中編
あの入学式でやらかした事件で、私は学内で有名になり、いつしか公式の生徒会ファンクラブの1年生代表になっていた。
あれれ〜??おっかしいなぁ〜
変装して真面目キャラにして目立たない目論見だったんだけどなぁ〜。
でもお陰様で、同年代はもちろん、上級生のお姉様達とも仲良くなり、友達100人の目標を日々更新中なのである。
今日もファンクラブの代表会議が行われるので、生徒会室の隣にいるある会議室に、放課後集合することになっている。
代表会議には、エリザベス様を筆頭に其々の婚約者様達も参加される。
このファンクラブは、クリーンな活動をするのがモットーだからね!婚約者様達が嫌がる行為はアウト!!ってなるのよ。
まぁ〜当たり前だよね〜。彼等の婚約者にしたら、自分の彼氏がモテモテで、変な女が変なアプローチとか……正直イヤだもん。
ファンクラブでルール化して、彼女さん達の意見も取り入れてって、お互いに心地良い関係でいるために大事なことだと、ファンクラブ入って直ぐに提案したんだよね〜。
そしたら、エリザベス様にとても感謝されて、今ではとても可愛がって貰ってます!!
クフフ〜。ほんと、エリザベス様って見た目と違って、お茶目で天然な所が、堪らなく可愛い〜。年上なのに庇護欲バリバリですよ。
じつは…私、エリザベス様の隠れファンクラブにも入ってしまったのよね!!これが…ファンクラブに入るの激戦なのよ。エリザベス様ファンの多さは、もしかしたらレオナルド様より多いかも……だって男女ともに大人気なのだ。
もしエリザベス様を泣かせるような事があれば、生徒会長だろうが、王子だろうが、問答無用で私がとっちめてやる!!って密かに思っている。
それにエリザベス様のファンクラブも敵に回すだろう。そうなれば若者の大多数の層が戦力だ。
あれ以来、ヒロインらしい女性と、レオナルド様をはじめ、他の生徒会メンバーとの接触は全く見られていない。
……ヒロインの子が奇妙な行動をとることが多くて、全生徒から!ヤバいヤツだと認識されちゃってるのよね……。
ある日は、昼休みの時間に、中庭の噴水をひたすらグルグルと円周してたり。
ある日は、図書館の窓際に立ち、本も読まずにずっと佇んでいたり。
ある日は、騎士団の練習場の水飲み場の前で、誰も練習してないのに放課後ずっと仁王立ちしてたり。
ある日は、お昼時に食堂のトイレの前の廊下を、行ったり来たりずっと繰り返したり。
前世の記憶がある私から見ると、たぶんおそらくヒロインの子は、ゲームのイベントをこなそうと一生懸命になってるんだろうなぁ……って分かる。
けど!!知らない人から見たら、ただの怪しすぎる人になってしまっている……残念な子なのだ。
私の推しのエリザベス様に幸せになって貰いたいから、ヒロインとは関わらないようにしようと決めたんだけど……何故だろうか。
放課後、会議室にエリザベス様と一緒に向かっていると、階段の壁の影から、チラチラとピンク色の髪の毛が見え、こちらに狙いを定めている姿が見える。………かなり怪しい。
もしかして……エリザベス様を狙っているのかしら?典型的な階段落ちを狙ってるのがバレバレだわ…。
エリザベス様を巻き込むつもりなら
私も容赦しないもんね!!
さり気なく階段側を私が確保し、エリザベス様を直接狙いづらくする。何もしてこなかったらそれでよし!!
こっそりと私とエリザベス様に、無詠唱で、薄くて他の人には気付かれないほどの結界を張っておく。攻撃されたら反転する魔法も一緒にかけておこうかなぁ……。
そして案の定、階段の横を通り過ぎようとした時に、ピンクのヒロインが飛び出してきて、私の腕を掴み「キャ~ひどいエリザベス様〜」と私を下敷きにするように階段から落ちた。
……………いいえ〜、残念ながら落ちてないんだなぁ〜これが!!
