第14話 白布の行列
地下拠点の奥。
俺は護衛の兵士二人に囲まれ、司令室の一角に座らされていた。
出入口方面までは長い通路が続いていて、直接は見えない。
だが地面を伝う低い振動と、慌ただしく走る兵士たちの靴音で、外がただ事じゃないのは嫌でも分かる。
「報告!」
見張りが駆け込んできた声が司令室に響いた。
「丘の上に白布をまとった集団、十数! 歌のような声をあげながらこちらに接近中!」
カレンは即座に立ち上がり、前線の兵士へ指示を飛ばす。
「全員、武器を構えろ! だが撃つな! 奴らは心を崩しに来る!」
司令室の作戦卓の横に立つシエラが、報告を整理しながら冷静に地図へ石を置く。
「敵影は進行中。直線でこちらを見てます……間違いなく教団ね」
俺は奥からその様子を見ながら、喉を鳴らす。
(……やべぇ。完全にイベント発生してるやつじゃん……! けど俺、奥で待機ってことは……ターゲット確定ってことか!?)
◇
しばらくして、地下にまで届くほどの不気味な旋律が響いてきた。
祈りとも歌ともつかないその声は、壁越しでも頭に直接染み込むように聞こえてくる。
「っ……なんだよこれ……」
思わず頭を抱える。
(完全に洗脳ギミックじゃねぇか! 精神攻撃スキル直撃中……!)
外から報告が続く。
「先頭に女が一人。ローブ姿で……こちらに手を向けています!」
その瞬間、声が地下まで直接響き渡った。
女の声――甘いのに鋭く、心臓をつかまれるような響き。
『……奇跡は甦った。絶えたはずの男が、ここにいる』
俺の背中に冷たい汗が流れる。
(……今、俺のこと言ったよな!? 絶対言ったよな!)
◇
カレンは前に出て叫ぶ。
「全員、陣形を保て! 動揺するな! 戦えば奴らの思う壺だ!」
シエラが険しい顔のまま、ちらりと奥の俺を見やる。
「……アンタ、狙われてんの。守られる立場ってこと、ちゃんと自覚しなさいよ」
「ちょ、ちょっと待て! 俺はただのオタクで――」
外から再び響く声。
『あなたは“器”。神の意志を映す存在……』
脳が揺さぶられ、視界がぐにゃりと歪む。
息が詰まり、膝が笑う。
(……これ、ガチでターゲットにされてんじゃん! やべぇよ!)
◇
やがて祈りの声は遠ざかっていった。
兵士が駆け込み報告する。
「敵影、丘の上へ戻りました! 撤収した模様!」
カレンは深く息を吐き、短く言い放つ。
「退いたんじゃない……今日は試しただけだ。次は必ず本気で来る」
シエラも険しい声で続ける。
「そうよ。アンタ、これからずっと狙われるんだから」
俺は護衛に囲まれたまま肩で息をし、膝の上で拳を握りしめた。
(……くそ。俺、完全にバッドエンドフラグ立ってんじゃん……!)
地下にいてもなお、白布の女の声が耳から離れなかった。
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