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第23話 ヴァルガンズの影

地下施設の会議用スペース。

壁に貼られた古びた地図の上に石ころや駒が並べられ、即席の作戦盤になっている。


「……斥候が見たのは間違いない。ヴァルガンズだ」

カレンの声は低く鋭い。


報告によれば、数十名規模の武装集団が赤鎧団の補給路を探るように動いているという。

彼女の指先が石をひとつ地図上に置いた瞬間、兵士たちの間に緊張が走った。


「よりによって、補給拠点の近くを嗅ぎ回るなんて……」

シエラが眉を寄せる。

その横顔には少女らしい不安が覗いていて、アキトは思わず言葉をかけそうになるが、飲み込んだ。


代わりにミラが、檻のように囲まれた椅子から鼻で笑った。

「補給を狙うのは常套手段でしょ。私たち――ヴァルガンズには“自由に奪う権利”があるのよ」


「黙れ」カレンが鋭く睨む。

しかしミラは怯まず、わざと挑発的な笑みを浮かべる。


「野党なんて名前で呼ばないで。私たちには誇りがあるの。――“ヴァルガンズ”。力と自由で生き残ってきた、本物の戦士集団よ」


アキトは内心、背筋が冷えた。

(自由ね……ただの無秩序に聞こえるけど)



その夜。

見張り台に立つ兵士が緊急の鐘を鳴らした。

「動きあり! 北の廃工場跡に集結している! 火を焚いて武器を掲げてる!」


カレンは即座に立ち上がり、命じる。

「部隊を整えろ。正面からぶつかれば数で押し潰される。だが奴らは必ず突っ込んでくる。迎撃の準備を」


「カレン様、本当に戦うんですか?」

シエラが小声で問う。

「兵の数は、こちらの倍はいるんですよ……」


その声に、ミラがにやりと口を挟んだ。

「臆病ね、赤鎧団は。私たちヴァルガンズなら迷わず突撃して奪い尽くすわ。男だって――」


「言うな」

カレンの低い声がミラの言葉を遮る。

だが、その一瞬で兵士たちの間にざわめきが広がる。

アキトの存在が“狙われている”ことを、誰もが理解しているからだ。



アキトは焚き火の光の中で、ふと考え込んだ。

(……これ、ゲームなら相手の行動パターンを読むターンだよな。真正面から殴り合えば負ける。でも、こっちには地形と……)


視線を上げると、カレンがこちらをじっと見ていた。

「アキト。お前はどう見る?」


唐突な問いに、胸が跳ねる。

「えっ、俺……?」


「お前の意見を聞きたい」

真剣な眼差し。

シエラも心配そうにアキトを見ている。


ミラは、挑発するように笑った。

「さぁ、冴えないオタクさん。あなたならどうする? ゲームの知識でこの状況を切り抜けてみせなさいよ」


――赤鎧団とヴァルガンズ。

数で劣る軍閥と、自由を旗印に暴れる野党。

その狭間で、アキトの言葉が次の展開を左右しようとしていた。



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