第四十八話、なんでもいい❷
次の日、私は家を出ることにした、そうマスターと一緒の家を。マスターが仕事に行くまで寝たふりをして、久々にザックを引っ張り出してきた。行き先は分からない。でも私は旅をしているはずだった。この居心地の良さに逃げているだけな気がした。きっとマスターもそうだ、私たちはお互いを好きではない。そのことが日に日に深々と私達を責めるの。私が一方的にそう感じているだけかもしれない。しかし。彼もまたきっと出ていった私に安堵するだろう。束の間の寂しさはあれど、きっと何事もなく日々を過ごすだろう。いつもはコーヒーをブラックで飲むがその日は紅茶をミルクで飲むことにした。でもやはりあの苦味が好きだって気が付くだけなんだ。
ありがとう、マスター。
私はちょうど目に着いた路線バスに乗って終点のターミナル駅まで向かった。行き先はどこでもよかった、ここではないどこか、早くこの寂しくこびりついた恋愛感情とも呼べない。甘ったるい雰囲気から抜け出したかった。とにかく西に向かった。戻るではなく少しは進む方向へ、でももう目的があるのか分からない元々の意味は私のなかで少なからずの変化を帯びていて私はもう一度’’なにか’’を探さなければいけないような気がした。大丈夫、私には時間がある。
とりあえず電車に乗ってしまえば、私は一人静かにゆっくりと自分の時間に入っていけるのだから。
遅刻したであろう高校生がガラガラの電車の中で一人立っていた。