重力魔法と風魔法を組み合わせて使い、私とヒロインはプカプカと階段上で浮いている。
「な!!!宙に浮いてる〜!!」
ヒロインは私の腕を掴んだまま、バタバタと暴れだした。ちょっと!!暴れたら危ないじゃない。……うっかりバランス崩しちゃいそうだった。
「まぁ〜。ディアナさん!!飛行魔法が使えるなんて凄いわね〜。今度私も飛んでみたいわ〜。」
目をキラキラさせながら、エリザベス様が賞賛してくれている。
「えへへ〜ありがとうございます。今度一緒にエリザベス様を空の旅にご招待しますわ」
「はぁ~……空の旅なんて……素敵ね。ディアナさん、私、ディアナさんに出逢えたことを神に感謝しますわ〜。」
胸の前で手を組み、上目遣いでキラキラな眼差しを向けるエリザベス様は………天使なのかもしれない。まぁ、私が浮いているので、物理的に上をみる感じになるんだけど…!こうしちゃいられないわ!!
私はサッサとヒロインから抜け出し、シュタっとエリザベス様のもとに戻る。エリザベス様の組んだ手を上から、握りしめ
「エリザベス様、私もエリザベス様に出会えて幸せです!!」
「ディアナさん嬉しい……。」
そしてほんのり赤くなるエリザベス様が、大層可愛くて…………少しくらい抱き締めてもいいかしら?
ハッ!ダメよ……!!しっかり自分を保つのよ!!エリザベス様ファンとして、推しとの過剰接触は禁忌!!
「ちょっと!!お、降ろしてー!降ろしなさいよぉ!!」
最後のほうヒロインは涙目になりながら、真っ赤な顔で怒っている。……すっかりエリザベス様に夢中で忘れてたわ。ごめん、ごめん!ヒロインなのに存在忘れてて。
周りをみると、あまりにヒロインが騒ぐから、いつの間にギャラリーも集まってきてザワザワしていた。
そんななか、私はビシっとヒロインを指差し!!
「貴女、さっき「ひどいエリザベス様」と言いながら私を引っ張っていたわね。酷いのは貴女の方よ。なんの面識がない人にいきなり襲いかかり、階段から落とそうとした罪、それも何もしてないエリザベス様を陥れるその汚れきった根性、お天道さまが許しても、このディアナが許しませんわ!!」
ワァーという歓声と拍手が周りからおこる。
自分が不利だと思ったのか、ヒロインが
「こ、こんの~~!『アクアボール』!!」
私とエリザベス様に向かって水魔法を仕向けてきたが、反射魔法のために、逆にヒロインにビシャっと水球がぶつかった。
「ギャ!!つ、つめた!!!どうなってるの?」
ビシャビシャなヒロインが宙で暴れている。まぁ〜自業自得だ。私とエリザベス様に向かって攻撃しようとするなんて、許すマジ案件。
そこに遠くから走り寄ってくるレオナルド様が見えた。
「どうした?何があつた?大丈夫か?」
真っ直ぐエリザベス様に向かっていったレオナルド様。うん。流石!貴公子と呼ばれるだけある。婚約者をまず気遣うレオナルド様の、いい男ポイントを1上げておこう。
そしてエリザベス様と私が対峙している、びしょ濡れのヒロインをみて、一瞬ギョッとした顔になった。
あ~……ヒロイン。びしょ濡れでメイクも落ちて、黒い涙みたいなゾンビみたいな……、顔がドロドロになっていて、正直怖い……。
「レオナルドさま〜、この女が私をこんな目に!!助けてください!!」
ヒロインが凄い剣幕で私を指差し、ギロリと睨んできた。
オイオイ……ヒロイン。まじか!!ここまでやられてるのに、なお私に喧嘩を売るなんて……。火傷しちゃうよ??
