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紙飛行機と気持ち

作者: 春河りっか


今日は日直でいつもより帰るのが遅くなった。


夕焼けが差す廊下が新鮮に映り、いつもとは違う経路で教室に戻る。

普段なら自販機のある休憩室を通りはしないが、せっかくならと自販機の温かいココアのボタンを押す。もうすぐ春が終わる頃だというのにまだ温かいココアが売っているなんておかしいと思いながら1口飲む。

今日の気温は20度を超えていて、冷たいココアにすればよかったと少し後悔しつつも、ココアの甘さが疲れた頭と身体に染みた。


教室に戻るとクラスメイトの岡くんがベランダに出て校庭を眺めながら、紙飛行機を飛ばそうとしていた。

彼に何で紙飛行機を作ったの?と、思わず尋ねる。


「思ってることを空に飛ばすんだよ」


彼の回答に戸惑う。


「おかしいとか思ってるんだろ?」


「まあ、うん」


正直に話すと彼は慣れっこだという感じで、紙飛行機を飛ばす。


僕が想像していたよりは飛距離は伸びず、紙飛行機はあっという間に落下していった。


「今日は飛ばないな」


彼はしょうがないという感じで、机の横に掛けてあったリュックサックを手に取り、帰ろうとしていた。


「ちょっと待てよ、もう終わり?」


僕は堪らず、彼を引き止める。彼とちゃんと話すのはなんだかんだ初めてだ。


「そうだけど?だって、今日の分終わったし。また明日な」


彼は颯爽(さっそう)と帰ってしまった。

僕はモヤモヤしながら帰宅する。



翌日の放課後、みんな部活やバイト等で教室から出ていく中、僕は岡くんと2人っきりになるまで待った。

後ろを振り向くと、岡くんは馴れた手つきで紙飛行機を折っていた。

僕もいらないプリントで紙飛行機を折ってみる。

久しぶりに作ったので少し(いびつ)だが、何とか形になった。


彼はまた昨日と同じようにベランダに出ていた。


「今日は飛びそう?」


「さあね?飛ばしてみないと分からない」


彼は不思議なことを口にしていた。

毎日作っているわけではないのか?と疑問に思った時、彼は手に持っていた紙飛行機を空に放つ。



彼の飛行機は風に乗り、昨日よりも気持ちよさそうに飛んだ。

僕も彼と同じように飛ばしてみる。見た目は不格好だが意外と飛んだ。

なんだか心も軽くなった気がする。


「飛んだな」


「そうだね」


「スッキリしたから帰る」


彼はそう言ってリュックを肩にかけて教室を出た。

僕も彼の後を追うように帰る。



後日、担任が校庭のあちこちに紙飛行機が落ちているが誰の仕業だ?と聞かれる。僕と岡くんの秘密にしておく。


また今日も彼と紙飛行機を飛ばす。

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