先生たちの事情
「うん?カラネ、呪獣の力の中にいるよ?」
「え?」
思わぬ方向から希望の光が見えた。
~・~・~
幸いにもテントのあるエリアと訓練場はそれなりに離れていたのでこちらに被害は無く、火を囲むように話し合いを始めた。
「急なアクシデントがあったが、幸い怪我人はいない。無事とは言い難いが今日は一度休み休息をしっかり取り、明日改めて話し合おう。では解散」
それぞれが散らばってテントへ戻る。
残ったのはシラベ先生とチヨ先生、アンナ先生とカンナ先生。それにハカリとウチの6名だった。
「で、話とはなんだ?ハカリ」
「どこまでが、想定範囲なの?」
「なんの話だ?」
「面倒だからとぼけないでくれない?」
ハカリがイライラした様子を隠さず、今にも拳が飛びそうな雰囲気がある。
「おかしいよね?色々とさ。初めから。なんで魔女が3人いるのか気になってた。カラネが呪獣になってからの行動もおかしい。ねぇ、何を知ってる?何を考えてる?なぜそんなカラネに注目している」
ま、そうよね。
まだ、ウチは動揺しているのか、寧ろ冷静だった。
魔女、魔法少女の中で属性で四字熟語に至った魔法少女に贈られる称号。
『破調解析の魔女シラベ』
『業賢治癒の魔女チヨ』
『明暗無名の魔女アンナ』
この3人が揃いも揃っているのはいくら合宿とはいえ過剰過ぎる。
カラネの呪獣化に対しての戦力と言われれば納得だけど、あの時の彼女らの行動も不思議だ。
なぜ、あんなに冷静で、傍観しようと考えていたのかわからない。
チヨ先生がなぜ、カラネとタイマンし続けていたのかも不明。
本当なら、カラネも座学か、保護や詠唱を教えてもらえばよかった。
3年と組手を行っている方が正しいはずな気がする。なのにカラネとタイマンという采配で、ウチらに詠唱と保護魔法を教えていたのかわからない。
「まぁ、流石に無理がありましたね。2字熟語の魔法少女がいる以上隠しきることは始めから難しいことでしたね」
「カンナ先生はどうせアンナ先生ですよね」
「気づいてたのは二人だけのようですが、他の方に明かさないでくださいね」
本当に何を考えているのかわからない。
この目の前の3人の先生方が。
徐々に恐怖のような感情が湧いてくる。
チヨ先生が手を叩くと緊迫した雰囲気が消える。
「ちょっと大人げないですよ。私たち。彼女達で遊び過ぎです」
「そうだな。まぁ、軽くネタ晴らししてしまうか」
「ハカリさんには申し訳ないですが、あたしたちも正確には現状を把握していないのです。なので完全にフヨコさんの件に関して予想外の出来事です」
アンナ先生の言葉を皮切りに話が始まる
「そうだな。まず私が依頼を受けた。上からな」
「上と言うと、カゾさんですか?」
「いや、違うが、これはまだ明かすことができない。機密事項のようなものだ。この件に関しては話してもいいと許可を得ているから話すことができている」
「同じく私も依頼を受けたわ。カラネを追い込めと」
「合宿は元々行う予定だったが、それに合わせて依頼が来た。カラネを呪獣にせよとな」
「依頼内容はカラネの呪獣化だけでそれ以上は無かった。なので、その後カラネがどうなろうと依頼に関係なかった。依頼主からは呪獣化しても誰かが死ぬ事は無いと伝えられていたから、我々も興味があり、実行した」
「結果として、フヨコさんに被害が出てしまいました。それに関しては本当にごめんなさい」
「言い訳になってしまうが、私も、てっきり呪獣になっても以前のように人間に戻ると思っていた。最悪を想定しつつも、甘く見ていた事で、フヨコにつらい思いをさせて申し訳ない」
「私も本当に悪い事をしたわ」
「まぁいいですけど、その依頼主の目的は何かしら?」
カラネを呪獣にするのが目的。
シラベさんは最悪の場合を考え、3人になったけど、どこか甘く見て傍観に徹していた。
以前私たちがカラネが呪獣から人間に戻ったのを目撃しているから、その可能性を信じて。
呪獣にするために追い込み、結果成功はした。
でも、なぜ、カラネを呪獣化する必要があったのかしら。
「私らも知らない。恐らくどこかしらで見ているのだろうがな」
「上の人たちの力私たちも把握していないので何とも言えないのが正直な気持ちですね」
「私たちとは異なる考えを持っている。だからこそ、想像ができないのが痛い」
カラネを呪獣化するメリットがわからない。
「はぁ、わかったわ。戻るわよフヨコ」
「えぇ」
「先生方、貸し1です」
ハカリは振り返らずに歩いていく。
不謹慎だけど、うれしい気持ちがある。
「ハカリ、ありがとね」
「あぁ、めんどい、かなり面倒だけど、放置する方が面倒な結果になるから効率を考えた結果。感謝より早く戻ってほしいわ」
「うっさいわね。ウチだって、カラネを気にしないなら戻るわよ」
「ほんと、メンドーなことになったなぁ」




