無名の魔女 S16
あれからしばらく世界をやり直した。
何度世界が変わっても結末は常に一緒で自称王の復活で世界をやり直す。
私達が融合した後の世界のまま、世界は大きな変化無く繰り返した。
魔女を捜索して気づいたら最後の一人となって自称王が出現して、逃避を使って平行世界を移動する。
「・・・見つからない」
徹底的に探し尽くしていたのに、どこにも形跡すらない。
何度か魔法少女とも遭遇しては逃避で逃げるか削除使って対処していたけど、遭遇した魔法少女達も魔女を知らない様子だった。
「はぁ・・・どうしよう」
マップは大体2,000㎢だった。
マップの端は濃い霧になっていて、どんなに進んでもマップの反対側へ出てくるようになっていた。
もしかしたら逃避を使う度に範囲が広くなっているのかもしれない。
ただ、確かめるにはまた時間がいるから今は放置。
建物を一つ一つ調べながら広い範囲を探索していた訳だから、何度も自称王を復活させてしまった。
元々こんなに広くなかったはずだから、この範囲の広さも変化の一つなんだろうなと納得する事にした。
元々か逃避で変化した事なのかわからないせいで混乱する事が多々ある。
最優先が魔女を見つける事だから、広がった部分は対象外にして考えている。キリがないのと元々いる前提で動いているから広がった部分じゃない所にいると思っている。
とはいえ見つけれなかったから探すべきかもしれないけど・・・
「疲れたなぁ」
なんだかんだでずっと動いている。
時間が止まったままだから朝日を見る事がない。ずっと夜のまま。
だから時間感覚が無いし、ずっと歩くか走るか頭使うかで、多分すでにトータルで1日は経っているし、休む暇も無いからかなり精神的疲労も蓄積している。
肉体的疲労は逃避で生成されているからか、殆ど無いけど、気持ち的に休みたい。
近くの公園のベンチに座って空を眺める。
そういえば・・・
「この世界の私ってどうしてるんだろう」
すっかり抜けていたけど、今の私とこの世界の私は恐らくだいぶ違う私になっているはず。
そもそも生きているのかわからないけどね・・・
スマホを見て判断する。
「すでにだいぶやってるなぁ・・・」
この世界に来て2時間くらい経ったのかな?
すでに300人程になっていた。
メンバーをスクロールして私の名前を探す。
「あっいるじゃん」
詳細を見ると倒した数が魔法少女が50人以上、野良魔法少女が4人になっている。
覚えている魔法は二つしかないけど・・・
「《逃避》じゃないのかな?」
まぁ、想定はしていたけど、本当にあり得るんだ。
こんなに倒せているのに一つの魔法しかないってことは《逃避》以外の魔法になるはず。
「なに覚えているんだろう?」
ポイントも9,000以上となっているから《名前削除》でも無さそうだしなぁ。
「・・・アリかな」
ちょっと私に会いに行ってみようかな。
~・~・~
「ここって・・・」
来たことない場所に来た。
新しく追加された範囲になるのかな。
大きな屋敷みたいな家で立派な門がある。
「う~んどうしようかな」
私は悩みながらも門に触れる。
すると背後から声が聞こえた。
「君~何しにここに来たの?」
「えっ・・・っとその・・・」
「あれ?理夢じゃん。中に入りなよ」
「えっ?あっはい」
私は見覚えのある女性に困惑しながら、相手は私を知っているようで言われるまま中へ入る。
いや、この人に会ったのはだいぶ前だし、この世界で私を知っているはずが無いからこの世界の私と知り合いなんだろうけど・・・
というか、この人の魔法本当にわからない。
気づいたら背後にいるから、背後を壁にしておかないとやられそう。
言われるがまま中に入ると、屋敷から騒がしい声が聞こえる。
「どうしようかな・・・」
門を入った瞬間からすでにあの人は消えていた。
というか名前は何だっけ。
スマホでメンバーから近い人を見ながら名前を確認する。
あぁ、月城綾音さんだ。
倒した魔法少女は10ちょっとと少ないような多いようなわからない人数。
野良魔法少女も1人倒している。
覚えている魔法は6つと多め。
覚えている魔法の数はわかっても魔法名や効果が知れないからあれだけど・・・
でも、警戒する人物ではある。
とりあえず、中へ入る。
中からドタバタと廊下を走る音やはしゃぎまわっている声だったり誰かの怒る声がしたりと、とても〖魔女千戦〗をやっているとは思えない場所で少しびっくりする。
「あっ!りーちゃん!お帰り~!」
「玉枝ちゃん、そろそろ戻ってきてください~、あら?理夢ちゃんさっき部屋に戻っていませんでしたっけ?いつの間にお出かけになられたのですか~?」
あっ・・・やばいかも?
私は困惑していると2人の後ろから誰かが歩いてくるのが聞こえる。
「あっ!りーちゃん!お出かけ?あれ?りーちゃんが2人もいる~!」
「あら~」
「えっ・・・私・・・がもう一人・・・?」
あっ、かなりやばい状況になったかもしれない。
とりあえず、私は靴を脱いで上がって、この世界の私の背後へ《逃避》で移動する。
「えっと、ごめんなさい。ちょっとお話しをさせてください」
この世界の私の手をつなぎ、とりあえず玄関から離れた。




