カラネの一撃
「・・・」
「どうしたの?ハカリ」
「何でもないよ。それよりもあの状態をどう見る?」
カラネは赤黒い球体のまま、膨れ上がっただけだった。
いや、始めは以前会った時の呪獣の姿だったはず。
それが、叫んだかと思うと膨れた。
「正直分からないわ。ウチの知ってる情報と違う部分が多すぎるもの」
「だよね。聞いてた話と違うからね。でも、呪獣と戦った経験で吠えたり、あんなふうに膨れるのは見たことないの?」
「吠える奴はいたわよ。けど、膨れるのは見たことないわ」
「そっか」
こうして雑談していても、カラネは膨れている。
シンラ達は攻撃はしないで、外から様子を伺っている。
「ケイカさん!」
「恐らく後、5分以内に膨張は止みそうっす」
「では、《彼女へ繋がる道標、私に教えてください。|道順》・・・もう一度《彼女へ繋がる道標、私に教えてください。|道順》・・・駄目です。見えない。彼女を見つけ出せないです。どうしましょうか」
「シンラさん、落ち着いてください。他の手立てを探しましょう」
「えぇ、少し動揺しただけですので。しかし、カラネさんをあの中から見つけ出すのは現実的ではないのですよね」
カラネは膨らみ続けて3階建ての建物くらいには膨らんでいる。
あの中からカラネを見つけるのは、相当危ないな。
でも、前提が違うのよね。
「シンラ、アンタ勘違いしてるわ」
「なんですの?フヨコさん。何を勘違いしているというのですか?」
「あの中にカラネがいるんじゃない。あれが全てカラネだって話よ」
「あの球体全てがですか?」
「そういってるわ」
「そんな」
そう、馬鹿なと思うよね。
でも、そんな馬鹿な話がある。
ってシンラと話し合っている場合じゃない。
「全員、全力で呪いに備えなさい!」
ウチの体に悪寒が走り、鳥肌が立つ。
ウチは急いで全員に呪い耐性を全員に付与する。
それと同時に球体から複数の目が開く。
暴風と共に視界が封じられて、周囲の音もかき消された。
風圧で飛ばされないようにウチ自身に少し重力を付与して、対策する。
現状、付与を複数展開しているせいで、ウチのキャパ的にこれ以上は何か付与を解除しないと次の魔法は使えないけど、ここはこれ以上何もせずに、攻撃には警戒して、風圧を堪えるしかない。
聴覚強化や視覚強化辺りを使いたい気持ちを我慢し、風圧に堪える事数分。
攻撃が来なかった事に安堵すると共に他の人たちの安否が気になり、視界が開けるを待つ。
他の人は怪我をした様子はないものの、一部は吹き飛ばされて木にぶつかっていた。
けど、それ以上に現状に驚き恐怖した。
「やっば」
「いやいや、そんな楽観的な反応できる状態じゃないでしょ!ウチら危うくこんな状態になってたんだから」
もっとも大丈夫だと思っていた奴は案の定アホ面をして周辺を見ていた。
ハカリは無関係みたいな顔しているけど、そんな顔できる状況は周りを見ていたらできないはず。
だって、自然が死んでいるもの。
生い茂っていた草木は枯れて、土は乾燥し、ひび割れていた。
「まぁ、あたしは強いから、この程度は大丈夫だし」
「あーはいはい、そうね」
「フヨコさん、ありがとうございます。助かりました」
「カラネを助けるのに、ここで倒れられたらこちらが困るだけよ。それよりも二人を放置してていいのかしら」
「・・・そうですね。では失礼しますわ」
「アンタって素直じゃないよね」
「うっさいわね」
ほんとうるさいわ。
しかし、カラネ、アンタほんと何がしたいの?
脅威度として比較的高い。
それなりのベテラン魔法少女じゃないと倒せない脅威度はある訳。
今の広範囲の呪いは暴風すら起こせる程、災害は起こせる力を持っている。
今の広範囲の呪いは殺意は高い。けど、対策していたら大丈夫な攻撃。
あの状態で追撃が来ていたらウチを含め戦意のあるウチら5人を全滅させることができたはず。
追撃できない程力は使っていないはずだから、攻撃できたはずなのにしなかった。
カラネ、アンタ何がしたいわけ?
「ハカリ、今からウチ使いものにならなくなるわ。シンラ達に与えた付与効果も無くなるから、そのあたりの事伝えといて」
「・・・はぁ、面倒だから自分でやってほしいけど、ま、いいよ。死なないでね」
「はっ!ウチがこの程度で死ぬわけないじゃない。行ってくるわ」
ハカリが笑ってくれるから、気持ちが楽なる。
ハカリも知ってる魔法、身体に痛みも感じるし、ミスればウチ自身死にかねない魔法。
「《与太》《関与》」
視界が暗くなっていく。
一瞬だけど、カラネの目が全て閉じた気がする。
なら成功しているはず。
これで、何しても役に立たない無駄行為になる。
だから、待っていなさい。
カラネ。
呪獣の力の暴走で、意識が薄れてもはっきりすれば、人間の姿に戻れる事は知ってんだから。
ウチらの手を汚させないでよ。
全く。殴って止んだから




