幕間2
あのこ、五月ちゃんと似ている顔がする。
あれ、五月ちゃんって、誰?
でも、五月ちゃんに翼が生えていないことは、しっかりと分かっている。
あ、そういえば、あのこはタングステン糸がほしいだっけ?バカなことだな、タングステン糸がバラ売りしているわけないじゃない…
きっと、この世にあるもので、一つとして過ぎ去らないものはないだろう。
ぼんやりとしている記憶が、僕を殴り書く。
気づいたら、僕はもう彼女をスタッフルームに誘い、話し合っている。
「人間が思索すれば、神は笑う」
あ、今週も弟に電報送金をしないと…バンジャマンって元気だったか…父から逃げようとしていないよね…
A市に旅行したいな…
師範学校に入りたいから、あの連中と近づかないほうがいいな…
僕が、いつの間に、目の前のこ、と、人に言うべき事か言わないべき事かを、あのこにさらけ出してしまった。
けど、後悔なんかはしていない。
連邦語で言うなら、僕の名前はダノン・デュトワ・マルタン、極東語で言うなら…忘れた、きっと特色のない名前だ。
あのこ、五月ちゃん?…違う、ジェニーさんが、きっと、僕の人生を照らす女神様だろう。
あれ、五月ちゃんって、誰?




