第12話 赤鎧団の焚き火にて
ここから少し日常と不穏が交錯する回です。
アキトが「人」として見られる一方で、「資源」として狙われる現実もじわじわと迫ってきます
夜。
地下施設の広場では、簡易コンロと焚き火を囲んで兵士たちが食事をとっていた。
干し肉と乾パン、それに缶詰のスープ。質素なメニューだが、火にかけた匂いが漂うと、妙に温かい気持ちになる。
俺――アキトも、その輪に座らされていた。
「ほら、あんたも食え」
カレンが金属皿を差し出してきた。姉御肌らしいぶっきらぼうさだが、気遣いが滲む。
「え、いいの? 俺、捕虜じゃなかったっけ」
「捕虜なら飯なんてやらない。……今は“客人”扱いだ」
ツンと横を向いたカレンの代わりに、シエラが笑みを浮かべる。
「カレン様なりの優しさです。ありがたく受け取ってくださいね、アキト」
「お、おう……」
どうしてこう、女に囲まれて食事するだけで胃が落ち着かないんだ俺は。
いや、状況が状況だし。
兵士たちもチラチラと俺を見ては、ひそひそ囁いている。
「ほんとに……男だよな」「夢じゃないんだよね……」
視線に混じるのは驚きと期待、そして好奇心。まるで珍獣を見ているみたいだ。
「……なぁ、そんなにジロジロ見られると食いにくいんだけど」
俺がぼやくと、シエラがクスクス笑う。
「仕方ありません。皆、男という存在を教科書でしか知らないんですから」
「……なんか、絶滅危惧種のパンダにでもなった気分だな」
場がどっと笑いに包まれた。
不思議だ。つい昨日までただの冴えないオタクだったのに、今は女だらけの兵士に囲まれて笑いを取ってる。
なんなんだよ、この人生イベントの急展開は。
◇
食事の後。
見張りの兵士が慌ただしく駆け込んできた。
「将軍! 外で妙な動きがありました。焚き火の灯りに反応したのか、遠くの丘に人影が……!」
カレンの表情が険しくなる。
「野党か……いや、違う。あの動きは――」
シエラが低く声を落とした。
「……教団、ですね」
場が一気に緊張に包まれる。
俺はぞわっと背筋に悪寒が走った。
「おいおい、また出たよ。まさかさっきの焚き火に釣られて“お祈りタイム”のお出ましとか……?」
「軽口言ってる場合じゃないわ」
シエラが睨むが、目の奥には不安があった。
「教団は、あなたを“神の証”と見なすでしょう。狙われるのは……間違いなく、あなたです」
背筋が凍る。
(……やべぇ。これが洗脳ギミックか……。てか、絶対俺の方見てたよな!? 俺が“ターゲット”にされてんの!?)
カレンが鋭く命じる。
「各班、即座に配置につけ! アキトは護衛をつけて地下へ――」
だが兵士たちの顔に迷いが浮かんでいた。
「本当に守り切れるのか……」「もし教団が本気なら……」
重苦しい沈黙が広がる。
俺は自分がただの“捕獲対象”だという現実を、改めて突きつけられていた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
アキトの立場が焚き火の団らんから一転、不穏な方向に傾き始めました。
次回はいよいよ教団が本格的に動き出します。
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