第三十九話、時刻
時刻はもう、正午を回っていた。想像よりも寝てしまったみたいだ。そういえば起きてから時間を確認していない。それにこの家には時計もないし。いつ充電できるか分からないから携帯の充電も切っている。私はこの旅ではなるべく携帯は使わないようにしようと決めている。それはまず連絡したい相手があまり居ないから、いや実は連絡して欲しくないからオフラインを保っているのかもしれない。家族と紗栄子には事情は説明してる。電車や宿を調べるのには時々使おうと思うけど、ネットを開いても歩夢は居ないし、暇は潰せても、何も生まない。だから今、もう正午もだいぶ遅いことを近くの学校のチャイムで知った。
「キンコン、カンコーン」
って随分変な音だな。この地域の特徴か。
今日はもう一泊の延長はまずしよう。菜穂子さんに歩夢のことも聞けていない。ダイニングテーブルで紅茶を淹れた。勝手に飲んで良いものか迷ったけど、菜穂子さんなら許してくれると思った。ああ美味しい。平和だ。縁側からは午後の黄金の光が差し込んでいた。
そうだ!。
私は歩夢の日記を持ってきて開いた。
‘’7月、三重でゲストハウスを見つけた とっても気に入った。同世代のゲストもみんな良いやつだし 管理人の人は凄く物知りで初めて話した感じがしない 凄く共感を覚える バイトを紹介してもらえるようだし、もう少しここに居てみても良い’’
歩夢もしかして、菜穂子さんのこと好きだったのかな。いや考えすぎか。でもあんだけ素敵な人だし、むしろ自然。私だったら好きになってる。待ってそんな、そんなことって…。いやいやあることないこと考えてもしょうがない。
私は頭の中でぐるぐるする自分が怖くて、日記の続きに菜穂子さんとの何かがでてくるのがこわくて私は日記の続きを読むのをやめた。
私はふとこう思った、ここをでよう。だって私は歩夢に早く会いたいんだもん、自分の気持ちを確認したいもの。日に日に大きくなるこの気持ちを抱え続けるのが辛かった。終わるなら終わるでよかった。当たって砕けたかった。この気持ちが勘違いなら早く知りたかった。だって急にいなくなったから、だって私はあの現実から、みんなが求める「梅」から逃げたかっただけなのかも知れないから。




