第5章
「あたしは、マリー=ジャンヌ・ブルーグというのです。ブルーグ市場は、母が経営している店です。」
「お気の毒だ」
「『東部大陸語で』シンカンちゃん、それ、「お気の毒」の使い方、違うわ」
「続けてー」
「お久しぶりの休日に、サプライズをしようと、母の店に訪ねてきたら、カギがかかっていて、中に入れませんでした。」
「それはそうだろう、国民の休日だから。ここら辺で開く店は駅周辺を除けば、シノワ料理屋くらいだ」
「行き場がないのですから、自転車屋と緑色のチェーンカフェと黒い落書きのある壁を通って、やっとここにたどり着きました」
「歩く路線、変わっていません?」
「駅に戻る体力もなくなりましたし、道の真ん中で休憩するわけには行きませんし、この店に入ることも覚悟した上で決断しました。」
「別にこの店に入ったら死ぬわけではないでしょう?」
「川沿いはどうだろうか?そこで風を浴びて休むのもいい過ごし方じゃない?」
「この町に川ってあります?」
「バカシアナと同じく、隠れ方向音痴の仲間入りですね。でも、悪い人に見えませんわ。上の階に空き部屋まだありますし、お母さんが戻ってくるまで、私たちと一緒に居ていいですし、上の階の空き部屋で仮眠することもいいですわ」
「ここは、Tchi Hau迷子センターになりつつあるー、うちも個室がほしい」
「だーめ、シアナが個室だったら、廃墟が増えるじゃない?」
「うち、バーサーカー扱いされて、ひどくない? 」
「そういえば、私もデジュネを済ませに来たのだわ」
「我が魔王よ、殺戮の時間だ、キッチンでの柔らかいパスタを全部、捧げてあげるー」
「いやだよ、柔らかいパスタなんて、食欲を起こさないじゃない」
「今のシアナって正真正銘なバーサーカーだわ」
「話をしながらご飯を食べるのは楽しみなものですね。」
「あ、ごめんなさい、ブルーグさん、話に集中しすぎて、料理を作るのを忘れたわ」
「それはあかんだろ、オーナー失格だよ」
「シアナだけに言われたくはないな」
「『連邦語で』カフェ、迷子、バーサーカー…『東部大陸語で』姉上、殺し屋に狙われているの?」
「『東部大陸語で』どうやってその結論が出たのかしら…ぜんぜん違うわ…」




