無名の魔女 S15
平行世界
異なる世界だけど、今いる世界と少し違う世界。
例えば、誰かがコップを落として、割った世界を今として平行世界は割れなかった世界。
何かの可能性が少し違った世界。
私達は一人でも些細な変化の起きている世界へ渡っていたのに、三人まとまって渡るとなれば、変化は大きくなっていく。
走り出したトロッコは止まらない。
押してしまった以上止める事は出来ない。
私達は些細な変化と大きな変化を与えて、世界を歪めていく。
~・~・~
「ここは?」
私は他の2人を捕食して融合する魔法を使用して、2人を私ひとりの中に存在させた。
融合だから、私と私達は別の存在じゃなくて混ざった状態なのかもしれないけど、それを知る方法がない以上、現状把握をするべきだと思う。
2人を《捕食融合》して《逃避》を使い、世界を渡った。
渡った世界はこれまでとは違う場所にいるようだった。
ピロン!
私のスマホが鳴り響く。
手に持つスマホを覗くと、〖魔女千戦〗という文字のロゴが浮かび、アプリが起動する。
『
【お知らせ】
野良魔法少女が出現しました。
倒すとポイントが1,000P貰えます。
積極的に野良魔法少女を倒しましょう。
』
「野良魔法少女?」
知らない単語、お知らせが届いている。
私の記憶にはこんなメッセージが来た事は一度もない。
「いつの間にアップデートが?」
ホーム画面の討伐数が変化している。
討伐数はこれまで、魔法少女としか書かれていなかった。
しかし、いつの間にか野良魔法少女という枠が増えている。
「どうしよう・・・」
知らない事が増えて困惑する。
スマホを開いて残りメンバーを見ると、800人以上いる状態。まだ始まって少し経ったくらいの様子。
この状態で《名前削除》を使うのは時間の無駄に感じるので、まずは始めの目標である『魔女』を探す事から始める。
~・~・~
「いない・・・どこだろう・・・」
自称王が言ってた言葉的に、存在している風に言っていたから私達はいると勝手に思っていたけど、実はいないのかな?
魔法少女とは遭遇する事は無く、捜索できているけど、見つからなくて不安な気持ちが募る。
「君どうしたの?」
この場所にいるのは魔法少女のみなはずなのに、突然私の背後に少女というよりは女性というべき人が立っていた。
「えっとここは・・・あぁまぁまぁ遠い場所にいるじゃん・・・」
女性は私に近寄っていながら攻撃をしてこない。
魔法少女じゃない?魔女かな?
警戒する私に対して無警戒で近づく女性。
「君、名前は~?」
「えっと・・・」
ここで素直に名前を教えていいのかな?
まぁ名前くらいならいいかな?私みたいに名前に関連する魔法なんてないだろうし・・・
「理夢・・・所理夢です・・・」
「そっか~、あーしは月城綾音。君はここでなにしてんの?」
「人探し・・・をしてます・・・」
「そうなんだ。じゃああーしも手伝うよ。どんな人?見た目」
突然の提案に困惑する。
ありがたい申し出だけど・・・
「なんで・・・?」
「うん?」
「なんで手伝ってくれるのですか?」
「あ~、あーしの目的はこのゲームから脱出する事だし~?でも、争え~って感じじゃん?だからあーしは逃げて逃げてる。でもあーしの逃げるのって誰かの傍に現れるからさ、そのついでにって感じ~」
「・・・そうですか」
彼女の言葉を鵜吞みにするわけじゃないけど、多少は信じることにする。
目的がゲームからの脱出にしてる点と逃げてる点で
まぁでも、
「ごめんなさい・・・容姿とか名前とかわかんないです。ただ『魔女』とだけしか」
「ふ~ん、そっか。魔女ねぇ・・・あーしもなんかわかったら教えるよ。じゃあね!」
そういって、暗闇に沈んで消えていった。
何だったんだろう?
私は目の前の出来事を忘れるように道を進んだ




