものがないかと、色々探っている中で、神官長たちが神殿東方の小堂に宝があると授業(はな)しているのを盗み聞きして神剣のありかを知ったし、今も、皇宮内で極秘で報告されていた行方不明事件の情報を得ていた。


 呪師とは、魔法が使える者。


 だが、魔法が使える者の暴走が赤毛の魔女を生み出し、大戦を引き起こした、神話という名の歴史から、使い手が厳しく管理されている以上、当然、その技術に関する知識も秘匿されている。


 では、使い手の管理をどうやって実現しているかというと、何のことはない。


 その才ある者とその血族を『呪師の家柄』として監視下に置いている。


 何故なら、呪師の才覚は殆どが親から子へと継がれるから。


 極まれに、市井に突然変異のように産まれる才ある者に関しては、その才覚が確認された時点で隔離される。


 当然、その血族に、他にも才覚がある者がいないかの調査は行われる。


 だが、この場合は大抵、その1人が起点となり、子や孫に才覚は受け継がれていくが、親や兄弟姉妹等には全く才能がないことが多い。


 そして、今回の事件に関するジャンヌの疑問は『監視されている筈の呪師の家柄の子供が行方不明になることなどあり得るのか?』と言う事。


 くどいようだが、呪師とは魔法が使える者だ。


 つまりは、普通の人間と違って魔法が使える。


 正確には、魔法の使い方を知っている。


 だから、監視員は魔法の使い手を無力化できる者になる。


 簡単に言えば、『魔法を使われる前に、倒せるだけの実力者。』と言う事。


 呪師の家柄に生まれても、魔法が使えるかどうかは別だし、魔法の使い方は皇宮呪師なら皇宮内の学校で、神官呪師なら神殿内の学校で学ぶ。


 それぞれが集団生活を義務づけられていて、同年代の者が集団で授業を受ける。


 時折、あまりにも才能に差がある場合は個別授業となるが、それでも集団生活は必須だし、学校以外での知識の授与は極刑だ。


 各学校の最低入学年齢が13歳なのは、まず第一に、安全に魔法を使えるだけの心身が出来上がるのがそのくらいの年齢であるから。


 そして、集団生活が可能となるだけの基礎教育を完了させるまでの猶予期間。


 入学試験は適性や才能を見るために行われ、結果は合格者のクラス分けに反映される。


 かつて、あまりにも厳しく魔法の使用を規制したが故にか呪師の数が激減し、魔法によってしか対処できない魔物などが増えすぎて多大な被害が出た。


 呪師の暴走を防ぐと共に、呪師の育成を進めた結果、入学者の数はここ数百年ほどで増えてきている。


 それはつまり、呪師の家柄と呼ばれる者たちも増えていることを意味してはいるのだが、それでも国中に配することができるほどの人数はなく、才ある子供は特に貴重な存在として厳重に保護されている。


 皇女であるが故にそれを知っているジャンヌには、どう考えても呪師の家柄の子供が行方不明になるなど考えられない。


「何でも、一瞬目を離した隙に忽然と居なくなっていたらしいぞ。もちろん、魔法が使われたんだろうって話にはなってるけど、仕組とかは分かってないし、1つの家だけじゃなくて、複数の家で同じことが起こっているらしい……」


 そこまでは知らないリオンは、だが聞いた話を説明していく。


「当然、最初の行方不明者が出た時点で、報告も捜査も注意喚起もされたらしい。もっとも、その後も行方不明者は出続けていて、今日で10人…超えたんだったか?そんなことを言ってたな」


「……どこで聞いたのよ……?」


「もちろん皇宮で。ファンの野郎が報告受けてたぜ」


 胡乱げな眼差しとなったジャンヌにあっさり答える。


 ファンが報告を受けていたのは事実だが、リオンが知っているのは、もちろん盗み聞きだ。


 神剣の契約者となったことを受けて護衛騎士団の一員とされたとは言え、リオンは平民の孤児で魔女の申し子と忌み嫌われる赤髪の青年。


 当然、皇宮に出入りすることを快く思う者はいない。


 そんなリオンがなぜ皇宮内で機密を盗み聞きできたのかといえば、何のことはない。


 人々はリオンの『赤髪』しか見ていないから。


 逆を言えば、髪色さえ隠してしまえば、リオンが目立つことはほぼない。


 騎士の正式叙任の最低年齢は15歳。


 とはいえ、それは幼いころから訓練されてきた、貴族出身の少年たちの叙任年齢。


 平民からも採用される兵士は、15歳から見習いとして入る事ができる。


 15歳で採用された見習い兵士が、礼儀作法や武術を訓練され、騎士の従者として仕えるようになるのは17歳ごろから。


 そしてリオンの年齢はちょうど17歳。


 それを利用して、リオンは平凡な一従兵のように装って皇宮内を自由に動き回れていた。


 更に、髪色とは違い、眼の色に関して忌避感を持つ者は少ないので、リオンの萌黄色(もえぎいろ)に近い、澄んだ黄緑色の瞳が注目されることもない。


 ちなみに、さすがにクロードにはばれる。


 だが、ファンには全く気付かれたことがない。


「あいつ。オレの顔覚えてねぇ。というか、人の顔ほとんど見てないんじゃないか?」


 その辺りを説明されて、付け加えられた感想にジャンヌは顔を引きつらせて苦笑い。


「まぁ、皇宮に出入りする人間、全部の顔と名前なんて、覚えられないわね……」


 とは言え、さすがにリオンの顔は覚えていなければまずいだろうに、髪色を隠されただけで分からなくなるというなら、それはファンの落ち度だ。


「っ!? ジャンヌっ!!」


「へ?」


 突然、リオンがジャンヌの腕を引いた。


 驚いたジャンヌは体勢を崩し、引き寄せられたリオンの腕に抱かれる。


 場所を入れ替わるようにして、直前までジャンヌがいた方に背を向けたリオンが短い悲鳴を飲み込む。


「……リオン……?」


 一瞬身体を強張らせたリオンの後ろに、黒っぽい何かがいた。


「……っのぉ!!」


 振り向きざま、リオンが剣を抜き、横に薙ぐ。


 ざっと、音を立てて、切り取られた黒っぽい何かが地に落ちた。


「……ウソ……」


 甲高い音を出して鳴くソレは、2人よりも頭2つ分ほども大きな黒いカマキリだった。

第1章の完結を経て、いよいよ第2章に突入です!


長かった城内での言い争いに決着をつけ、ジャンヌとリオンは皇都へと飛び出しました。


しかし、魔族探しに乗り出した矢先、皇都で「呪師の家柄の子供の神隠し」が頻発しているという、新たな不穏な情報が浮上しました。魔族の仕業なのか、それとも封印と関係があるのか……。


そして、その疑問を深める間もなく、夜の皇都でジャンヌたちを襲った黒い影。


ついに物語が大きく動き出します!


リオンの意外な情報収集能力(ファンを欺く能力)も垣間見えましたが、ここから彼らはどのような試練に立ち向かうことになるのでしょうか?


引き続き、お付き合いいただけますと幸いです!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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