第10話 外の影
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回は少し外の世界に触れるお話。
アキトにとって、ここからが本当の異世界生活の始まりかもしれません。
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数日後。
野盗襲撃の後始末も終わり、拠点はようやく落ち着きを取り戻していた。
だが兵士たちの動きは忙しさを増している。
「北側の監視所に追加の弾薬を運べ!」
「負傷者の代わりに、新人を配置しろ!」
命令が飛び交う中、俺はなぜか雑用を手伝わされていた。
「……おいシエラ、副官に雑用を押しつけられる俺ってどうなのよ」
「異物にしては上出来じゃない。感謝しなさい」
「言い方!」
木箱を運びながら、俺はぼやく。
中身は銃弾と非常食――どれも命に直結する物資だ。
拠点の外に出るのは初めてだった。
地下の出口を抜けると、かつての駅前らしき場所に出る。
ひび割れた舗道、雑草に覆われた自動販売機、骨組みだけ残ったビル。
俺の知っている街の面影が、廃墟として目の前に広がっていた。
(……本当に、あの時から何十年も経ってるんだ)
思わず胸がざわつく。
「立ち止まるな!」
シエラに肩を小突かれ、俺は慌てて前に進んだ。
監視所に物資を届けた帰り道。
哨戒に出ていた兵士が慌ただしく駆け込んできた。
「報告! 外で“教団”の旗を見たとのことです!」
その瞬間、空気が一気に張り詰めた。
「また奴らか……」ライフル兵が苦々しく吐き捨てる。
「本拠はどこにあるのかすら不明なのに……」銃剣の少女も唇をかむ。
俺は思わず尋ねた。
「その、教団って……そんなにヤバいのか?」
シエラは一瞬だけ言葉を詰まらせたが、やがて冷たい声で答える。
「……野盗が“飢えた群れ”なら、教団は“狂信の群れ”。話が通じない分、もっと厄介よ」
胸の奥に、ぞくりとした寒気が走った。
その夜。
拠点に戻った俺は焚き火を前にパンをかじりながら、ふと天井を見上げる。
地上に残された廃墟と、そこを徘徊する野盗や教団。
そして俺自身――異物としてここにいる男。
(……これから、どうなるんだ)
焚き火の火花がぱちぱちと弾ける音だけが、答えのない問いをかき消していた。
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最後まで読んでいただき感謝です!
アキトが少しずつ「外の現実」を知り、教団との因縁の始まりが描かれました。
この先、教団との衝突が避けられなくなります。
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