第3章
「まもなくティボービル西高校の10年生の入学式が始まります。生徒ならびに関係者各位は速やかにご着席くださいますように」
少し遠いところから声が届いてきました。
「姫様、急いて」
「うぁっ、翼をひっぱらないてっ」
走り始めた二人は入学式が行われたビルにまだ遠ったようです。
「ね、飛んでみない?このままじゃ遅刻するわ」
「でも…」
「先の男…ダニエルだっけ、この辺の空域は排除されていると言ったよね」
「…わかったわ…」
少女が翼を降り始めました。
「ウーフー!飛ぶぞい!」
少女の翼を避けて抱き詰めるシンメイさんが叫びました。
10年生の入学式の会場はきちんとした階段教室でした。
「間に合った!最初から飛べばいいじゃない」
「もうっ!知らないわ」
二人は小さい声でしゃべりながら校長先生か学年主任からしい人物の演説を聞いています。
「メイっち!晩ご飯シュウマイにして」
二人の会話を割り込んだ女の子が1列後ろにいました。
「誰かと思ったら、シアナか。私のボディソープを勝手に使った分、シアナの給料を引いてあげるわ」
「ええっ!なんで、うちがメイっちのレストランでそんなに頑張ったのに…翼っちもメイっちに言ってよ」
「私は翼っちじゃない!ちゃんと名前あるの!ジャンヌ=ユージェニーというの」
「えー、やだ、長すぎて、うち、覚えられないー」
「とても簡単だわ。ジャンヌ=ユージェニー・ド・ルプレイヌ=ド=メ姫様…」
「ド・ルプレイヌ=ド=メ君」
「ド・ルプレイヌ=ド=メ君?」
教壇からの声が教室中を響いています。
「はい!ド・ルプレイヌ=ド=メです」
「ド・ルプレイヌ=ド=メ君、教壇まで来てください」
「あっ、はい」
少女が階段教室後方から教壇に降りました。
「うそっ!1位なの?」
「翼っちが1位?何の話?」
驚きが収まらないシンメイさんに戸惑うシアナさんが疑問を出します。
「シアナは出願書類を見ないの?入学試験の順位で好きな専攻を優先的に選べるわ…」
「うち、面接しか受けなかったけど」
「面接だけ?」
「うち、おばさんが市立大学の教授だよ。おばさんを通って学年主任にあった」
「ああ、こういうときこそ人間と人間のギャップは、人間と犬のギャップよりも大きいってことを感じるわ」
「なにを話しているの?」
「お帰り姫様、何でもないよ…ただこのバカでも受かる高校に受験したことを悔しいと思っているだけだわ」
「誰がバカか。メイっちこそこの間…」
「だまれ」
シアナさんの口がシンメイさんに塞がれました。