第十二話、コーヒー。
次の日起きて迷う前に家をでた、眠い目を擦りながら。外に出てしまえばもう目的地は一つしかないから、朝ごはんも食べずに母から貰った地図を頼りに歩いた。日記は手さげに入れて持った。
幼馴染というくらいだから思ったよりも直ぐに着いてしまって、なんだか緊張してそのまま家の前を通り過ぎて近くのコンビニまで来てしまった。落ち着こうと思って記憶喪失前に好きだったのか定かではないアイスコーヒーを買った。コーヒーマシーンにカップをセットして待っている時に見覚えのある顔が入店してきて思わず顔を背けた。
「あれ、梅じゃないか」
彼だった。
「あっうん」
会いにきてるのにヨソヨソしく言った。
「もう退院してたんだ!」
「あぁついこの前ね」
「良かったじゃん、何コーヒーなんて飲み出したの?」
「えっ私、好きじゃなかった?」
「何言ってんだよ、散々俺にカフェインに頼り出したら本来の集中力がどうのこうのって説教してたじゃんか」
「あー、そうだったか」笑ってふざけて見せた、緊張を悟られないように。
「まぁ良いんじゃないか、何か新しい挑戦も」
「挑戦って、、大袈裟な」
「で、このあとの予定は?」
「え、特にないけど」
「じゃあオレんち寄ってけよっ、母親は今仕事だと思うけど。何か思いだせるかもよ」
「そうね…いく」
随分簡単に男の子に連れ込まれてるなって思いながら私は彼のタバコが吸い終わるのを慣れないコーヒーを飲みながら待った。まぁ最初から行くつもりだったのだ。