第1½章
少女は傘を支えて街を歩いています。家を出た数百メートルでも街が静かになります。
「Tchi Hau で3.8リンジーのセットを頼んで, 10年生の年度登録料350リンジーを払って,残りは40リンジーくらいのか」
少女は東側大陸風の料理屋Tchi Hauのショーウインドーに足をとめました。支度中のサインをボーっと見る少女に,店の中からもう一人の女の子が声掛けて来ます。
「あら、ユージェ姫じゃないの?」
女の子が閉じたガラスドアを開きます。
「一緒に行こう、ヒ’メ’サ’マ ↗」
「シンメイさん、行こうってどこ?」
戸惑い少女に,怒っぷりと装うシンメイさんが言う:
「私たち,一緒にティボービル西高を受けたじゃん。今日はお店開かないよ。食べたいならご勝手にどうぞ。キッチン使わせてあげるわ,もちろん食材は付けで。」
「シノワ料理なんて分からないよ…」少女はがっかりします。
二人がそれぞれ傘を支えて歩いています。
「姫様は翼を持っているのに飛べないのよね」
不思議を感じるシンメイさん。
「自機免許を取らないと速度と高度の制限が厳しいし,健康診断と安全講習もうざいの。それに,シティホールにあまり行きたくないもん…」
語る少女が足を止めました。
「そういえばこの学校,飛行学導論が学べるんだ。単位足しに社会人向けの飛行免許教室の授業料に節約できるのね…」
少女が独り言ながら笑顔を出しました。
「やっぱり姫様かわいいわ」
少女を見るシンメイさんが言う。
シンメイさんが巨大段ボールのような小屋に足を止めました。
「ああ,こいつら,天気が悪いからストライキは後に延期なんて,勝手な都合で動く奴め!あれ,どこ行くの,姫様?ここでバスを待つのよ。ティボービル西高はヴァンディエール区だわ!まさかこんな雨で歩いていくかしら?バス代くらいならおごってあげるわ」
「ありがとうシンメイさん」
道を引き返す少女は言う。
「礼を言うなら今度宿題貸してー」
「どんな授業が一緒だってまだ分からないじゃない…」