無名の魔女 S1
私は何もなかった。
運動も勉強も人間関係も全て上手くいかない。
何もない私らしく無駄にスマホのアプリを整理している時だった。
「〖魔女千戦〗?」
見覚えの無いアイコンのアプリを私は何も考えずに押してしまった。
きっとこれがすべての始まり。
私の、愚者な私の物語の始まり。
~・~・~
アプリを起動した瞬間、寒気がして体を震えた。
少し振動を感じて地震でも起きたのかと思ったけど、私は気のせいだと思いベッドで寝転がりながら起動したアプリを見る。
いつの間に入力されていたのか、私の名前と倒した数という枠に各種の討伐数が表示されている。その下にポイントと書かれた欄があって100Pと書かれていた。
なんだろうこれ。
初めの一瞬だけ生活サポートアプリだから私の名前が書かれているのかと思ったけど、なんか違うよね。普通にゲームっぽいけど、ゲームにしてもどういうゲームなんだろう?
とりあえず何も考えずにボタンを押していく。
ポイントと書かれたタブをタッチすると画面が切り替わり、アイテムアイコンとアイテム名、アイテム詳細と必要ポイントが書いてある。
ポイントで交換できるのはいろいろあるけど、私が購入できるアイテムのところだけを見る。
ラインナップは・・・
水筒、タオル、包丁、ぬいぐるみ・・・なんか普通に一般家庭においてあるようなアイテムがずらっと並んでいる。
私はめんどくさくなって流し見しながら一気に下までスクロールすると、一番下のアイテムは強調されていて願い事を何でも叶える権利というアイテムがあった。
どんな効果かは細かな記載はなくシンプルに何でも願い事を叶えてくれると書かれているだけだった。
ほかにはとメンバーと書かれたタブをクリックすると現在の人数と参加者数をがあり、今は1000/1000となっている。数値の下には参加者の名前なのか名前が並んでいるだけだった。
どういうことだろう?
その一覧の中に私の名前もあった。だからこのゲームの参加人数だとは思うんだけどどんなゲームか概要を知らないでいた。
私はよくわからないなと思ってアプリを閉じて別のことを始める。
スマホでSNSを覗こうとしてようやく異常事態に気づいた。
電波が取得できずにいる。
初めは電波が悪いだけかなと思ったけど、いつまで経っても治らないから手動でやろうとして気づく、Wifiのスポットが一つもない。
家のルータの電源が抜けているのかなと思ってリビングへ行くと家族の姿はなく、静まり返った空間ができていた。
リビングの明かりはそのままで人だけいない状態に少し恐怖を感じるけど、今は別室にいるだけなはずと暗示をしてルータの接続を試みる。
電源が抜けている様子はなかったけど、念のため一度抜き差しをしておいた。
少し待ってからスマホを見ても電波を取得していなかったから諦めて、さっきのアイコン整理してアプリの配置を変えているとふと〖魔女千戦〗の文字と黒い背景にMと白い文字だけのシンプルなアイコンが目に入る。
WiFi飛んでいないから現状オフラインだし、メンバーのところに変化あってもわからないよねと思って、アプリを開いてメンバーを見ると945/1000になっていた。
人が減った?
分数になっていた事から数値に変化は起きると思っていたけど、これは何を意味するのか嫌な汗が流れてくる。
私はスマホを置いて、布団の中に潜り込んで眠ろうと試みるも、なかなか寝付けない。
いつもなら、十分も立たずに眠れるのに・・・




