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気が付いたら化け物になってた


 キャンプやバーベキューの時に火を眺めていると、その空間は歪んで見える事がある。

 長時間椅子や寝具に居た時にふと立ち上がると、視界がはっきりしない状態になったりする。


 目や脳に影響が少しでもあるだけで、見えるものが違う不思議な世界。

 じゃあ、今の私の目の前に見えるのは幻覚なのかな?

 この大きな目玉の化け物は


~・~・~


 とある夏の夜、日課の散歩をしていた。


 夜風が肌を撫でる感触、どこかの晩御飯の匂い。

 空には点々とした星々が浮かんで、不思議な形をした雲が隠そうとする。

 その間を見つけて月が顔を出し地上を照らす。

 偶に住宅街から聞こえる子供の笑い声、どこかで集会を行う猫の鳴き声、帰宅する人の自転車の音。

 全てが私の癒しの時間。だった。


 急に暗くなったと空を見ようとすると黒い巨大な何かが私の上に居た。

 私が上を見るタイミングで私と目が合う。いや、元々認識していたけど、こちらが向こうの存在に気が付いたからこちらを見たのだろう。

 黒い何かには無数の目玉と口がついており、笑ったり、泣いたり、怒ったり、今まで気づかなかったのが不思議なほどに不気味な見た目と声を認識した私の体が早く逃げろと警報を出す。

 しかし、私は硬直し、身体が金縛りにあったように動かなかった。


 黒い何かは私の目の前に降りてきて巨大な目玉のみの頭部らしき部分を近づけてくる。

 10秒程見つめられていたかと思うと、巨大な目玉が二つに裂け口となり、私を捕食した。


 その瞬間、私は意識を無くした。


~・~・~


 気が付くと私は空を飛んでいた。

 夢の中にいるのだと思った私は自由に飛び回った。

 雲の上を飛び、川の水面ギリギリまで飛び、海に一瞬入って出てみたり。

 全てが自由なそんな感じがした。


 でも、水面で私の今の姿を見て気が付いた。

 まるで化け物だ。

 さっき見た化け物と同じ姿をしてるけど、少し落ち着いた姿をしてる。

 多少ましになったとはいえ化け物は化け物だ。


 それにあまりにもはっきりとした上に水の冷たさや風の感触が現実だと理解させられる。

 流石にこのまま家に帰れないよね。


 夜は少しでも不安な事を最悪な方向で考えてしまいがち。

 もしかしたら、私自身が初めこの化け物に気が付かなかった様に、誰かに気が付かれるまで認識されないのかもしれない。


 一息ため息ついて、岩場へ降りる。

 少しぼーっとして涙が流れる。


「あぁ~これ、間に合わなかったパターンか。少し進化してるよなコイツ」

「そうだね。元々力あるやつっぽいのに、力更に上がったら困るんだけど」


 声がした。

 声がする方を見るとフリルが多用された服を身に纏った高校生くらいの人が2人、空に浮いていた。

 まるで魔法少女というような・・・


「じゃあ、さっさと終わらせるか」

「面倒くさいから、ウチが支援するわ」

「了解」


 私に向かって一気に加速した赤い少女が手に持っている杖らしきものを私に向けてくる。

 そのうちにもう一人の黄色と橙色のツートンカラーの少女が私に向けて既に何か仕掛けていた。

 明確にはわからないけど、何かしているのはわかった。


 私はとりあえず、説得しようと思ったけど、コミュ障な私がそんな事できるわけもなく、その場から逃走した。


~・~・~


 といっても逃げ先なんて考えてないし、ひたすら高層ビルを利用して撒くことを意識してにげる事にした。


「逃走するの初だな。こういう時って大抵経験値高いよな」

「シンプルめんどいんだけど、加速使用する」


 飛行能力は向こうの方が高く、中々撒くことができない。


「てか、アイツ飛ぶの下手過ぎない?」

「進化した分、別の所が退化したのか?」


 なんだか馬鹿にされているような気がする。

 しばらく全力飛行して逃げていたけど、急に力が抜けていく。

 そのまま墜落すれば被害が出るだろうから何とか滑空で海まで行こうと羽に力を入れて、身体を縮めて移動する。


「ようやくか。地味だけど、長期戦にはいいよな。お前の魔法」

「地味なんて言わないで。でも、なんでアイツそのまま落ちないの?意識も体力も奪い取ったはずなのに」


 私は海の中に何とか着地して沈んでいった。

 早く元に戻りたい。

 早く家に、部屋に帰りたい。

 夜でも家を出るんじゃないかった。


 そんな後悔が積もりながら沈んでいく。


 早く元の姿に戻りたい。


~・~・~


「おい、どうなってんだ?」

「知らないわよ。こんな事、どうなってるのよ。どうゆうことよ」


 沈んだ意識が浮かび上がる様に覚醒していく。

 潮の匂いと冷たい感覚、重たい何かが私を纏っているようで気持ちが悪い。

 それから聞こえる少女の声。

 怖くて目を開ける事も動くこともできず、少女の声に耳を傾ける。


「こうなったら連れてくか」

「バカなの?こんな危険性のある彼女を連れてくの?」

「状況が分からねぇ以上、上に判断を仰ぐしかねぇだろ。とはいえそのままにするわけにはいかねぇから連れてってやばそうならリンチにすればいいだろうが」

「はぁ、そうね。何にせよめんどうな事に変わりなさそうだし連れていくしかなさそうね」



 私の体に纏わりついていた何かと冷たい感覚が無くなると恐らく赤い髪の少女にお姫様抱っこされ、空へと浮いた。


~・~・~


「ようこそ、カゾの地へ。カゾ魔法女学校入学おめでとう。我々はあなたを歓迎するわ」


 そして私は誘拐され、謎の学校へ入学する事になった。


「えっ?」


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