なんだかとてもボコられるんですが
「いつになったら戻るのかしらね」
人を散々ボロ雑巾のようになるまで訓練という名の暴力を振るった本人は、疲れ果てて倒れている私を横目に呟く。
私の使える魔法や呪力を使っても受け止めるかあっさり避けられてカウンターを決められる。
体の使い方や戦闘経験の差を感じつつも必死に抵抗してみたけど、全部意味がなかった。
私がいくら考えを巡らせても力でねじ伏せられて、ボコられる。
体感的な時間でしかないけど、それでも数時間は立っているはず。
でも、この真っ暗な空間は太陽も月も、陸も海も空もない。
ただ重力を感じ、床に足は着くものの、床は本当に床でしかなく、地面でもない。
広さも大した広さは無く、歩いてすぐに元の位置に戻れる。世界一周が歩いて数分で終わる世界。
「カラネはどう思うかしら?ここから出る方法」
「でも、ネラが連れてきた以上、帰る時もネラがなんとかしてくれる気がするんだけど」
「まぁ、ネラがアンタの様子を見てるからネラが何とかするかしらね。でも、そろそろアンタを一方的にボコるのも飽きてきたのよね」
人を散々ボコっておいて、その言い様か。
実際そうだけど、飽きたは酷くない?
「そうね、飽きたし、真面目に指導してあげようかしらね」
「・・・お願いします」
今までホントに遊ばれていたのね。
「基礎能力は勿論よ。それはそうなのよね。でもね、これも得意不得意があるから何とも言えないけど、アンタの場合は第6感がよさそうよね。基礎的な身体能力は余り得意ではないけど、勘が鋭く、予想で成功する。回避する際もそうね。だから、まずはメンタル面を鍛えて、どうな状態でも冷静に勘を頼りに出来るようにね」
そう言って、私を座らせた。
「呪力でも魔法でもいいわ。球体を用意して頭の上と鼻先、両掌に生成して、腕は横に伸ばしてその状態を維持しなさい」
何か嫌な予感を感じながらも言われた通り生成する。
生成直後に私の頭上に何かが通り去る。
生成した魔力の玉の中に呪力が混じった事を感じ、呪力が通り過ぎた事を理解する。
「こんな感じでウチが色々攻撃をするけど、あんたは頑張ってその玉を維持しなさい。少しでも動揺を感じたら、玉を破壊するからすぐに生成しなさいね」
特にそれ以上の説明もなく、攻撃が始まった。
同様以前に部屋に動けばやられる。
大人しく動揺せずにじっと座って、玉の維持に集中する。
ただひらすら玉の維持のみに集中する。
「いい感じじゃない。その調子よ」
・・・
・・
・
集中し、心を無になる。
目の前まで迫る呪力で構成された剣や、ひたすら玉を狙って連射される玉に対して、色々言いたかったけど、全身に配置された玉を意識して維持する事に意識を割くのが大変すぎてそれどころではなかった。
随時呪力で汚染される魔力の玉を全て綺麗にして維持をする事に集中して余計な思考が無い。
この訓練は続ければよくなるわけではなかった。
集中力が消れると全て消失してしまうので、疲れで中々集中する事ができなく、徐々に維持ができなくなっていった。
「そろそろ終わるわよ。そろそろ休憩すべきね。ちょっとつけ込めた感じかあるわけだし」
終わると同時に身を床に投げる。
凄い息切れと汗が出てくる。
「しばらく休憩ね。流石に疲れてこれ以上は身に入らないはずよ。いつネラが返してくれるかわからないけど、少し眠って休みなさい」
言われた直後から徐々に眠気が襲い、強い眠気によって意識がぼんやりしていく。
「これでいいかしらね。ネラ」
「そうだね。ダメダメだけど今はいいかな」
「焦り過ぎなのよ。・・・情報が足らないからわからないけど、カラネが重要な人物なのはわかるけど、一体・・・」
「内緒。まだキミが知るには早いからね」
「どうゆうことかしら?」
「言葉通りだけど?まだ、今はまだ早すぎるだけ」
「はぁ、まあいいわ。アンタの言った通り、カラネを寝かせたけど?これで大丈夫なのかしら?」
「いいや。駄目だね。もう一度やり直しかな」
「はぁ、面倒ね」
「・・・まぁ僕の望む結末を迎えるまでは付き合ってもらうよ」
「はいはい、分かったわ」




