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第七話、彼、
あの鮮明すぎる、記憶の蓄積の後、私はしばらく、彼のことを考えずにはいられなかった。彼は私と、どんな関係だったのか、私の一体何を知っているのか、私は彼に何を、いや何を感じているのか、とにかく会いたかった。でも会えずにもう何日も経つ。それでも彼は一向に私の前に現れてくれなかった。
私はその間、少しは記憶を取り返せないものかと、特に彼との記憶なんかを探ってみてはみたのだけど、考えれば考えるほど、そのモヤの深さに、白さにイライラした。深い深い霧、厳格で荘厳な山脈を伝う白い霧の様なものが私の脳裏にも漂ってくる。時々晴れたかと思うとその奥の方からまた深い霧がどっしりとゆっくりと前進して来た。




