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第二十五話、コーヒーと父と。

 不器用におもむろに寝ることも出来ず、学校に行くには早すぎて私は一階に降りた。コーヒーは良かったけどそれだけじゃ足りない私は空腹に任せて両親に顔を見せる。もう気まずさを感じない所まで来ていたのにキッチンには父親しか居なかった。心配になって声をかけた。

「あれ、お母さんは?」

 父は「心配なんじゃん」、と言いたそうな顔で言った。

「今日はまだ寝てるよ」

「あぁそう」

 無理はあったけど別に心配してないという感じで言った。

「そうだ!コーヒーの道具借りた、美味しかったよ、今使うでしょ?」

 私は昨日の事を更に聞かれる心の準備ができてなくて、丁度良くコーヒーを引き合いに出した。

「梅が使ってたのか、今探してたよ」

「それにしても今朝は珍しいことばかり起こるな、」

「今、持ってくるねー」

 私は何か聞かれる前に二階に駆け上がった。

 やだ急に緊張しちゃった。でも隠す必要あった?どっちにしろ言うんだし逆にチャンスじゃん。それに記憶なくてそこまでよく知らないし、お世話になってるけど、そんな何か気にする必要ある? 嫌われるの怖いの? いや親でしょ、知らんし、飛び出したって良いんだから。あ、お金は欲しいけど。自分の考えに笑ってしまった。俯瞰して考えたら別に何を嫌がったのか分からなくなった。いいわ、行きましょっ!

 私は清々し気持ちで階段を降りた、「あ、コーヒーの道具忘れた」

「何だか嬉しそうだね」父は言った。

「あのね、私、旅に出ることにしたの、だから大学も休学する、しいていうなら自分探し的な!もう決めたのっ」

「…そう、」 父は少しの間、頭を下ろして考えていた。

「分かった、今はただ分かった、」顔を上げた父は複雑な面持ちだ。

「それでも梅が自分の意思で何かしようとしてるそのことが嬉しいよ」

 私はちょけて、

「ずいぶん、優しいお父さんだこと」

 なんて言った。

 父は苦笑いをしていた。

「あのコーヒーの道具」

「あっそうだ、」

 私は急いでまた二階に上がった。

 心は軽やかに踊るようだった。割と長い時間言えずに居たはずなのに、言ってしまえばこんなに楽なんじゃん。過去の自分に優しく突っ込む。

 あぁ今朝はコーヒーも良い利き方してるな。断捨離された不安の跡地に冬の晴れた日の冷たく澄んだ快感が流れ込む。

 さぁて、ここからよ! 両手を大きく伸ばして深呼吸した。

「歩夢、元気かな?」


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