魔法少女になれるらしい
空に浮いて、少女達の雑談を耳にしながら、気分は死刑囚の気分で運ばれた。
遠い場所まで飛んでいる気がしたけど、途中で温かいく寒気のする不思議な膜のような何かに触れた気がした。一瞬過ぎて気のせいだったのかもしれないけど
ほどなくして降りていくと、目を瞑っているとはいえ、酷く明るいようで視界に光を感じた。
「お帰りなさい。で、どうゆうわけかな?」
「ちょっと面倒事でな、判断を他の奴に頼もうと思ってな」
「いくら面倒だからってウチでも手を染めたくないかんね」
はぁと少女2人とは違う人の声が聞こえ、私は台の上に降ろされた。
ひんやりと冷たい石のような上に置かれて、少しビクっと反応してしまう。
「理由はわからないから、ここでどうこういうつもりないけど、しらばく拘束させてもらうよ」
「まぁ、そうなるよな。いいよ」
「仕方ないしね。こうなるのはわかってたから」
バシュっと音が聞こえたと思ったらバリンとガラスが割れる音がした。
「そんな事せんでもええよ。察するにそこの少女が今回の標的関連なのはわかる。んで、ユイの結界に引っかかったんやろ。ユイが拘束使うからには『呪獣』の反応かい。トウカとフヨコが操られていると勘違いしたとかやろな。まぁ、2人が抵抗しない当たり想定していたんだろうね。そいで、2人ともこの子を警戒している。いつ戦闘起きても大丈夫なように警戒しているのはわかるが、ちゃんと隠さな高位の呪獣じゃ気づかれて反撃されるで。それと、そこの子や。アンタ起きてるやろ?いい加減起きてくれんか?話するにもできんやろ」
話を聞きながら周りの状況を知る事ができたけど、完全に気を抜いていた私は話を振られてビクっと反応してしまった。
なんとなく視線を感じるし、そっと目を開いて起き上がる。
私が乗せられていた台には拘束具がセットされていて、今は締めてないけど、本当なら締めて拘束しているんだろうなと感じる。
台から降りて、すぐに逃げるべきかと考えながら、足を下ろして気づいた。
いつの間にか、化け物の姿から元に戻っている。
そういえば、ずっと人間の様に扱われていた気がする。
それに気が付いた私は、足を下ろした状態で周りを見る。
体育館のような広い空間で、強い光を放つパネルが複数あり、見覚えのある少女2人と白衣を纏った女性、スーツ姿の女性の四人がいる。
先ほどまでの1人の不安は無くなったし、元の姿に戻っているのは嬉しいけど、化け物の姿で出会ってた2人がいる事で先ほどまでの記憶が嘘じゃないと告げるし、もしかしたら殺されるかもしれない。見知らぬ場所で逃げるにも逃走ルートが分からない、というか見られてる以上逃げられない。
私のコミュ症もあり、ビクビクして怯えた状態でキョロキョロする。
「話は後にして、オレとしては彼女について調べて欲しい。大まかな話はオレからするが、見るからに不安そうだしな。一度調べてから状況説明もいるだろ」
「ウチも同意。この様子じゃ、この子から情報引き出せないだろうし、一度この子の正体をはっきりさせたいわ」
「まぁ、その為にウチが来たわけだしな。ほれ、立てるか?」
スーツ姿の女性が私の前に来て手を差し伸べてくれる。
ビクビク怯える私は流されるまま、差し伸べられた手を掴んだ。
「んじゃあ、先に事務室へ行っておいてな。ユイとフヨコは報告書作成先に済ませて、状況をまとめておいてな。じゃあ行くで」
手を引っ張られてついていく。
体育館のような場所から離れ、通路を通る。
白色の廊下が蛍光灯を反射して眩しく感じる。
廊下は長く、しばらく歩くことになった。
その際、話しかけてくることは無いけど、私の歩く速度に合わせて歩いてくれて、どこか気を使ってくれてるように感じ、嬉しく感じる。
どうやら目的地は廊下の突き当りの部屋だった。
中に入ると同時に手を離され、突き飛ばされると同時に強烈な眠気に襲われ眠ってしまった。
~・~・~
「お~い、起きな」
聞き覚えある声に目が覚める。
目の前にさっきまで手を掴んでいた相手の顔があった。
「ようやく起きたね。検査は終わったから話しよか」
起き上がると机が並び、前に大きなモニターのある部屋にいた。
まるで会議室のような部屋。
椅子には赤い髪の少女と黄色と橙色のツートンカラーの少女、白衣を来た女性に、スーツの女性、それに見覚えのない白衣の人もいた。
私は並べられた椅子の上に寝ていたようだ。
「空いてる席に座りな。ただし、ちゃんとモニターが見える位置に居な」
赤い髪の人に言われて、慌てて空いてる近くの席に座る。
「そうだな。まずは初めましてだね。私はシラベ。ここの研究者として勤めてる。一応メインではないが、偶に医者としてやることもある。何かあった時には力になるぞ。挨拶はこれくらいにして君はどこまで状況を理解している」
