第8話・幻視の邂逅~けれども彼らはいつも通り~
第1章 戦う女神の選んだ巫女姫
第8話・幻視の邂逅~けれども彼らはいつも通り~
「――誰?」
まばゆい光の中で、ジャンヌは思わず間の抜けた問いを放つ。
周囲は朱金に染まり、近くにいた筈のリオンの姿も、魔法陣の描かれた台座も堂の中の様子も何も分からない。
揺れも、感じなかった。
大きな、揚羽蝶と同じ形をした、けれども白い羽根を持った女天使が小さく笑う。
その左手を、ジャンヌはしっかりと握り締めていた。
『私の名はドーン。光の神剣に宿る意思。女神の巫女よ。何故、神剣の封印を解いたのですか?』
「何故って、それは……」
問い返されて、表情を引き締める。
「弟を……カルロスを救ける為よ」
『その為に、戦う事はできますか?』
「当然でしょう!あいつを……アーグを倒さなければカルロスは救からない……だったら!……全力で叩きのめすわ」
語気が荒くなる。
けれど、ドーンと名乗った女天使は表情を変えなかった。
変わらず、穏やかに、だが眼差しだけは深く、厳しく見つめる。
『魔族と戦う力を、欲するのですね?』
確認に、深く頷く。
初めてドーンが表情を変えた。
穏やかな微笑が深まる。
『分かりました。契約を結びましょう。ディエルの巫女よ。私の力が必要な時は、私の名を呼びなさい。何の為に、何故、力を欲するのか宣言して……』
まばゆい光が強くなる。
目を開けていられなくて、ジャンヌは思わず顔を背け、目を瞑る。
やがて光が消え去って、壊れた小堂に戻って来た。
揺れの収まった小堂を包む結界の、白い光の膜が弾けて消えていく。
ジャンヌ以外に3人。
堂の中に居たリオンと、扉のすぐ外に居たファンとクロードも剣を手にしていた。
「何だった訳?一体……」
目をしばたたいて呟くジャンヌに、「さあ」と答えて、リオンが立ち上がる。
「よく分からないけど、腹立つ女だったな」
告げながら、ジャンヌに手を貸して立ち上がらせる。
それとは逆の手に、ジャンヌの物とは色合いの違う赤い石が鍔に嵌め込まれた剣を持っている。
形も長さもごく一般的な、いわゆる「ソード」と呼ばれるもののようだが、柄の部分だけは繊細な細工が施されていた。
「えっ?そう?凄く綺麗で優しそうな天使だったわよ?」
「どこが優しそうだよ。まあ、確かに美人だったけど……人の事小バカにして、3回も小突きやがって……」
「2人とも」
ファンの声が割って入った。
ギクリとして、2人は恐る恐る堂の入り口を見る。
鋭い目に険を宿して睨むファンは両手で持ち上げるのがやっと、と言う大きさと重さを感じさせながら、柄は片手で楽に持てるほど細いという、なんともアンバランスな大剣を手にしている。
「自分達が何をしたのか、分かっているのか?」
ジャンヌに対して……と言うより、リオンに向かって言う。
「何って……」
ちょっと首を竦めたジャンヌは改めて堂内の惨状を見た。
ステンドグラスは尽く砕け、魔法陣の描かれた台座は真っ二つに割れている。
白大理石の壁にも所々皹が入り、そこから崩れて床が白く、粉っぽくなっていた。
「神剣探しに来たに決まってるだろ」
対してリオンは、それがどうしたと言わんばかりに胸を張る。
真っ向からファンを睨みつけた。
クロードが無言で2人を見比べる。
その手には長剣。
全体的にバランスの取れた大きさと厚みを持ち、一般的な剣よりも1.5倍ほど長い剣の鍔には黄色い宝石が嵌っていた。
「決まっているではない!」
「お話の途中のようですが、先に堂を封鎖します」
小言を始めようとしたファンをレイニアが止める。
堂内にいた2人を促し、天使の彫刻が施された扉を閉ざす。
封印術を得意とする老齢の女性神官長が魔法をかけて、そこで漸くレイニアたちの間にほっとしたような空気が生まれた。
「ジャネット皇女。ファン卿。トレーニア護衛官。リオン。お話がございます。まずは、此方へ」
それから改めて、4人を促した。
ご覧いただきありがとうございます。
巫女姫ジャンヌは、天使ドーンとの「契約」に成功。魔族を打倒するための力を手に入れました。
しかし、その場にいたリオン、ファン、クロードの4人全員が、それぞれに異なる剣を手にすることに。さらに、ジャンヌとリオンで天使の印象が全く違うのも気になるところです。
【明日、神剣の真相が明らかに!】
剣を手にした4人は、神殿の最高位である神官長たちに連行されます。そこで明かされるのは、彼女たちが手にした剣の驚くべき正体と、もう一振りの神剣に選ばれた見知らぬ子供の運命。物語の根幹に関わる真実が、次話で語られます!
【今後の連載スケジュールについて】
物語は核心へと向けて加速を続けています。続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
【読者の皆様へのお願い】
「4人それぞれの剣の正体が気になる!」「続きが読みたい!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。
【本作は第1部まで執筆完了済みです。安心して連載にお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




