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第14話 白布の行列

地下拠点の奥。

俺は護衛の兵士二人に囲まれ、司令室の一角に座らされていた。

出入口方面までは長い通路が続いていて、直接は見えない。

だが地面を伝う低い振動と、慌ただしく走る兵士たちの靴音で、外がただ事じゃないのは嫌でも分かる。


「報告!」

見張りが駆け込んできた声が司令室に響いた。

「丘の上に白布をまとった集団、十数! 歌のような声をあげながらこちらに接近中!」


カレンは即座に立ち上がり、前線の兵士へ指示を飛ばす。

「全員、武器を構えろ! だが撃つな! 奴らは心を崩しに来る!」


司令室の作戦卓の横に立つシエラが、報告を整理しながら冷静に地図へ石を置く。

「敵影は進行中。直線でこちらを見てます……間違いなく教団ね」


俺は奥からその様子を見ながら、喉を鳴らす。

(……やべぇ。完全にイベント発生してるやつじゃん……! けど俺、奥で待機ってことは……ターゲット確定ってことか!?)



しばらくして、地下にまで届くほどの不気味な旋律が響いてきた。

祈りとも歌ともつかないその声は、壁越しでも頭に直接染み込むように聞こえてくる。


「っ……なんだよこれ……」

思わず頭を抱える。

(完全に洗脳ギミックじゃねぇか! 精神攻撃スキル直撃中……!)


外から報告が続く。

「先頭に女が一人。ローブ姿で……こちらに手を向けています!」


その瞬間、声が地下まで直接響き渡った。

女の声――甘いのに鋭く、心臓をつかまれるような響き。


『……奇跡は甦った。絶えたはずの男が、ここにいる』


俺の背中に冷たい汗が流れる。

(……今、俺のこと言ったよな!? 絶対言ったよな!)



カレンは前に出て叫ぶ。

「全員、陣形を保て! 動揺するな! 戦えば奴らの思う壺だ!」


シエラが険しい顔のまま、ちらりと奥の俺を見やる。

「……アンタ、狙われてんの。守られる立場ってこと、ちゃんと自覚しなさいよ」


「ちょ、ちょっと待て! 俺はただのオタクで――」


外から再び響く声。

『あなたは“器”。神の意志を映す存在……』


脳が揺さぶられ、視界がぐにゃりと歪む。

息が詰まり、膝が笑う。


(……これ、ガチでターゲットにされてんじゃん! やべぇよ!)



やがて祈りの声は遠ざかっていった。

兵士が駆け込み報告する。

「敵影、丘の上へ戻りました! 撤収した模様!」


カレンは深く息を吐き、短く言い放つ。

「退いたんじゃない……今日は試しただけだ。次は必ず本気で来る」


シエラも険しい声で続ける。

「そうよ。アンタ、これからずっと狙われるんだから」


俺は護衛に囲まれたまま肩で息をし、膝の上で拳を握りしめた。

(……くそ。俺、完全にバッドエンドフラグ立ってんじゃん……!)


地下にいてもなお、白布の女の声が耳から離れなかった。



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