表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

角を曲がるとき

研修医の頃、夜遅くに病棟を回診していた際、患者さんとぶつかりそうになったことがありました。その話をナースステーションでしていたとき、看護師がこんな話をしだしました。


「夜の巡回で角を曲がるときは、大回りするようにしているんだよ」


私は、患者さんとぶつからないように気をつけていたつもりだったので、その配慮の話かと思いました。ところが、彼女は真剣な表情でこう答えました。


「小さく回ると、お化けとぶつかるからね」


冗談めかした話に思えましたが、彼女は決して角を小回りしませんでした。気になった私は、他の看護師にも聞いてみました。すると、「確かにそうしているかもしれない」と言うのです。誰も本気で幽霊がいるとは言いません。しかし、「なんとなく」そうするのだと。


ある夜、私はその「なんとなく」を確かめたくなりました。夜遅くに病棟を回診していた際、あえて意識的に小回りして角を曲がってみたのです。実際に何かが起こったわけではありませんが、その瞬間、なんとなく嫌な感じがしました。特に理由はないのに、身体の奥に染み込むような違和感。それ以来、私は小回りするのをやめ、大回りをするようになりました。お化けを信じているわけではありません。ただ、そうしたほうが安心するというだけの話です。


それ以来、私も自然と大回りをするようになりました。お化けを信じているわけではありません。ただ、そうしたほうが安心するというだけの話です。

私自身、お化けを見たことはありません。それでも、「何か」が漂っているように感じる瞬間があります。人の生と死が交差する場所だからこそ、合理的には説明がつかない出来事が起こるのかもしれません。


私はこれからも怖い話を蒐集し続けるつもりです。ただし、私が関心を持つのは、決して「お化けが出た!」という話ではありません。何もないはずなのに、ふとした瞬間に「何か」を感じてしまう、そんな話です。

私一人で抱えるのは、少し心細いのです。だから、あなたにも聞いてほしいのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