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第8話 余波と違和感

お読みいただきありがとうございます!

今回は戦闘の後処理と、野盗の残した痕跡に注目しました。

敵でありながら「人間らしさ」を見せ始めています。

---


戦いの後、地下の拠点には血と火薬の匂いが充満していた。

通路の死体を片づける兵士たちの顔は、勝利の高揚と疲労で真っ赤に染まっている。


「負傷者を運べ! 止血を急げ!」

「回収できる物資は全部まとめろ!」


怒号が飛び交い、誰もが必死に動いていた。

その光景に、俺はただ立ち尽くすしかなかった。


(……やっぱりゲームと違う。血の臭いが、現実感を突きつけてくる)


震える俺の横に、シエラがやって来た。

「……さっきの提案、助かったわ」

素直にそう言いながら、頬を少し赤く染める。

「でも、調子に乗らないで。信頼されたわけじゃないから」

口調はツンツンしているのに、耳まで真っ赤だ。

――どう見てもツンデレです、本当にありがとうございました。


やがてカレンが歩み寄る。

「……ふん。確かに効果はあったな」

鋭い目で俺を見据える。

「だが誤解するな。お前は依然として“異物”だ。利用できるうちは使う、それだけだ」

周囲の兵士たちが頷く中で、俺は黙ってうなずくしかなかった。

評価と釘刺し――両方を受けた瞬間だった。


兵士の一人が袋を引きずってくる。

「将軍! 野盗の残した物資です!」

袋の中には、埃をかぶった缶詰、半分しか残っていない酒瓶、擦り切れた布切れや工具。

とても潤沢とは言えず、雑多で乏しい。


「……あいつら、本当に生活に困ってたんだな」

誰かがつぶやくと、空気が少し重くなった。


俺の頭に、戦闘中に聞いた声が蘇る。

――「倉庫の中身を分けてくれるだけでいいのに!」

――「腹をすかせた女は、理屈よりも欲望に動くものよ」


ただの敵対者にしては、妙に人間臭い声だった。

(……あの声の主。きっとまた出てくる)

根拠もないのに、そんな確信が胸に残った。


拠点は勝利の余韻でざわめいていた。

けれど俺の中には、不思議な違和感が消えずに残っていた。



---

最後までお付き合いありがとうございます!

アキトは赤鎧団の中で一歩踏み込んだ評価を得ましたが、同時に「野盗もまた生きるために必死」という現実が描かれました。

今後の伏線としてぜひ頭の片隅に置いていただけると嬉しいです。

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