第6章
「…ここかな、ブルティノー=シェロン県国家憲兵 ゴードロー=レ・オーブレ署」
少女が手紙を持って、警察署の前にきています。
「っきゃ!」
傍に、憲兵のマークの入った行動機械が急に動き出して、少女の傍に走り去りました。
「すみません…」
少女が入り口に小さい声で言います。誰も少女に返事しません。
「もう3日連続で寮に帰っていないわ、匂いがきになる…こんな仕事に勤めていなければよかった…何が市民を守るのか、右肩下がりで予算が削減されるのじゃない?予算がなくなって治安も悪くなる、悪循環に陥るだけだわ…もしもし、はい…」
「うそ!また予算が削減されたのか…こんなバカなシステム、さっさと崩壊しろ」
「非番でごめんなさい…申し訳ないが、先週の窃盗案で取っておいた証拠は、運ぶ下請けの業者に無くされて、ゆえに、裁判所にお見せできなくなるので、もう一度、被害者に連絡して証拠を収集することができないのかな…」
「ジャン=アントワーヌ病院で財布がなくなった?…受付は誰だった?…届け出のは先週?先週くらいでの届け出なら、すぐに処理できるわけないじゃない?もう掛かってくるな、掛かってきたら業務妨害で訴えやるぞ」
「…」
少女が無言のまま、オフィスデスクに囲まれた部屋を通りぬきます。
少女が奥の部屋に行きます。
「来てくれたのね、ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さん、お父さん、多分遠い所で元気で大丈夫だよ。お父さんもきっとお嬢さんを立派な大人になったことで心を動かすよね…ああ、ごめん、話が長くなった、それより、昨日、お嬢さんが提供した目撃情報によって、今朝たまたま署に帰ってくる憲兵が、一見ホームレスに見えないのに服に傷に靴も履かない子が歩いているのを見たから、この男が保護されたんだ」
少女の向かいに、狼のミミの生えている、少女より若干わかい男の子が魂を失った状態で座っています。
「ダノンさん…」




