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第18話 三つ巴の影

赤鎧団の本部に、不穏な空気が広がっていた。

保存局からの要求、野党に漏れた情報――どれもが、組織の根幹を揺るがす問題だ。


カレンは会議室の中央に立ち、幹部たちを見渡す。

「……保存局は、我々の戦力を掌握する気だ。そして野党は“男”の存在を知った。つまり、アキトを狙って動き出すのは時間の問題だ」


「だったら、保存局に一度従った方が……」

幹部の一人が弱気な声を漏らす。

だがカレンは即座に切り捨てた。

「奴らに屈すれば、赤鎧団はただの傀儡だ。領土拡張も夢物語になる」


――そう、赤鎧団の目的は生存だけではない。

彼女たちは“生き延びるために、他を圧倒して支配する”ことを選んだ軍閥だ。


俺はその光景を、呆然としながら見ていた。

(……これ、完全に戦略シミュレーションの分岐イベントだな。保存局に従属ルートか、反抗ルートか・・・。)



その夜。

兵舎の一角、仮設の食堂で俺とシエラが向かい合っていた。

彼女は湯気の立つスープをかき混ぜながら、ふっとため息をつく。


「ねぇ、アキト。……もし保存局が本気で攻めてきたら、赤鎧団はどうなると思う?」


「ゲーム的に言えば……勝ち目ゼロ。相手は兵力も技術も桁違い。正面衝突したら、こっちが溶ける」

俺は匙を置き、頭をかいた。

「だから、直接戦うんじゃなくて“選択肢を増やす”のが大事なんだよ」


「選択肢……?」

シエラが首を傾げる。


「同盟とか、奇襲とか、噂操作とか。ゲームじゃ“外交コマンド”と“情報戦”で戦局をひっくり返すのが定石だ」

口に出しながら、俺は背筋が寒くなる。

(いやこれ、もうゲームじゃないんだけどな……)


シエラは小さく笑った。

「やっぱり、あなたは面白いわ。戦場を“盤上”に置き換えて考える人なんて、今までいなかったもの」

頬に朱を差しながら俺を見つめる。その目の輝きに、思わずドキリとした。



そこにカレンが現れた。

「おい、何をくっちゃべってる」

腕を組んだまま、険しい表情でこちらを睨む。


「い、いや……別に、大した話じゃ」

俺が慌てて手を振ると、カレンはツカツカと近寄り、俺の皿に残っていた干し肉を無言で奪って食べた。


「はぁ!? それ俺の……」

「栄養管理の一環だ。お前が倒れたら困る」

そう言いながらも、どこかムッとしている様子。

(……これ、絶対シエラと仲良くしてたのに嫉妬してるよな?)


俺はため息をつきつつも、心の奥では妙な温かさを感じていた。

軍閥の将と副官に挟まれて食事するなんて、冴えないオタク時代の俺には想像もできなかった。



だが、温い時間は長く続かなかった。

夜半、監視所から急報が入る。


「野党の大部隊が、東の廃工場跡に集結中! 捕虜を解放する準備か、あるいは――」


カレンの顔が一気に険しくなる。

「……動くつもりか。奴らも“男”を狙ってきたか」


重苦しい空気が場を包む。

保存局、野党、教団――三つの勢力が動き始めている。

その狭間で、俺の存在は確実に「戦争を呼ぶ火種」となりつつあった。


(……クソ、これ絶対“ルート分岐”じゃん。俺が間違えたら全員死ぬやつ……!)


俺は乾いた喉を押さえながら、天井を仰いだ。

――逃げ場なんて、もうどこにもなかった。



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