第6章
「もしも先に知ってたら、汽車に乗って尋ねてくることはないの…往復の汽車チケット代、学生価格とはいえ、高いだわ」
少女が嘆きながら歩いてます。
「1日中歩き回ってどっと疲れたことが分かっていますが、お嬢さん、なおいっそう大事なことをしに来たわけだとわたくしが思いますのね」
「言われてみれば…あーあ、元々は魔王城周りの土地に管理された元へ私の家族が過大に支払っていた税金を請求する件と交渉しに来たわ…」
「こんな時間ですもんし、また今度新しい事務所に行ってみましょう」
「言わなくても分かっているの!」
「今日はありがとう!」
「その声、聞いたことがある…」
少女は街道のある建物から出て、建物の中に向かって手を振っている男の人に視線を移します。
「あ、ド・ルプレイヌ=ド=メさんちのお嬢さんじゃないですか?」
「電話交換手のペゲーロ兄さん!」
「もう交換手ではないですよ、だって女の子の声のほうが評判がいいですから」
ペゲーロさんが少女に近づき、少女の翼を触ります。
「ついに立派な翼を持つようになりましたか。」
「ゾクゾクして来ますの、痒いですの、やめてくださいよ…ところがペゲーロ兄さんが何故ここに居ますか」
「見ている通りに、今では電話機の訪問販売をしていますよ」
「へぇー、私としてはペゲーロ兄さんの声に惚れていますのに」
「それはどうも。ところで、お母さんの五月さんはお元気ですか?カラステングの一族が連邦に生活しづらいでしょう、僕が副業で開いた連邦語教室に彼女がよく来ましたよ…」
「その…あ、ヤーノスさん、これから私を連れてラ・シテへ取材しにいきますのね、急がないと汽車に間に合いませんよ」
「汽車はまだ…ああ、ですよね、急ぎましょう」
少女とヤーノスさんが小走りして去りました。




