第2章
「じゃ、留守よろしくねー」
「いいぞ。お任せだ。お宝探しの時間だ。」
「ぐちゃぐちゃになったら、魔王の末裔の力でシアナさんをぐちゃぐちゃにするわ
「それはご丁寧に、魔王の女伯爵さま」
「魔族の呼び方とは違うわ。まあ、どうでもいいだけど…行ってくる」
「シアナさんに任せて大丈夫かしら…」
少女が躊躇しながらも、魔王城から出ました。
「魔王城のお主に一日密着取材?なにバカげなことしているのかしら?だれが読むの?」
少女がジュール・ラヴォー街道で出会わせたヤーノスさんを無視して駅にたどり着きました。
「サン・ゴーティエ・マルゴトン駅までの1枚ください、あ、学生価格で」
汽車が黒い煙を出して動きます。下等列 車にシルクハットを被って立っている人を抜けて、少女が車両の真ん中にある窓際の席に向かいます。
「魔王の一族はどうしてここに?」
「仕方ないだろう、学生切符が下等列車限定だから」
少女が怒りを発散するとたん、となりが魔女であることを初めて気がつきました。
「魔王は全知全能であるべきで、情熱の美しさ、人生のすばらしさ、そしてあらゆるものの根本を理解するよう、我々を励みべきではないだろうか?しかしこの魔王のお嬢さんは何も教えず、何も知らず、何も期待しない。」
「私、結局魔王の末裔を名乗っているだけで…」
「おっと、おばあさん、行儀悪いですね。」
「ヤーノスさん?それ、私の財布じゃない?」
「ド・ルプレイヌ=ド=メお嬢さん、引っかかっていました?この時代に魔女が存在する確率がゼロに近いことですよ。それにその構文、わたくしが編集に手が掛かったことはあまり忘れられませんね。50冊くらいの本から凝った文ですよ。」
「…これぞル・プティ・ヴィラージュワ新聞の力なのか」
「残念ながらりんごは購読していません」
「…そのネタはもうやめて」
「ああ、次の駅でサン=エティエンヌ=ブエニ県に入るのだから、俺の管轄外だ。君たち勝手に押さえてきて」
上等列車の車両から駆けつけてきた憲兵が折り返して帰りました。
列車が「サン=エティエンヌ=ブエニ県へようこそ」という看板のそばに通り過ぎました。




