第三十七話、「すいません」
「すいません」
玄関のような所から中に入るとそこには受付みたいなものはなくて誰も居なかった。中に広々としたリビングのような場所、そこにはカラフルなソファやら棚やら家具が並んでいた。そして床にはカーペットの代わりに人工芝が広がっていた。私は中にずかずかと入っていくのはアレだったし、とりあえずソファに座って待つことにした。
「あっすいません」 二回から大きな音を立てて降りてきた女性に声をかけた。ハツラツとした、薄茶色のレギンスが似合う健康的な女性。
私はそのゲストハウスに歩夢はもう居ないのだろうと思っていたがそれでも必ず訪ねていると思った。何故ならそのゲストハウスは日記の中でとても印象深く語られていたからだ。どうやらオーナーの女性とはとても仲が良くなったみたいで、ゲストハウスというだけあってたくさんの似たような旅人が集まっていて、それはもちろん盛り上がって歩夢はしばらくこのゲストハウスに滞在して途中からは宿を手伝ってもいたようだった。
「お客さんかなっ」
そう言いながらまた別の部屋に行ってしまった。音からするにどうやら何かを洗っているようだ。
「ごめんね〜お待たせっ」
スッキリとした表情、顔もテカテカに輝いている。発色の良いその肌艶から歩夢が彼女に惹かれていたのではないかと妄想してしまう。
「大丈夫です」
「何泊ぐらいの予定?」
「えっ〜とそうですね」
「あー、いいのいいの部屋は結構空いてるから、一応聞いただけ」
「部屋はどうする?個室が3000円でドミトリーが1100円ね」
安いなと心の中でつぶやいた。
「ドミトリーでお願いします」
「うち男女混合しかないんだけど良いかな?」
何だかいやらしい気がしなくもないがとりあえず試すことにした。
「おっけい、じゃあ支払いは好きなタイミングで良いから」
彼女はどこかへまた消えてしまった。
「これがシーツね」
と渡された。自分でやるんだなっ。
「部屋案内するよ、ドミトリーは全部一階だから、あと、それがトイレとお風呂」
彼女は指を刺してそのまま更に奥へと向かった。なんて自由なんだろう、そう思った。そそくさと彼女のペースに巻き込まれていたがちっとも苦しくなくそれよりもどこか心地良かった。例えるなら高級スポーツカーの様なパワフルで早いのにそれを感じさせない安定感があった。
「はいっ、ここが部屋ね、好きなベット選んで、今この部屋誰も居ないから」
「じゃあまた何かあったら呼んでね、その辺に居るときは居るから」
そそくさと行ってしまう彼女を見送って私は部屋を見渡した。とりあえずザックを下ろして、私は3つある二段ベットの内の一番はじの一段目に腰掛けた。
「ふ〜っ」
と、一息。私はそのままベットに身を投げた。
「俺、旅に行くからさ」
そう言った歩夢がフラッシュバックしてくる。その後、私と離れたはずの、歩夢を私はまだ見ていた。何だか、ハツラツとした綺麗な女性と歩夢は合流していた。歩夢、もしかしてその女の人と旅をしているの、凄く嫌な気持ちになって目が覚めた。私は少し現実と夢の間を彷徨ってそれが夢だと確信して、そんなのダメ、違うってもう一度寝た。また違う夢を見るために。歩夢と私がまた出会う夢を見るために。
「歩夢、」
歩夢は私の腕の中に居た。私の腕の中で泣き出した。
「やっと思い出したんだね、僕の誕生日」
歩夢はそう言っていっそう泣き出した。そうだよ、ごめんね。私は彼がとってもとっても愛おしくなって強く、そして優しく抱きしめた。目を覚ますと、私は途方もない幸福感を抱いていた。やった。そして本当に見れたことにも驚いた。
私は自分の気持ち次第なのかな人生って、そう感じていた。何だか未来が明るく感じた。これが希望ってやつかそう拳を握った。
「歩夢、待っててね」