メガネをかけた白衣の女性、シラベさんは私を見て問いかけてきた。
みんなの視線が怖い。
あたふたと言葉を上手く紡げないでいると、スーツの女性が私の所へ来て、頭を撫でてくれる。
「責めるとか、そういう事じゃないから安心しいや。アンタの事知りたいやけやから、力を抜いてゆっくりでええから話してや」
私は頷いて、深呼吸してからよそ見しながら話す。
「えっと、正直何が何だかわかりません。散歩してたら、目の大きな化け物に会って食べられて、気づいたら私がその化け物になってて、魔法少女のような服をした二人に追われて・・・気づいたら元の姿に戻ってて、この場所にいて・・・」
シラベさんの方をちらりと見ると、彼女は頷きながら聞いていた。
「そうだね。まず、一つ一つ説明していこうか」
そういって彼女はモニターに向けてボタンを押す。
モニターには私を襲った化け物よりも弱そうな小さそうな目玉の化け物や黒い化け物が複数表示された。
「まず、この化け物。我々は『呪獣』、呪いの獣と書いて呪獣と呼んでいる。君を襲ったのは強い部類の呪獣だね」
そういってもう一回ボタンを押す。
「次に魔法少女、まぁ君が見たのはそこの2人の事だろう。これは説明する必要なく正解だ。2人とも魔法少女。正確にはここにいる我々も魔法少女だがまぁそれはいいだろう」
そういって更にもう一度ボタンを押す。
モニターに表示されたのは私と私を襲った化け物、呪獣の姿があった。
「今の君は魔法少女よりの一般人、呪獣よりの一般人といったまだ一般人な部類だろう。しかし、君の今の見た目は普通でも中身は違う。君の体はそうだね、まるで呪獣を吸収して強くなった。そういう感じだろうね。血液と髪、後皮膚を少し採取させてもらったが、君は呪獣の力をそのまま所有している。弱い部分が置き換わったと言ってもいいだろう。それに・・・」
「ちょっと待ちぃや」
私の頭を撫でてる人がシラベさんの言葉を遮る。
私の頭から手を離し、手元にペンと紙を持ってくる。
「その前に説明が足りへんよ。あんな、まず、呪獣はとある物を狙い人を襲う。」
そう言って、呪獣らしきものと人を書いて、呪獣が人を襲うような絵を描く。
「とある物っていうのは簡単に言えば、魔法少女になる才能の事。これが一定以上の人を狙う」
人のイラストの横にゲージのようなものを書いてパーセントを書く。50%と書いたラインまで色を塗りつぶした。
「呪獣は人を多く食べる事で進化する。強なるんや。進化を重ねる度、人の姿に近づく。人の姿に近い奴ほど強く高位な呪獣と呼ぶ」
そういって人型に何か生やした姿の呪獣書いた。
「正直こいつらの目的はわからん。分かっている事は呪獣は一般人は見えない事、高位の呪獣は一般人に見える事。呪獣は魔法少女を襲うが、高位の呪獣は一般人を襲う事。低位の呪獣でも通常の物質では痛みを与えられない。魔法少女の力でないとまともに攻撃を与えれない事。後は人を食べて強くなる事くらいかな」
一通りをイラストに描いて説明された。
見聞きして、少しずつ理解する。
「魔法少女の才能は遺伝とかではなく、突然変異として持つことになり、大人になるにつれて才能が上がっていく。」
イラストでは幼稚園児を5%、小学生を25%、中学生を50%、高校生を75%と書いていく
「ここのパーセントはあくまでも例だけど大体こんな感じで上がっていく。50%を超えたあたりで呪獣を認識できるようになるから才能があっても一定ラインにならないと見えへん」
人とパーセント、呪獣を描いていく。
低いうちのほうはバツをつけられていた。
「それに魔法少女の力じゃないと攻撃を与えられないと言ったけど、才能だけじゃ攻撃を与えられない。ウチらは契約を果たして力を行使することが出来るようになるんや」
才能あり、力なしは攻撃バツ、才能あり、力ありは攻撃マルと書かれた。
「で、アンタの場合は魔法少女の才能がある。しかし契約してへんから力は無い。はずやったけど、これは呪獣の力を得て攻撃を与える事はできるやろ。ただし、呪獣が喰らわないはずの攻撃は普通に効くやろし、魔法少女の攻撃も効くやろな。まぁ身体能力は上がっているやろな」
なんかよくわからないけど複雑だなぁ。
強くなったけど人じゃなくなったってことかな。
「まぁざっくり言うと魔法少女の雛と呪獣のハーフって事でいい?まぁ呪獣ってよりは魔法少女って感じなの?」
「そうね。変わった魔法少女って事でいいでしょう。ただ、あなたは今まで通りの生活はできないです。なぜなら呪獣の影響か一般人は認識しづらい状態なので、日常生活に支障が出るでしょう。それに今のままだと呪獣に狙われる状態です。なので、魔法少女となり、この学園に入学してもらいます」