「……どうせ見てたんだろ?バルト。報告を。」
「はいはい。レオナルドは人使い荒いなぁー。」
そう言って、いつの間にか私の真後ろに立っていたのは、魔法団長の息子のバルト様。
長身の背を屈めて、ディアナの耳元で
「結界と反射魔法。相変わらずスゴイね」
他の誰にも聞こえないように小声で囁いた。
ディアナはバッと耳を押さえ、真っ赤になりながら口をパクパクと動かし、抗議しようとするも、ディアナに向かって、シーーーと口元に人差し指を当てられ、結局何も言えなくなった。
やんちゃ担当めー!!!もう!!いつも毎回からかわれる~~。だから側近の中で唯一婚約者もいないのよ!!
エリザベス様と一緒に行動していると、どうしてもレオナルド様達と一緒になる時が、必然的にでてくる。
そうするとバルト様は、何かとディアナに絡んでくるのだ。真面目キャラが珍しいのかしら?と思っているんだけど。ほんと心臓に悪いからやめて欲しい…。
やんちゃ担当の彼の周りには、いつも華やかな女子が多い。そのなかを、のらりくらりと上手に立ち回り、誰からも不満がでずにうまーくやるのだ。ある種の人垂らしの天才だ。
彼に弟子入りしたら、友達100人とか、あっという間に目標達成できそうだわ。………それよりも、私がさっき張った結界と反射魔法に気付ける人が居るなんて……。いつの間にか背後にいたし…いつから居た?………バルト様、侮れないわね。
◇
数日後、ヒロインは精神不安定とのことで、魔法学園を去っていった。
学園内で、攻撃魔法を人に向かって使うことは禁止されている。その相手が私とエリザベス様とあって、大問題になり、最近の不思議な行動も問題視され、風紀を乱すとのことで、一発退場となった。
ヒロインの子には悪いけど、退場してくれて安心した。まぁ、あの子は自業自得のところが多いんだけどね。ここはゲームじゃないって早く気づくことを祈るばかりだ。
これでやっと私の平穏な学園生活〜カモ〜ン。
推しのエリザベス様をこっそりと愛でたり、友人達と楽しくお喋りしたり、ランチしたり……。
そうよ〜。これこれ!!
まさに青春って感じ〜!!ビバ学園生活!!
ある日、昼休みにクラスメイトの友人達と一緒にランチをしていると、その中の1人がとんでもないことを言い出した。
「ねぇねぇ〜。聞いた?」
「なになに〜?」
「なんか…、うちの学園にダーメリック王国の王子様が見学に来るって噂!!」
「キャーーー!!うっそ?ほんと?あの有名な?」
「えーー!!どっち?どっち?」
「なんでも……王子2人で訪問するってー!!」
「キャーーーーーーーーー!!!」
「ほんとーー??私…!クール派」
「えーー!!私は断然、爽やか派だなぁ」
…………?…………???兄達が、…くる?
それにクール派とか爽やか派とか……なに??
え?……、…ちょ……、……くるって、ここに??
「まって、まって!!ちょっとまって!!?」
「ん?どうしたのディアナ?急に慌てだして?」
「え?王子って、ど、どこの国の??」
「だから!ダーメリックよ!あの有名なクール&爽やかな王子って言えば!!ダーメリック王国以外にないじゃない!!」
「………え?有名な王子………?クールと爽やかって………?」
「やだぁ〜。ディアナ、知らないの?ダーメリック王国の王子って言ったら、王太子のクール好青年派と、弟の爽やかナイスガイ派で令嬢の中では、憧れの二人組じゃないの。」
え!!兄さん達!そんな有名なの??
「で??ディアナはどっちが好み??クール派と爽やか派だったら?」
えーーーー!!好みですかっ!!?
兄さん達は…………どっちも私に対しての想いが重いからヤダなぁ……とか言ったら大変なことになりそうだわ。
それより!!もっと重大な問題がっ!!
どうしよう〜!!本当にくる??
なんで兄さん達がくるのよ!!
ディアナとして学園生活してるのがバレたら、強制的に連れ戻されちゃうーーー!!!
お読み頂きありがとうございます。