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第五十三話『ソウミタイ』

今まで書き溜めた箇所の投稿は終わったので、投稿頻度が下がると思いますが毎日書いているので、少しずつかまとめて投稿しようと思っています。


 私はキムチを頬張った。


 その瞬間、みたことも無い情景が脳裏に浮かんだ。それは歩夢だった。

でも、わたしの知ってる歩夢じゃない。こんなに髪は長くなかったはずだ。こんな、何でそんなに怒っているのか、悲しいのか、いや’’私’’が怒っているのか?


 私なのか、わたしだった。


「ドウしました?」開いた口が塞がらずに呆然と凍りついているわたしが居ることに、韓国の彼の一言で気がついた。

「いや、なんか、みてはいけないものを、みてしまったかもしれない、です」

「ソレハなんですか」少ない時間の間に彼の日本語はどんどん上達している気がした。

「えっ?歩夢」

「ア・ユ・ム?」頭を傾け顎を触る彼を私はただ呆然と見ていた。ただ開いた口はまだ閉まらない。

「アァ!幼馴染の!」

「ソウミタイ」その日はそこでお開きにしてもらった。彼が予約してくれたホテルは彼のポイントで支払い済みだという、流石に申し訳ないと思ったが後日、日本語を教えてる約束をし、そのお礼ということで善意にあやかることにした。私はソレどころではなかった。急にキタ、歩夢との、記憶との再会の兆しに焦る気持ちを落ち着けて追いかけないようにするので精一杯だったのだ。

 ホテルに帰って日記を読み返そう、そう、きっと何かあるはずに違いない。

「ケンチャナヨ」そう言った彼の去り際には今思い出したのとは違う歩夢の優しさの匂いがした。

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