無名の魔女 S9
「あれ・・・?なんで?」
人数と計算をミスしていないはず。
よく考えれば私の名前を見た記憶がない気がする。
他の魔法少女たちがどこにいるのか注目して見てはいたけど、私自身をメンバーから見た記憶はない。
ピコン
困惑する私のスマホが通知音を鳴らす。
私は恐る恐る覗き込む。
さっきから見ていてメンバーを開いたままで、ホームと書かれたアイコンにビックリマークが付いている。
ホームへ飛ぶと、メッセージボックスが追加されていてそこにビックリマークが付いてる。
今度はメッセージボックスを開くと、一通のメッセージが入っている。
私は『生存成功おめでとうございます』と書かれたメッセージを開く。
『
【生き残り】生存成功おめでとうございます【報酬】
生存成功、おめでとうございます。以下の報酬をお受け取りください
・ポイント 10000P
・選択権
<受け取る>
』
えっ?
これだけ?
元の世界へは?
元の生活へは?
いや、まだ早いよね?
とりあえず、受け取るを押す。
メッセージボックスを閉じてホームを確認するとポイントが増えているのが確認できる。
タブにアイテム欄が追加されていて、私はそこを開くと『選択権』が入っていた。
使用するボタンがあるので一度押してみる。
するとポップアップが表示された。
『
ゲームを続けますか?
・はい
・いいえ
』
シンプルで恐ろしい事が表示されている。
ゲームを続けると聞いてきてる以上、この殺し合いをゲームとして認識している事。
はいを押せばまた始まるという事。
はいを押したら始まるわけでそれがどういう意味合いか少し解釈によって変わる。
新しい人達と戦うのか、今回戦った人達とまた戦うのか。
ゲームと認識しているなら人の生死すらも自在じゃないのかな?
私はそう思っている。
いいえの場合、私は二択あると思っている。
元の世界に戻るか、消されるか。
前者ならいいけど、後者があり得そうで怖い。
だって私の認識はゲーム。
ゲームを終わるという事はゲームを切るという事。
私の存在が消えた事を認識する間もなく終わるかもしれない。
幸い、この項目どちらかをすぐに選択する必要は無く、ポップアップ画面の枠外をタップすれば解除されたので、先に『願い事を叶える権利』を交換する。
早速入ったポイントを消費して、アイテム欄に追加された事を確認する。
確認して使用するボタンを押す手前で止まる。
いや、どうなんだろう。
例えばスマホを意識して操作することなく、ある程度無意識下で操作できるように私の手は慣れた手つきでボタンを押した。
表示されるポップアップ
『
あなたの願い事は何?
《 》
<確定>
』
慣れた手つきで入力される文字。
『
あなたの願い事は何?
《我らの王の復活》
<確定>
』
確定が押された瞬間、世界が崩れた。
言葉通り、視界に入る世界が空事ミキサーにかけられたようにぐちゃぐちゃになり、私も巻き込まれた。
あぁ・・・なんでかな。
私は世界に飲み込まれる。
《逃避》
~・~・~
ビルの屋上にいる私。
どこに戻ってきたんだろう?
ビルの屋上ってことは、25人の相手をするところかな?
階段から誰かが上ってくる音がする。
私はこの後、飛び降りたんだよね。
なんでだろう。
今の私としては理解ができない。
私はフェンスの無いビルの屋上の縁へ立って、上ってくるのを待つ。
そして開かれる扉。
なんか勢いよく言われたんだよね。
「「えっ・・・?」」
開かれた扉に立つのは一人の少女。
真っ白の姿の、飾り気のないゴムでまとめられた黒い髪の私。
私が扉に立っていた。
「なんで・・・?」
「だれ・・・?」
互いに困惑しているけど、私はどこか冷静に現状把握をしようとする。
まずは、一人であること。
私が相手したのは複数人で一人ではなかった。
次に姿。
私の姿をしている理由。
魔法で他人を真似ている?
でもなんで私になるんだろう?
私は相手を確認する。
・・・私だな。
なんか、かなり似てるじゃなくて、私だなってなる。
人によって雰囲気というかなんか感じるものが違うけど、感じるものが私だなってなる。
説明ができないけどね。
ただ、私なのに、少し違和感がある。
少し影があるというか、いや確かに私は暗いけど、そうじゃなくて、病んでる?まぁ精神的に来てはいるけど、そうじゃなくて・・・
・・・ふふっ
「・・・なに?」
「いや・・・何でもない・・・わけじゃないか」
なんで一気にピースがハマる感じがするんだろう。
でも、正解に近づく感じがする。
私はスマホを確認する。
倒した数が178になっている。
今の残り人数は30と少し。
うん、おかしいよね。
全部はわからないけど、でも・・・
「我らの王って何?」
「?・・・!!!!!・・・お前は何だ?」
「ふふふっ」
ビンゴというかそうだよね。
私の中になんかいたよね。
いつからかはわからないけど、まぁ・・・
「とりあえず、《名前削除》《名前削除》《名前削除》《名前削除》《名前削除》っと」
近づいてる5人の魔法少女を削除する。
「主催者さん、あなたの目的ってあなたたちの王の復活なんだよね?具体的に教えてよ」
少し、私を使われて怒ってるから、未知の存在に映っている私を恐れてね。




