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第四十九話、なんでもは良くない。

 遅刻したであろう高校生がガラガラの電車の中で一人立っていた。

 「すいません」思わず私は声をかけてしまった。

 驚いた様子の男子高校生に私は続けた。まだ寝起きなのか目が開き切っていなく寝癖が跳ねている。

 「あのですね、私、旅のものなんですけど。実は今行き先に困ってまして、おすすめの場所とかありますか?」

 男子高校生は困った様子で答えた「あっえっ、じゃあ四国とかいんじゃないですか?」

 「ええ、どうして?」

 「どうしてって、」めんどくさそうに男子高校生が続けた。

 「ここから行きやすそうだし、なんか良いじゃないですか、うどんとか」

 私は思った。なぜ誰もいない電車の中で男子高校生をナンパしているのかと。運命をこんなふうにしか選べない自分が恥ずかしくなった。

 「ありがとうございました。参考にしてみます」私は一礼した。

 チラチラと男子高校生に見られながら元の席に戻った私は移り変わる景色に見向きもせず少し考えた。そうだな、そうか、私は放浪を始めてしまっている。放浪は自由なようで、自由ではないな、私は旅をしていたのに、今は何かから逃げているような気しかしない。

 そうだな、私は記憶喪失なんだ。歩夢を見つける以前に、日記を追いかける以前に。私は本当のところやっぱり自分の記憶を、自分が生きてきた証、理由を取り戻したいんじゃないだろうか。分からないけど。私はこの記憶喪失になる以前の自分も取り戻したいんじゃないか。ああ、もう一度あの日記を開いてみることにした。


 ’’絶対に読むな’’

 そう書いてある表紙はもはや逆効果だった。

 「絶対に読んでやる」そうえみを浮かべて久しぶりに読み返す。

 久しぶりなのでどこまで読んだかも覚えていない。これは記憶喪失は関係ない。

 そういえば私は自分が記憶喪失であることも忘れているようだった、

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